NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':92 


『ふえ?』
(ここはどこでしょうかぁ?)
 ミズホは周りが真っ黒な事に気が付いた。
「ふえぇ!」
 闇とも違う、黒一色なのだ。
 平地の感触はあるのに妙な浮遊感にも包まれていた。
 怖れから後ずさり、声に出す。
 ドンッと背中がぶつかった。
「危ないわねぇ!」
「ふえ!?」
 アスカが居た。
「アスカさぁん!」
「もう!、ジュースこぼれちゃったじゃない」
 手を振って水気を切っている。
「あ、す、すみませぇん」
 っと突然世界が転移した。
「ふえ?」
(ここは…)
 学校だった。
 それも中学校。
 2年の時の教室だった。
「どうかしたの?」
「あ、な、なんでもないですぅ」
「そう?」
「はいですぅ」
 小首を傾げるレイに素直に答える。
「それよりさっさと日誌書きなさいよ」
「ふえ?」
「ふえ?、じゃないっての!」
「ちょ、ちょっと待ったってば!、ほらミズホも、アスカお腹が空いて苛立ってんだから」
「あたしは猿かー!」
「うきー!」
「ばかにすんなー!」
「もきー!」
 くすくすとその様子を眺めながら、ふとミズホは窓の外からのカキンと言う野球部のノックの音に耳を傾けた。
 そこは何も無い世界だった。
 穏やかで、お互いに男の子の趣味を馬鹿にしあって、笑って済ませていられるような。
 そこには共通項が見られなくて、取り合いが起きるような要素は見当たらなかった。
 胸がときめくような恋も無く、みんな仲のいい友達でいられた。
(でも…)
 ミズホは道端で立ち止まって夕日を眺めた。
(つまんないですぅ…)
 ぶつかり合う事が何も無い。
 だから傷つけ合う事も起きようがない。
 その代わり相手に見せたり見せられたりする本音も隠されたままになっている。
 壁があった、心の壁が。
(はう…)
 そんな時に、歌が聞こえた。


アイシテル、アイシテルだなんて

嘘にも負けるようじゃ、伝えられないよね?


「好きなんだ」、都合だけで口にして

いつも側に居る

ずっと側に居て

泣いて、喚いて、冗談のように

笑って護魔化しの言葉、連ねてる

WowWow


想い高めていつまでも

願い詰め込んで空までも


想いを知っても答えは出せなくて

だから逃げよう、答えがみつかる

地平の彼方へ、どこまでも


WowWow


アイシテル、アイシテルだなんて

嘘にも負けるようじゃ、伝えられないよね?


好きなんだ、都合だけで口にして

いつも側に居る

ずっと隣に居て

泣いて、喚いて、冗談のように

笑って護魔化しの言葉、連ねてる

WowWow Wow Wow
WowWow Wow Wow…


アイシテル 照れも無く

いえるはずがないよね?

溢れてる気持ち

君達のように

僕も手に入れられるよね?


WowWow Wow Wow…






「なぁにこの子?、にたにたしちゃって…」
「いい夢見てるんじゃないのぉ?」
 二人はちびちびと杯を交わしていた。
「それにしてもあんた、強いわね?」
「アスカこそぉ、そろそろ沈没しなぁい?」
 目元がとろんとして来ているが、眼孔は今だマジだ。
「シンジはシンジで、まぁた辛気臭い歌うたってるしぃ」
「あんな歌うたってるから、みんなに「贅沢だ〜」って追いかけられちゃうんだよねぇ」
 うんうんとお互い頷き合う。
「こぉんな美人が待ってやってるってのに、なぁに悩んでるんだか…」
「だってぇ…、シンちゃんが好きなのはぁ、髪が短くてぇ、一緒に居ても殴ったりしなくてぇ」
「その上、ばくばくよく食べる胃袋が三つくらいある女だって言うんでしょ?」
「ひっどーい!」
「あんたが言い始めたんでしょうが!」
「別にアスカとは言ってないもん!」
「あたしだってあんたとは言ってないでしょ!」
 がしゃがしゃとテーブルの上のものを横へどける。
「勝負よ!」
「望む所!」
 ガシッと手を組む、どうやら埒が明かないと見て肉弾戦へ切り替えるらしい。
「レディーセット!」
「ゴー!」
 ふぬっ!、っとわりかし細い腕に小さな力こぶが浮き上がる。
 アームレスリング、別名腕相撲、しかし二人のパワーにテーブルは耐え切れないようだった。







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