NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':80 


「なによあの女、むかつくわねぇ…」
「アスカぁ、だからって苛めは」
「んなことする分けないでしょうが!」
 洞木はそっと溜め息を吐いた。
 アスカ、影響力って知ってるのかしら?
 あれから数日経っているというのに、マユミの側に人影は無い。
 みなアスカのご機嫌を伺って…


「ひっどーい!、あたしこんなことしないわよ!?」
 自分と重ねて読んでいただけに、アスカの怒りはいきなりトップに叩き込まれた。
「これってどういう事よ!」
「フィクションだよ」
「あんたバカぁ?、学校の奴らって絶対勘違いするに決まってるじゃん!」
 見る人間が見れば、それが全て実名で関係もほぼ同じだと分かるだろう。
 だがそれを冗談として笑える人間は一握りの身内だけだ。
「ま、話題ってのはそうやって広げていくもんさ」
 こちらもカヲルに触発されてか?、千葉もビールを開けていた。


 ペラ…
 マユミは図書室で、一人本を探していた。
 授業と授業の合間の十分休憩、昼休み。
 そのほとんどをこうして過ごしていた。
「あ、山岸さん…」
「碇君?」
 珍しい、そんな目をマユミは作る。
「ごめん…、ここしか逃げ場が無くて」
「逃げ場?」
「そ…、アスカの親衛隊って奴」
 こそこそと棚の後ろに隠れるシンジ。
 ガラ!
 戸が開いて、いかめしい顔をした少年が中を見渡す。
 ギロ…
 その途中で視線がマユミとぶつかった。
「ひっ!」
 それだけでマユミは小さく悲鳴を上げてしまう。
「確か…」
「え…」
「山岸だっけ、お前、惣流に嫌われてんだよな?」
 ずかずかと中に入り込んで来る。
「暗い奴…、お前みたいな奴の方が碇に合うのに」
 なに…、言ってるの?、この人。
 困惑顔で少年を見上げる。
「まあいいけどさ、碇知らないか?」
「え?、さっき…」
 口ごもる。
「来た?」
「はい」
「ちえっ、どこに行ったんだよ、あいつ」
「あの…」
 勢い、口にしてしまった。
 なんだよ?、そんな目で見られてマユミは思わず目を伏せる。
「…あたし、嫌われてるんですか?」
 ふぅっと溜め息。
「お前だけじゃないよ、惣流って碇に近付く奴みんなに噛みついてるし」
「あたし…、そんなことしてないのに」
「…まあ気をつけとけば?」
 とっとと出て行く。
 嫌われてるんだ…
 マユミは落ち込んだ。
「ごめん…」
 その呟きに、はっとシンジのことを思い出す。
「あ、いえ…、あたしが悪いんです」
「違うよ、悪いのは僕だ…」
「あたしが…、話しかけたりしたから」
「僕がアスカの機嫌を悪くしたからだよ」
「ごめんなさい…」
「ごめん…」
 二人でひたすら謝り合う。
「…なんだか、謝ってばかりですね?」
「そうだね?」
「碇君って、惣流さんと…、付き合ってるんですか?」
 ぽろっと言葉が漏れるように出てしまった。
「付き合う?」
「違うんですか?」
 どうしてこんなこと聞いてるんだろ?
 良く分からない。
「違うよ、そんなんじゃないよ…」
「違うん、ですか?」
「うん…」
 シンジは辛そうに顔を歪めた。
「僕…、からかわれてる、だけだから」


「むぅ…」
「またかい?」
 相手をしているのはカヲルのみになりつつある。
 タタキと千葉は、お互い酔っ払って良い感じだ。
「これじゃああたしって…」
「まるで悪者だねぇ?」
「わかってんならなんとかしなさいよ!」
「まあまあ、まだ始まったばかりじゃないか…」
 納得行かないわ!
 アスカは食い入るように、台本の続きを読み始めた。


