NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':87 


「ぶっ」
「笑っちゃダメですぅ!」
「すまんって」
「ぶぅ、ですぅ…」
 膨れたままそっぽを向く。
 ちなみにやはり伊達だからだろうか?、ミズホは良く眼鏡を掛け忘れている。
 この時もやはりかけていなかった。
「わしが戻った時にはみんなおったし、そっちかて爆睡しとったやないかぁ?」
「ふぇええ…」
 ちょっぴり自信の無くなるミズホ。
「でもでもぉ…」
「夢や夢、どうせお腹膨れて寝てしもたんやろ?、子供みたいなやっちゃなぁ」
「子供じゃないですぅ!」
 訴えながらミズホはちょっと考えていた。
 なんだか最近、良くこんな事をしていますぅ、と…


「はぁ?、今日の五時間目ぇ?」
「はいですぅ…」
 学校帰り。
 アスカ、レイと並びながらミズホは窺うように目を上向ける。
「なぁんてことなかったわよ?、今日は美術だったけど、ああ、そう言えば」
「何かあったんですかぁ!?」
 やっぱり!、っと身を乗り出す。
「…なんでもないわよ」
「ええ〜、なんだか気になりますぅ!」
 ねだるようにアスカの背を掴むのだが、アスカにも言わない方がという気持ちがあった。
 ちらりとレイの様子を窺う。
「な、なに?」
「ううん、なんでもないわよ」
(マユミ…、なんでレイの肖像なんて描いてたのかしら?)
 なんだか目がうっとりとしている様で恐かった。
 アスカの疲れた口調にレイも首を傾げる。
「ま、ミズホの話とは関係ないわよ」
「ぶぅ、ですぅ…」
「それより、レイの方はどうだったのよ?」
「あたし?」
 キョトンとして、自分の顔に指を向ける。
「今日は加持先生の授業で…、カヲルと浩一君が逆宝塚やってただけだけど…」
「うげぇ…」
「ちょおっとシンちゃんの貞操がマジヤバかったなぁって、はは…」
「はは…、じゃないわよ、あんたねぇ!?」
「だってぇ、配役は多数決だもん、仕方ないじゃない」
「で?」
 横目に睨む。
「あんたは何を推薦したのよ?」
「キューティーハニーのハニー役」
「はあっ!?」
「脱げ脱げって、みんなで盛り上がっちゃってぇ」
「酔っぱらいの集団か、あんた達は!」
 その頃、シンジは。
「…うう」
「泣かないで、シンジ君」
「どうせ、どうせ僕なんて日本で一番女装の似合う男の子なんだ」
「シンジ君…」
「カヲル君…」
 まだ劇の続きをやっていた、いや、もう劇とは関係無いのだが…


「ああ、そう言えば…」
「なによ?」
 家に帰りつく寸前になって、突然レイは言い出した。
「うん…、毎年、春と秋、陽気の穏やかな季節になるとあったんだって」
「なにがよ?」
 いい加減にしなさいよねぇっと、アスカはちょっと切れ気味だ。
「なんでも五時間目にみんなバタバタと倒れちゃって、気がつくのは終業のチャイムなんだって」
「それって…、みんな寝ちゃってるだけじゃないの?」
 呆れるアスカ。
「それにしても先生も含めて全員がよぉ?」
「あんたまさか…、妖怪の仕業とか言い出すんじゃないでしょうね?」
「そうは言わないけどぉ、やっぱり学校の七不思議の一つだしぃ」
「ふぇええ…、そんなのあるんですかぁ?」
「中学の話よ?、先輩から伝え聞いた所によるとぉ」
「ふんふん…」
「あんたねぇ…」
 ちなみにアスカはそんな話を聞いたことがない。
 ようするにでっち上げだと言う事だ。
「そうです、きっとそれですぅ!」
「…そろそろミズホ騙すの、やめなさいよね?」
「嘘じゃないよぉ…、それにもう冬なんだから関係無いしぃ」
 あの子にそんな冗談が通じると思ってるのかしら?
 アスカはこめかみを強く揉み出した。






