NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':83 


 はぁはぁはぁ…
 その隊員は必死になって逃げた。
 湿地の湿った草に足を滑らせ、泥の中に顔を突っ込み、口に土の味が広がっても逃げた。
 ガサガサガサ!
 頭上の木が不自然なほどに揺れる、それはまるで何か「大きなもの」が揺すったかの様に。
「ひっ、ひぃ、ひぃいい!」
 一瞬後、男の視界は黒いものと唾液を飛び散らせる牙と平たくざらついた舌に覆われ、その恐怖は腕を千切られた痛みをも上回っていた。
 彼はライフルを持っていた事さえ、恐怖の前に忘れていた。


「…で?」
 リツコが先を急かす。
「その遺体の血液中から、おかしなものが見つかりまして…」
 手短なパネルにタッチして、その情報を検索し、引き出す。
「この酵素です」
「唾液か何かから混ざったんじゃないの?」
「まあそう考えてもおかしくないのですが…、とにかく、これとその怪物のものらしき飛び散った肉片が発見されましてね?」
「飛び散った?」
「銃弾を浴びた時のものでしょう、問題はその遺伝子です」
「これは?」
 表示されたデータは二つ。
「片方はあの怪物のもの、もう一つは…」
「同一のものじゃないの?」
 ナオコも興味を引かれたようだ。
「いえ、一週間ほど前でしょうか?、あの村で肝炎がはやりましてね?、それで医者が血液サンプルを取っていたのです」
「人間だというの?、あれが…」
「わたし達はそう見ております」
 リツコはナオコ邱を襲った化け物を思い返して眉をしかめた。
「あれが、ねぇ…」
「もちろんこのデータはそのサンプルを元にとある変化を促進させると、どの様な結果に落ちつくか、と言うものをシュミレートした結果です、変異は99.89%の所で停止しました」
「その条件は?」
「あの酵素です」
 ようやく話が繋がった。


「つまりあなたは、あの怪物から侵食した酵素が体内で遺伝子を書き換えているとでも言うの?」
「あの肉片はその死亡した隊員の遺伝子を培養した結果です、そしてその酵素は検体にも…」
「あのリス?」
「そうです」
 やはり出所はここか。
 ナオコ、リツコ、リキはそれぞれに眉をしかめた。
「処分予定だったものを「可哀想だ」などと所員が持ち出しまして…、結果はご承知の通りです」
「それで取り戻そうとしたのね?」
「動きを米軍にも知られてしまいましてね?、まあ、CIAも動いたようですが」
「いい迷惑だわ」
「まったく…」
「あなた達のしたことが、よ」
「は?」
「わからないの?」
 リツコはニヤリと笑う。
「ならあなたも成り行きだけを見ていなさい」
 ナオコに視線を送る、ナオコはリキに頷く、リキはほんのわずかにだけ、手に持っているノートパソコンを持ち上げた。
 その中には、先程のどさくさ紛れにハッキングした、この施設の全データが入っていた。


「冗談じゃねぇ!」
 ダンッと机を叩いた拍子に、その上のマグカップからコーヒーがこぼれた。
「あれのD級勤務者までは避難を始めてるってのに、こんな時に女子供を置いてどうするんだ!」
「しかしなぁ、彼女達も君とはそう歳も変わらんだろう?」
「俺とは違うだろうが!」
 怒るジャンの後ろには、ニコニコとサヨコとマイが並んでいた。
「それに彼女らも分かってて残ると言っているんだ」
「分かってるわけないだろうが!」
 警備主任のヤマモトは肩をすくめた。
「男なら「俺が守ってやる」ぐらいのことは言っておけ」
「あいつらのヤバさは俺が一番良く知ってるんだよ!」
 ジャンの背きに合わせて尻尾髪もくるっと回った。
「お話し終わり?」
「っさい奴だなぁ、まったく、どうしてこんな所まで…」
「はぁい!、それはぁ、マイがカンケーシャだからでぇっす!」
「はぁ?」
「…スクールが襲撃されただろう?、その子の誘拐の首謀者がマクドゥガル、ついでにあの実験体の強奪未遂犯、赤木博士の研究所の襲撃犯人でもある」
「ちっ」
 ジャンは舌打ちすると、なんとなくマイの頭にポンと手を置いた。
「手元に置いとく方が安全か…」
「えへへ〜」
 マイはにたらとしながら、頭の上の手をキュッと掴んだ。



続く







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