NEON GENESIS EVANGELION
Genesis Q':91
「ふむ…、それでは揃った所で、食事にしよう」
上座に座り、腕を組んで偉そうにふんぞり返る。
「良いのかなぁ?」
「なにが?」
ふがふがと物を詰めながらのレイ。
既に食っているらしい。
「いや、これって…」
手に持つコップ。
「お酒なんじゃ…」
光に透かす。
アルコールのために歪みが見えた。
「シンジ、逃げては行かんぞ」
「そう言う問題じゃなくて…」
コップを下ろす。
「母さんは居ない、わたしの相手を出来るユイは来れなかったのだ」
「はいはい、おじ様」
「む、すまんな…」
アスカの酌を受ける。
(…要するに一人で呑みたくないのか、父さん)
ジト目で睨むが、ニヤリと笑い返されて詰まる。
(なにを…、何を考えているんだ、父さん!?)
まさか僕を酔わせて…、とよからぬ想像にはまり込んでいく。
かなり被害妄想が酷いようだ。
そんなはまり込んだ思考に、涼やかな音の様に彼の言葉が入り込んで来た。
「ビールは生に限る、ドライは苦いからね?、でも日本酒とワインは等価値なんだよ、僕にとってはね」
「カヲル君…」
呆れて居並ぶコップを眺める。
「いきなりちゃんぽんは危ないと思うよ?」
部屋は大部屋が取られていた。
襖を隔てての続き部屋になっている、向こう側の部屋の奥には、さらに別の部屋があった。
風呂場である、温泉のお湯は大勢が入るためにお世辞にも奇麗とは言いがたい、露天なのも影響している。
そのため、特に女性への影響を考えてなのだろう、各部屋に体を洗うためのバスルームが設けられていた。
もちろん湯は温泉から引いているし、売りにもなるようガラスの壁からは芦の湖が一望できた。
「さあシンジ君、僕のお酌を受けておくれ?、でないと酔った君を介抱できないんだ」
「よ、酔ってるの?、カヲル君?」
「さあ!」
「飛んでけー!」
突然襟首を掴み、ミズホが楽しげな笑いを上げた。
背を背負うようにして放り投げる、一瞬でカヲルは窓の外へと消えてしまった。
「ああー!、か、カヲルくぅん!」
ばっちゃーんと非常に痛そうな音がした。
「下は温泉じゃなかった?」
「じゃ、死んでないわね?」
「…温泉って」
(露天風呂、上から覗けないように屋根があったんじゃ…)
たらりと嫌な汗が背中をつたう。
(おかしい、なんで?)
わりと大人しく刺し身を摘まんでいるレイとアスカであるが、何故かゲンドウに擦り寄り交互に酌を続けている。
いつものように、シンジの側には来ないのだ。
ハッと気がつく。
(酔わせるつもりなのか!?)
「シンジ様ぁ、これ、美味しいですぅ」
「あ、ちょっとミズホ!」
ミズホがつついているのは紙製の鍋で煮えたぎる蟹だ。
問題は掻き回し過ぎて紙が破れかけている事だろう。
「あああ、危ないって!」
「カヲルさんのもーらい、ですぅ!」
しかも酷い。
「なんでこんなにテンション高いんだ?」
首を捻る、そんなシンジに約二名ほどの目が光っていた。
●
時間は少し戻って下校中である。
「クリスマスの予定はあり、かぁ…、それでプレゼントは?」
「考えてないわ、あんまり高いものじゃ可哀想だし」
ひらひらと手を振るアスカ。
「可哀想って?」
「あたしでしょ?、レイにミズホ、シンジの気が引けない程度のものに抑えないとねぇ…」
お返しで苦労させる事になってしまう。
(どうせいつも奢らせてるんだし)
ちょっとだけの罪悪感。
お返しはきっちりとしろ、とのしつけからか?、シンジは物を貰った時には等価かそれ以上のものを送り返そうとする。
しかしここにレイとミズホが加わって来た、当然シンジの出費は比例して増えてしまう。
「はぁ、気を使ってるのね?」
「あたしはぁ、シンちゃんに「あたしを貰って」って」
「リボンを着けて?」
「そうそう!」
はしゃぐレイ。
「ばっかねぇ」
「なんでぇ!?」
「それで貰ってくれるんなら世話無いわよ」
「い、碇君って…」
(じゃあどうすれば誘った事になるのかしら?)
トウジなら…、と考えていやんいやんと首を振る。
「シンジってば人の裸見て欲情するより恐がるのよねぇ…、信じられる?」
「だってアスカってば、シンちゃんが覗いたら怒るじゃない」
「当ったり前でしょ!」
「なんでぇ?、シンちゃんだったらいいじゃない」
「バカ!、見せるのと見られるのとじゃ大違いでしょうか!」
「むぅ…」
条件反射って奴なのね…、とヒカリは強く同情する。
「まぁまぁ…、碇君だって覗こうと思って見ちゃったわけじゃないんでしょ?」
「そうだけどぉ…」
「アスカってそう言うとこ子供なんだから」
「なぁによぉ、ヒカリったら大人ぶっちゃって…」
「見て欲しいって気分の時じゃないと恥ずかしいんでしょ?」
「当ったり前でしょうが!、じゃあヒカリはどうなのよ?」
「あ、あたし!?」
「…なにうろたえてんのよ?」
「あっ、もしかしてヒカリって!」
「ああー!、もう、なんでもないんだったら!」
「だったら白状しなさいよ!」
「ヒカリちゃんって、「あたしを貰って?」がもう出来ないとか…」
「うっ」
「「ああー!」」
きゃいきゃいとはしゃぐ、が…
「トウジ…」
「お前って」
「その目はやめえええええ!」
シンジとケンスケの突っ込みに、トウジは電柱に頭をぶつけた。
●
(ヒカリってば、ヒカリってば!)
(そうよねぇ、もう十六だもん、大人よねぇ?)
とまあそう言う訳だったのだ、どうやら当てられてしまったらしい。
「うけけけけけ、ですぅ!」
「ああっ、ミズホが壊れた!?」
(ようやくね?)
(後は…)
ちらっと見た横目がぶつかり合う。
ミズホにも知らぬ間に相当の量を飲ませたらしい。
「アスカぁ、飲んでるぅ?」
「飲んでるわよ?、あんたこそ」
(嘘!、さっきからお茶ばっかりじゃない)
(ぱくぱくぱくぱく、良く食べるわねぇ?、ちっとは呑みなさいよ)
その真ん中で男はほくそ笑んでいた。
(うむ、良い感じだ)
座を外し、廊下を下ってロビーへ出る。
もちろん携帯電話を持って来てはいるのだが、こういう時は公衆電話だろうというのが美学だった。
「ユイか」
『あら、もうですか?』
「うむ、やはり大人は邪魔だろうからな?」
ニヤリと笑う。
その気味悪さの余りに、彼の電話に聞き耳を立てるような輩は居ないはずだ、が…
「碇」
「ああ」
背後に立ったのは冬月だ。
「慰安旅行に家族を連れて来ると言うから何かと思えば…」
「かまわん、ちゃんとアレクの権利でアスカ君達は同行させている」
「また書類を偽造しおって…」
冬月はちょっと頭を痛めた。
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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
Q'
は
Genesis Q
の
nary
さんに許可を頂いて私
nakaya
が制作しているパロディー作品です。
内容の一部及び全部の引用・転載・加筆その他の行為には
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