NEON GENESIS EVANGELION
Genesis Q':78
「お待たせしましたぁ」
っと元気に助手席のドアを開ける。
居心地悪そうにシートを倒していたクニカズが、慌てて体を起こして頭を掻いた。
「いや、待つのはいいんだけど…」
校門を出てすぐの所に、傍目にも目立つスポーツカーが横付けされている。
当然子供達の目を引いていた。
それに、ね…
放課後、寄る所があるのというので付き合ったのだが、まさか学校だとは思わなかったのだ。
やっぱり可愛いって事だよな…
何気ない、だが興味心に溢れた多数の無遠慮な視線を感じる。
クニカズは知らない事だが、今でもミズホの事を覚えている二・三年生は多いのだ。
「えっと、今日はこれから?」
「後は帰ってごろごろするだけですぅ」
美代には所用…、ユイを呼び出していたのだが、があったので、今日の稽古はなしである。
それに奈々は学校でのクラブがあり、ミズホは今フリーの状態であった。
「あ、じゃあ悪いけど…、僕にも付き合ってくれるかな?」
「はい?」
「喫茶店だよ、ヒーターで喉渇いちゃったし、それに…」
ちょっと冗談っぽく…
「あの家に帰ってからじゃ、息抜きできないからね?」
「はいですぅ」
ミズホもにこやかに冗談に乗った。
●
「もうやめてよねぇ!」
「悪い!」
トウジ、ケンスケ、シンジと、久しぶりに三バカで連れ立ってゲームセンターに来ている。
雑多なゲームの音が混ざり合って騒音となっているので、お互いの声はやや大きめだ。
「どうしても、さ、あれの反応が見てみたくって」
「…まさかまたタタキさん?」
「またってなんだよ?」
「あ、ううん、なんでもないけど…」
関係無いのかな?
少し怪しむ。
「まあメールとか反応来てるし面白ぞ?、読むならそっちにも回すけど」
「…うん、読みたい」
「わかった、じゃあ帰ったらメールしとくよ」
「頼むよ」
そんなシンジに眼鏡の内側で胸をなで下ろす。
タタキさんも迂闊だよな…
もちろんケンスケの行動は打ち合わせをしてのものである。
感付かれたら意味無いだろうに…
「そやけどあれやなぁ…」
トウジはシンジのステップを見ていた。
「ほんま、へったくそやのぉ…」
シンジはとあるゲームの途中だった。
ダンスマニア、足元にある前後左右のパネルを、音楽に合わせてスクロールしていく正面モニターの表示通りに踏んでいくゲームだ。
「シンジのはリズムとかってんじゃないからなぁ…」
その点を修正させようとしないのはタタキと同じ考えを持っているからだ。
シンジの並外れた音感は、決して絶対音感などといったリズムや音符の解釈にあるのではない。
シンジ特有のその能力は、他人に合わせる協調的なものである。
…ラステーリと張り合った時より進歩してるよ。
あの時、一時はトウジが着いていけないような状態に陥りかけたが、カヲルのサポートによってなんとか維持する事が出来た。
それが今じゃ、自分で意識してやってるもんなぁ…
プロを目指しているわけではないのだから、楽しいのが一番である。
そしてシンジのギターは、同じ演奏者、そして歌手も揃って一緒に楽しくしてくれるものだ。
決して大和マサシのように一人よがりな楽しさを追及してはいない。
「なんやなんやぁ、二曲で終わりかいな?」
「そういうけど難しいんだよ?、これ…」
トウジとタッチして交代する。
「手本っちゅうのを見せたるわ、そこでよう見とけ」
「わかってるよぉ…」
シンジは唇を尖らせた。
シンジが珍しく解放されたのは、最近べったりだったレイがクラブの方に今日は顔を出したからである。
「で、シンちゃんもう帰ったよ?」
レイは壁打ち用の壁に向かって一人でボールを打っていたのだが、それを脇で眺めているマナにおかしな物を感じていた。
「ん〜、ちょっとね…」
マナの口調は今日一日ずっと歯切れが悪かったりする。
