NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':79 


熱い風を求めてる
僕に無いものを
与えてくれる


重なる視線が求め合う
震える息が
僕に無かったものを生む。


勇気が突然溢れ出す


想いが弾ける伝えるために
想いがかすんで忘れぬように

瞬きする間の君の仕草が
僕に勇気を与えてくれた

いつか君に届きます様に

「キスしても、いいですか?」



その髪の艶が奇麗になる頃
僕達の間は変わり始めた
ほんの少しの距離が遠くて

想いが弾ける伝えるために

揺れるMind 熱いHeart
ココロが悲鳴を奏でてる

君に伝える
君に届ける
熱いもどかしさを解き放ち



僕を見る瞳が変わらなくて
吐息をつく唇は恐さを増して
ただ心だけが遠ざかる

想いがかすんで消えて行く

軋むHeart 迷うSpirit
爪先立ちの愛が転がる

君に上げたい
君を感じて
惑わせるものを振り払い


Simpleに素直になりたくて



熱い風を求めてる
僕に足りない物を
教えてくれる


重なる視線が求め合う
これがきっかけ
僕の心を決めさせる


勇気が突然溢れ出す


いつかいつでも奪えますように

「キスしても、いいですか?」


Q_DASH79
「YEAH!」


「ミズホさん、こちらに」
「はいですぅ!」
 ふきゅうっと寝ぼけ眼にトイレへ向かったミズホは、道場からの不思議な雰囲気に引かれてしまった。
 物音がするわけでも無いのに誘われて、目をこすりながら覗き込むと、そこでは足音一つさせずに奈々が静かに舞っていた。
「小和田先輩、凄いですぅ!」
 パジャマのままでどたどたと駆け寄る。
「先生とは全然違いますぅ!」
 奈々はその言いように苦笑してしまった。
 ちなみに先生とは奈々の母親の美代のことである。
「お母さまとわたしとでは、舞いに対する「もの」が違いますから」
「ふえ?」
 良く分からない、と首を傾げる。
 その態度に奈々は居を正し、その場に座った。
 慌ててその前に正座するミズホ。
「良い機会ですから、小和田流、わたしが祖母から教わった事を伝え置きます」
「はいですぅ!」
 奈々から漂う緊張感にごくりと喉を鳴らしてしまう。
「小和田の流派には、舞いの中に武を取り入れております、これはミズホさんにも教えましたね?」
「牛若の舞なんかのことでしょうかぁ?」
「ええ…、それらは本質として人を傷つけるために極められたものです」
「ふえ!?」
 奈々から出た言葉とは思えなくて、酷く戸惑う。
「舞は武であり、武芸は舞芸でもあります、舞いを舞うがごとく、とは申しますが、舞いに宿るものは神であり、武に篭るのは意であります」
「意ですかぁ?」
「そう…、傷つけるため、救うため、力を見せるため、己を知らしめるため、どのように有り様を示したとしても「人を傷つける方法」であることに変わりはありません」
「ふきゅう…」
 しかし先程の奈々の舞いにはそのようなものが見て取れず、ちょっと卑しめるような言い方に残念なものを感じてしまう。
「しかしながら、泣き崩れる者を助けるのは善意でありましょう?、物の本質はどうであれ、それを示すのは己自身です」
「使っちゃいけないってことですかぁ?」
「封を解き放てるのは自分自身のみだということです、悪しき流れに委ねるか、善き有り様を示すのか」
「難しいですぅ…」
 いいことには使ってもいいって事でしょうかぁ?、でもでも、人を傷つけるのは悪いことですぅ…
 少々どころかかなり困惑し始めたミズホを見て、奈々は一つ例を出すことにした。
「あなたは、小鳥が死んでいたとすればどうなさいますか?」
「ふえ?」
 唐突な質問に戸惑うミズホ。
「可哀想だと思い埋めてあげますか?、道路に固まりへばりついていたとしても」
 車は通り続けるだろうし、手や爪で引きはがすのも一苦労だろう。
 爪の間には気持ちの悪い肉が詰まってしまうかもしれない、それをはたして我慢できるだろうか?
「…えっとぉ、前に猫さんが死んでて、どうにかしてあげたいとは思いましたぁ」
「ええ、そしてどうしましたか?」
「えっと…、その時は」
「あなたは何かをしてあげたいと思い、どうしましたか?」
 正解は、猫だったから恐くて近寄るのが精一杯だった。
「ふきゅう…」
 落ち込むミズホ。
「そしてそれを見た人はどう思いますでしょうか?」
 奈々は話の先を続ける。
「汚いものを触っていると思うでしょうし、敬遠もするでしょう」
「そんなのないですぅ!」
 猫に対する恐怖感があっただけで、汚いと思ったわけではない、だからミズホは声を荒げた。
「しかし死んでしまった生き物は「生ゴミ」でしかありません、しかしその「有り様」を正しく葬ってあげる事で、皆の見る目は変わりますでしょう?」
「でもでもぉ!、そんなの酷いですぅ!」
 最初は汚らしいと思っただなんて。
「その考えを改めさせるのも「力」なのです、腕力でも技でもなく、あなたと言う「有り様」がその心を共感させるのです」
 ニコリと微笑む。
「あなたの姿を見て、皆も可哀想だと思い直して下さいますでしょう、それが「有り様」なのです、あなたと言う有り様、わたしの教えていることはそう言う事であり、決して「舞稽古」ではありません」
 力は見た目だけのものではなくて、心もまた力なのだと教え諭す。
「人の生き方です、わたしがこれまでに学んだこと、しかしそれも絶対では有りません」
「ふえ?」
「わたしもまだ子供ですから」
 自分で自分を子供だと言い切れること、その立場を受け入れること。
 その上で自分を主張する眩しさが奈々には存在している。
 だからミズホは「ふぇえ…」っと眩しげに見惚れた。
「わたしもこれからの生き方によって多くを学びます、その中からまた思い直す事もありましょう、人はきっとそうして多くのことを学び取りながら、何度も立ち返るのだと思いますよ?、これでよかったのだろうか、と」
「わたしは先輩に教わって良かったと思ってますぅ!」
「ありがとう」
 奈々もまた、そんなミズホに目を細めて微笑した。
 わたしもまたあなたから学んでいますよ、と、それは心の中だけで呟いて。
「心の有り様、これが母とは違うのでしょうね…」
 奈々はそう言って、朝の言葉を締めくくった。






