NEON GENESIS EVANGELION
Genesis Q':84
「じり貧ね」
「身も蓋も無いわね?、リッちゃん」
二人はモニターの「警報」をチェックしながら毒づいた。
「こんな所で死ぬつもりは無いんでしょう?、いい方法、見つかったの?」
「さあどうかしらね…」
何を考えてるのかしら?
何を考えているの?
二人は同じことを考えて、視線も向けずに様子を窺い合っていた。
「サヨコさん、コーヒー、もう一杯頂けるかしら?」
「はい」
「こっちにも頼むわ?」
「わかりました」
「マイが運ぶぅ!」
にっこりと微笑み、いつの間にか確保していたコーヒーメーカーと固形燃料でコーヒーを入れるサヨコ。
こぽこぽと立つ泡を見て、にこにこと「お手伝い」をしようと待ち受けるマイ。
四人が居るのは何故だか待避済みであるはずのコンピュータールームだった。
●
「くっ、やつら何処へ向かうつもりだ?」
「研究施設じゃありませんね…、おそらく」
「コンピュータールームか、あそこには?」
「途中に第三小隊を回してあるはずですが」
「やられた、か…」
トラップを使いながら下がっている内に、幾つかの分岐点で部隊を分けていた。
「あそこが落ちるとまずいな、迂回路は?」
「D−2区画から回れます」
「使えそうなのを二・三人連れていけ」
「はっ!」
敬礼を返し全力で駆け出すと、無言で四人ほど後を着いていった。
そしてサヨコ達が居るコンピュータールームの入り口付近にリキは居た。
「来る、な…」
腕組みを解いて立ちふさがる。
相手が丸腰だと一目見て分かるにも関わらず、あるいはだからこそか?、工作部隊は用心深く通路の角に身を潜めた。
カン…、カン、カラ…
転がって来る手榴弾、だがそれにもリキは動じない。
爆発と炎、工作兵が数人、ライフルで狙いを定めながら前に出る。
煙が動いた。
そよぐように動く、直後、晴れない爆煙の中に侵入した工作兵の四肢がずれた。
ずれるように取れてしまった。
「煙とは都合いい」
リキの手刀からは帯のような金色の光が泳いでいた。
「利用させてもらうか」
何が起こったのか分からずにもがいている兵士から、無造作に手榴弾を奪い取る。
リキはそれを転がした。
『殺せるものなら殺して見ろ!』
横薙ぎにガトリングガンを掃射するファットマン。
「のろまが何処撃ってやがる!」
それよりも早い動きでかわすジャン。
『逃がすものか!』
既にガスは晴れている、それにファットマンのカメラアイは、常人では認識できない領域でのジャンの動きを追尾していた。
視神経に直接接合する事で認識から反応までのタイムラグを減らしているのだ。
『死ね!』
「死ぬのはそっちだ!」
懐に潜り込んで蹴り飛ばす。
『ぬあ!』
二百キロは越える巨大が浮いた。
「ブクブクと太ってんじゃ…」
背後に回って首に手をかける。
「ねぇええええええええええ!」
背負い投げ、ジャンはファットマンをエレベーターの中に放り込んだ。
閉じていた扉が勢いに負けてひしゃげる。
「落ちやがれ!」
ショットガンを天井へ向けて連射、ワイヤーが切れて降下を始める。
「エレベーターはそこまでだがな、落下事故の防止用に深くなってるんだよ」
そしてこのような時の「危険物隔離保管庫」にもなっていた。
黒煙の中を金色の光が閃く度に、どの様な銃弾、刃さえ通さなかったスーツが裂ける。
火器は通じず、敵さえも見えない、それはリキの壁がリキと言う生体の反応をセンサーから隠してしまっているからなのだが、当然のごとく彼らはそれを知らない。
よって底無しの恐慌へと陥っていく。
「これで終わりか」
最後の一人に手刀を振り上げる。
「なっ!?」
しかし『そいつ』は、うずくまった状態から跳ね飛んだ。
「まずい!」
天井を蹴り、一瞬でリキの背後に降り立つ。
「マイ!」
咄嗟に出たのは敵が開けた扉の向こうに居る少女の名だった。
「ひゃは!」
入り込んだ男は一瞬中に居る女子供を見て奇妙な笑いを漏らした。
「この!」
リキが背後から襲いかかる、が、金色の帯はかわされた。
「相手が、早過ぎるのね…」
それを見て冷静に呟くリツコ。
「機械化兵士…」
眉をひそめるナオコ。
「これならどうだ!」
壁を直接、広範囲に叩きつける、が。
「またか!?」
歪んで散らされた。
「磁界増幅装置、あれも持っていると言うの?」
その動き、姿勢は猿に近い。
自らマスクを下ろす、口元はにやけて涎が流れ、泡もふいていた。
明らかに正気ではない。
「常識を疑うわね?」
「米軍ならこれくらいやるでしょう…、来るわよ?」
「マイ、サヨコ!」
二人がリツコ達のために壁を展開しようとする、が、それよりも早く壁が現われた。
「なっ!?」
驚く天使達。
ぶつかった反動で落ちる兵士、そして壁は割れて砕けた。
「こんなこともあろうかと、空中元素固定装置を持って来ておいたのよ」
ニヤリと笑うナオコ。
「まだ実験段階だから壁を作るので精一杯なんだけど」
高速走行中のダンプカーで衝突したようなものである、機械化兵は立ち上がったが、ずるりと足を引きずっていた。
「おおっ!?」
唸り声と共に足元が揺れた。
「大人しくしてろ!」
叫ぶジャン。
なにしてやがる、まさか!?