「なに?、あたしに話があるの?」
レイもそんなマナに苛立ち気味だ。
「ん…、あのねぇ、レコードの事なんだけど」
ポン・バン、ポン・バンと言うボールがラケットと壁とを往復する音が邪魔になる。
だからレイは壁打ちを中止した。
「あれがどうかしたわけ?」
「ちょっと調べてみたの」
「調べる?」
「レコードね…、CDだけでも初回プレス10万の内、5万がもう出来上がってたのに、あのタタキさんって人、それを全部捨てちゃってるのよ」
やっぱり、か…
それはレイも気にしていた事だった。
「…なにか臭くない?」
「うん…、なんだか乗せられてるなぁって感じはずっとしてる」
完全に練習を中止して、マナの隣に腰を下ろす。
「発売時期も変なの、タタキさんドラマに使う予定だって…」
「そう…、そのドラマって、アスカの?」
「ええ、来年の半ばに放映だって…、なのにもうプレスしちゃってる」
「ふむ…」
しかもドラマについては、今だ正式な発表はされていない。
タイアップになってない?
アスカのことは本当に関連が無いのだろうか?
ううん、そんなはずない。
あまりにも物事が連動し過ぎている。
偶然じゃない、絶対…
物思いにふけるレイ。
誰が動いてるの?
そんなレイを横目に見ながら、マナも気持ちの悪い物を抱え込んだ。
●
クニカズさん、ミズホさんのこと、どう思いますか?
クニカズは真正面で嬉しそうに紅茶を飲むミズホを眺める。
あれさえなきゃ、いい人なんだけど…
昔から何かと「良縁」を持ち出す叔母である。
ま、良い子なのは認めるけどね…
わりとシックな喫茶店で、座席数は少なく、コーヒーを味わう事に重点を置いている様な店だった。
良い子な以前に、変わってるけど…
今時花嫁修業だなどと口にするかと思えば、突然着ぐるみに変身を果たす。
「ミズホちゃん…」
「はい?」
「…ごめんね」
「ほへ?」
突然の謝罪に小首を傾げる。
「いや、さ…、おばさんだよ」
「別に酷いことされたわけじゃないですぅ」
それに気絶させてしまった負い目もある。
「まあおばさんも、ミズホちゃんの実力が見たかったわけだから…」
「実力ですかぁ?」
「奈々ちゃんのお気に入りだってだけで興味は出るよ」
「照れちゃいますぅ」
てれてれと身もだえる。
「一応、奈々ちゃんに次ぐ素質があるとか言ってたけどね?」
「ふきゅう…」
だがミズホはあまり嬉しそうな反応をしなかった。
「…どうしたの?」
「ふえ?」
「いや、あんまり喜んでないし」
奈々が目標じゃなかったのかな?
確かそう聞いたと思い返す。
「…わたしはぁ、シンジ様のためにお泊まりさせて頂いてますけどぉ」
別にケンカを習いたくて修行に打ち込んでいるわけではないのだ、そこに誤解が存在している。
「ああいうのは嫌いかい?」
「痛いのは嫌ですしぃ、痛い事をするのも嫌いですぅ」
ミズホは正直に訴える。
さすがに面と向かって奈々や美代には口にしない事柄だ。
「そっか…」
クニカズもそれなりには同意する。
ま、盛り上がってるのはおばさんだもんな…
それも勝手に、だ。
「…ミズホちゃん」
「はい?」
紅茶と一緒に頼んだケーキを頬張るミズホに、クニカズはちょっと苦笑する。
「早く家に帰りたい?」
「…シンジ様の元に帰りたいですぅ」
そっか。
屈託の無い笑顔に、クニカズはつられて笑みを浮かべてしまった。
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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
Q'
は
Genesis Q
の
nary
さんに許可を頂いて私
nakaya
が制作しているパロディー作品です。
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