「はい、え?、あ、カヲル君?」
『やあ、どうしてるかと思ってね?』
 登校途中にかかって来た電話はカヲルからのものだった。
「ちょっとカヲル!、すがすがしい朝なんだから邪魔しないで」
 腕を組んでいた事もあってか?、レイはシンジの耳に顔を寄せるようにして携帯を挟んだ。
『今シンジ君と二人きりなんだろう?、そんなに目くじら立てなくてもいいんじゃないのかい?』
「立てるに決まってるでしょ!」
『そうなのかい?、僕はまたてっきり、シンジ君にべたべた甘えてると思っていたんだけどね?』
 レイ、真っ赤になって轟沈。
 口をぱくぱくさせながら固まってしまったので、シンジは苦笑いしながら尋ね直した。
「それで…、どうしたのさ?」
『ん、何がだい?』
「なにか…、あったんでしょ?、でなきゃカヲル君から連絡して来るはずないもの」
 今までだって、と、勝手に何処かへ行くカヲルを批難する。
『お見通し、と言うわけかい?、これも愛の成せる技だねぇ』
「なに言ってんだよ…」
『やはり心が通じ合うというのは』
「切るよ?」
『寒いよ、シンジ君』
 冷凍庫で氷付け寸前になっているような声を出す。
「まさかまたタタキさん?」
『またとは心外だねぇ?』
 最近心当たりが多過ぎるのか?、さすがにシンジも鋭くなっている。
「レイも怒ってるよ?、なんだか企んでるんじゃないかって…」
 ちらりと見る、まだレイは俯いて「そりゃまあ、でも」とかぶつぶつ呟いている。
「僕だっておかしいって気がしてきてるぐらいだからね?、それに…」
『ああ、まあそのことについては確かに素人の起用も面白いんじゃないかって、後押しはしたけどね?』
「やっぱり…、ねえ、どうして僕なの?」
 シンジは今だに尻込みしていた。
『他に音楽をやってる人を知らなかったからね?、それにシンジ君はセミプロみたいなものだから』
「お金なんて貰ったことないよ」
『だから面白いと思ったのさ、そこそこ実力が有るのは知っていたから…、と、まあその話はまた今度、今朝は別の用件があって電話したんだよ』
「用件って?」
『実はね?』
「うん、うん…、ええー!?」
 シンジの上げた声にびくっとする。
「ど、どうしたのシンちゃん!」
 だがシンジはレイを無視して、内容を聞かれないように距離を置く。
「それ本当なの?、カヲル君!」
「シンちゃん!」
 だがシンジはカヲルからの返事に考え込むように空を見上げる。
「…わかった、あの、後でカヲル君宛にメールしたいものがあるんだけど」
 シンジは思い詰めたような、それでいてどこか落ちついた口調でそう答えた。







[BACK][TOP][NEXT]


新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
内容の一部及び全部の引用・転載・加筆その他の行為には
作者である私と原作者naryさんの許可または承認が必要です、ご了承ください。

本元Genesis Qへ>Genesis Q