『ぬぉおおおおお!』
ファットマンは真横の壁に砲弾を撃ち込んでいた。
『がぁあああああああ!』
それが無くなるとガトリングガンで削る、遂に壁は崩壊し、穴はその向こうの配管のための空間へと到達した。
「で、どうするのかしら?、母さん」
至極冷静にタバコに火を点けるリツコ、ここがコンピュータールームである事を忘れているようである。
「あら?、体力担当は若い人に任せましょう?」
「そうもいかないみたいだけど…」
ひっ、ひひっと下がっていく敵に、リツコは何かあるのだろうと読んだ。
サングラスを取り出してかける。
「熱量と放射線の数値が高過ぎるわ、恐らく核を持ってるわよ?」
「それはまずいわね?」
「ええ、どうしようかしら、活動用電池にしては大き過ぎるし、死と引き換えに自爆だなんて、最後っぺとしても最悪ね?」
二人はなんとなくリキを見たが…
「奴を倒すと同時に壁で…、だめだ、核なんて防げない」
「…意外と使えないわね?」
「リキ情けなぁい」
マイの何気な一言がざくりと来る。
「マイちゃん?、そう言う事は全部終わった後、「ジャン君」の前で言って上げなさい」
「リツコ…、あなたね?」
「男は傷ついて成長するものよ?、母さん」
「立ち直れなくなっても知らないわよ?」
「わたしの男じゃないもの」
「酷い子ね?、誰に似たのかしら」
「母さんよ」
「ひっ、ひっ、ひっ…」
男の笑いが途切れ始める。
「まずいわね、ショックで鼓動が停止しかけてるわ」
「短い人生だったわね?、リッちゃん」
「ま、わたしはまだ死ぬつもりないから」
白衣の裾を翻して前に出る。
「リツコさん!」
慌てるリキ、だがリツコはするりとかわして機械化兵の前に立った。
「ひぃ!」
手を伸ばすように上げる、その甲に単発の銃が仕込まれている、しかしリツコは顔をしかめただけだった。
磁界が発生し、ブンと言う音の後、彼の四肢は崩れ落ちる。
「あ?」
状況が理解できないらしい。
「コンピュータールームだからやりたくなかったんだけど、あなたの生体素子とメカニックを連動してる制御装置ごと潰させてもらったわ?」
手元のモニターを見るナオコ。
「さすがね、リッちゃん」
ブラックアウトしてしまっている。
「これで再起不能になった研究所がまた一つと言う所ね?」
どうやら放出した磁界が強過ぎたらしい。
「ここは端末だけなんだから、メインはこれぐらいで落ちたりしないわよ」
「そうならいいわね?」
だから嫌いなのよっ、研究所なんて!
リツコは腹いせに機械化兵の顔面を蹴り付けた。
巨大なパイプを踏み潰しながら、真っ暗な空間を飛び下りていく。
「待ちやがれ!」
ジャンも後を追って飛び下りたが、中々捕まえられずにいた。
ひょいと気軽に跳び下り、ズムっと過重によって足場としたパイプをへこませるファットマン。
『来い!』
ガトリングカノンは捨てて来ていた、代わりに通常の倍の口径はありそうなライフルを握っている。
「ちっ!」
上の足場を取っていながら、ジャンは攻撃できずにいた。
パイプの中身のことが恐いのだ、配線であればいいが、もしガスの類ならば…
その上少ない足場と狭い空間が動きを限定する。
『幾ら早かろうとも…』
空中で軌道を変えるような物理法則外の現象を起こせぬ限り、ファットマンの経験から来る読みの範囲から抜け出すことはない。
ジャンは走り、パイプを蹴って飛ぶ。
その動き、勢いから飛んだ角度と速度を読み、予測した位置に狙いを合わせて引き金を引く。
「がっ!」
ジャンの腹に穴が空き、釣り上がるように浮き上がる。
二発、三発と続いて叩き込まれ、ジャンはそのまま落ちていった。
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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
Q'
は
Genesis Q
の
nary
さんに許可を頂いて私
nakaya
が制作しているパロディー作品です。
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