「消える五時間目やと?」
「はいですぅ」
 翌日、ミズホは自信満々で切り出した。
「この秘密は、きっと七不思議にあるはずですぅ!」
「なんでやねん、っちゅうか、七不思議ってなんや?」
「ふえ?」
「他の六つはなんやねん?」
「そ、それはぁ」
「まあまあ」
 割り込むケンスケ。
「どうせミサト先生が適当言ってた奴だろ?」
「そんなんあったかぁ?」
「あの先生、そこら中で作ってるぞ?」
 ちなみにケンスケが確認している七不思議だけで二十一存在している。
「で、具体的になにがしたいんだよ?」
「えっとですねぇ…」
 箸を咥える。
「んなもん、寝てたら起こしたるがな」
「そうだよなぁ、それですむもんなぁ」
「違いますぅ、あれはぁ、七不思議のぉ」
「ごめぇん、遅くなっちゃってぇ」
 えへへっと頭を掻きながらマナがやって来た。
「トウジ、お茶買って来たわよ?」
 ヒカリもだ、反対の手にはお弁当。
「なになに?、何の話してたの?」
「鈴原さんがぁ、寝かせないからぁ、ってぇ」
「すぅずはぁらぁ?」
「誤解やぁあああああああ!」
「まあそれはそれといたしましてぇ」
「…わざと?」
 ちょっとだけ焦るマナ。
「鈴原さんが信じて下さらないからですぅ」
 ミズホはぷんっと。
「復讐か…」
 きらりんと光るケンスケのメガネ。
「共感してんじゃないって…」
「ま、カメラでも置いとくからさ?、後でそれ見りゃ納得するだろ?」
「ふぃい…」
 ミズホは不満気に箸をかじった。






「ふぇえええええええええ!」
 気がつくとまた落ちていた。
「へん〜〜〜、しんですぅ!、うきゃう!」
 ぼむっと変身、ショックアブソーバー付きのうさ尻でぼんっと跳ねる。
「ふきゅう…」
 ぷりぷりとお尻を動かして起き上がる。
「ここはぁ…」
「穴の底だよ」
「あ〜、カヲルさんで、すぅ…」
 ふぎゃああああああああ!、っとミズホは悲鳴を上げた、なぜなら。
「何を驚いているんだい?」
 ニヤリと笑う、彼が猫の着ぐるみを着ていたからだった。


 ふぎゃああああああああ!、っと言う奇声に窓がビリビリと震動している。
 突然起き上がったミズホにクラスメイト一同は唖然とした。
「な、なんや!?」
「鈴原ぁ、またなんかやったのかぁ?」
「わしとちゃうっちゅうに!」
 しかしタイミング的には、起こそうと背を叩いたトウジの動きと同じであって…
 誰がどう見てもトウジが何かをしたようにしか思えなかった。
「誤解なんやぁ!」
 ただジト目だけが残された。


「と言うわけで怒らせてしまいましたぁ」
 …バカ?
 と言う目で見ているアスカとレイ。
「ははは…、僕が謝っておいてあげるから」
「ふきゅう…」
 しょぼんとしているようだが、実際には別のことを考えている。
「でもでもぉ…、ウサギで次がね…、でしたからぁ」
「次はトランプ?」
「女王様かもねぇ、よかったわねぇ?、レイ〜」
「なによぉ」
 アスカの肘を押し返す。
「あたしとカヲルが出て来てシンジが関係無いんなら、あとはあんただけじゃない」
「と言うことは、鈴原君や相田君はトランプなのかい?」
「下僕って感じぃ?」
「あたしそんな役、嫌!」
「ふきゅう〜、そんなことを言われましてもぉ〜〜〜」
「…トウジ、ケンスケも可哀想に」
「違うとは考えないんだね?」
 なんだかんだと言いながら、二人もミズホの夢を楽しみにしているようだった。







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