「アスカぁ…、いい加減はっきりした方がいいんじゃない?」
「なぁにが?」
 もごもごと頬張りながらウケ答える。
「碇君のことよ」
「シンジぃ?」
「碇君、山岸さんのことが好きなんじゃないかしら?」
 ぶぅ!っと吹き出す。
「げほっ!、急になに言い出すのよ!」
「…なにするのって、言いたいんだけど」
「うわ…」
 おかずまみれになった洞木の笑顔がとても恐い。
「ご、ごめん、許して!」
「まったく…、それで、碇君のこと、どうするの?」
「ど、どうって…、ねぇ?」
 真っ赤になり、指先をちょんちょんと突き合わせたりする。
「あいつとはその…、そう!、腐れ縁よ、腐れ縁!」
「ふぅん…、じゃあ碇君があの子と付き合ってもいいんだ?」
「はん!、あいつにそんな甲斐性あるわけないじゃない、そ・れ・に…」
「それに?」
「恋ってのは、障害があるほど燃えるのよ!」
 …不燃じゃなきゃいいけど。
 洞木は口に出しては突っ込まなかった。


 そしてアスカの行動はエスカレートを始めた。
「シンジ、帰るわよ!」
「え?」
「え?、じゃないわよ、帰るって言ってるのよ!」
「なんでさ?、洞木さんは?」
 いつも帰りは別々なのだ。
 どうして突然?、と言うのが本当の所だったりする。
「ヒカリは用があるのよ!、それともあんた…、あたしと帰りたくないってわけ?」
「そうじゃないけど…」
「じゃあなによ?」
 シンジは口ごもり、そのまま鞄に片付を始めた。
「さ、行きましょ?」
「あ、アスカ!?」
「なぁに?」
 ニコニコと腕を組む。
「ちょ、離れてよ!」
「嫌よ♪」
 なんで突然?
 シンジにはその変化が分からなかった。


「はぁ…」
 翌日の学校、屋上。
「どうしたんだい?、暗いね、今日は」
「カヲル君…」
 シンジがもたれているフェンスの横に、カヲルも腰を預けるように体重を掛けた。
「アスカちゃんかい?」
「うん…、どうしたのかなって」
 今朝も変だった。
「遅刻してもいいから、手を繋ごうって言うんだ…、今まで目が合っちゃっただけで何見てるんだって怒ったくせに…」
「…やめたんじゃ、ないのかい?」
「なにをさ?」
「意地を張るのを…、好きだと言う言葉は口にし辛いものだからね?」
「好き?」
「好きなんだろう?、アスカちゃんは」
「誰を」
「シンジ君をだよ」
「まさか…」
 ちょっとだけ間が開く。
「シンジ君は嫌いなのかい?」
「…嫌いじゃないと思う」
「じゃあ好きなのかい?」
「…苦手なんだ」
「どうして?、ずっと一緒だったんだろう?」
 シンジは頷く。
「でも変わったんだ、アスカ」
「変わった?」
 シンジは昔を思い浮かべた。
 泣いてる赤い髪の女の子。
 強くなると走り出し、シンジはその後ろ姿を見送ってしまった。
「僕には、なにもできなかった…」
 だからただ見ていた。
 アスカは確かに強くなった。
 からかいの対象だった髪は、いつか奇麗だと誉められるようになった。
 みんなも奇麗と言う言葉を、からかいから好きと言う感情に置き換えた。
「アスカ…、その頃からかな?」
 外面を作るようになった。
「でもシンジ君には、いつものままなんだろう?」
「でも邪魔だったんだと思う」
 こっち来ないで!
 外では他人の振りしてなさいよね!
 あんなのただの幼馴染だってば。
「ねぇ…、僕なんてからかって、どうしたの?」
 カヲルの目が細くなっている。
 その視線の先は、校舎の下だ。
「あれは…」
「山岸さん、だね?」
 何故かは分からないが、シンジは急いで駆け出していた。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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