NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':93 


『エントリープラグ挿入』
(なんだかものものしいな…)
 シンジは本当に良かったのだろうかと脂汗を流していた。
 ゲームの開発というよりは、何かの科学技術研究所のような雰囲気である。
「なんかパンツ履いとらんと落ちつかんわ…」
『悪いね、君達の身体データもついでに録っておこうと思うんだよ』
「バーチャルシステムに対する反応って事ですか!?」
「どういう事?」
「ほら、車のゲームで右に曲がろうとして体を右に曲げてることってあるだろう?」
「ああ、そう言う事か…」
『なるべく楽にしてくれていればいいよ、ただのゲームなんだからね?』
 冬月からの通信が途切れて、筐体の中は静かになった。
 シンジは一人で座らされていた。
 ダイバースーツのようなおかしな服を着せられている。
(これで操作するのか…)
 シンジは左右の手元にあるグリップを軽く前後に引いて見た。
「シューティングかな?」
(だったらジョイスティックの方がいいのに…)
 対戦と言う言葉から、シンジはその辺りだろうと当たりをつけていた。






「向こうの準備が整ったそうです」
「ふむ、準備はいいかい?」
「ばっちり!」
「この人選に他意はあるのかな?」
「すみません、甲斐さん」
 返事をしたのはツバサ、ライ、アラシである。
 ちなみにシンジ達と違って普段着だ。
「どうしてもやるの?」
「やる、男にはやらなきゃいけない時があるのさ」
 ミヤの引き止める声にアラシは恰好をつけて見せた。
「この一年で分かった、あいつを倒さなきゃ俺には未来は無いんだ」
「そんなの無意味じゃない!」
「来年を明るく迎えたいんだよ…、この気持ち、ミヤなら分かるだろ?」
「バカ…」
 頬に添えるように耳を弄んでいくアラシの手に、ミヤはふぅっと息をつきながら目を閉じた。
(どうせ負けるのに)
 それがパターンではないのかと、ミヤは心の何処かで悟っていた。


『エントリースタート』
『対戦は3on3で行なわれます』
 天使達が見守る部屋には、巨大な円柱が斜めに固定されていた。
 それぞれの中にアラシ、ツバサ、ライの三人は座らされている。
『ゲーム、スタートします』
 三人の座っている筐体のコクピット、その壁面全体に電気信号が走って、次の瞬間にはゲームの世界が映し出されていた。






「これが…」
 シンジは呆然と身を乗り出した。
「知らない…、天井だ」
 画面一杯に天井が映されている。
「お兄ちゃん!」
「うわっ!」
 シンジは画面いっぱいに大写しされた少女の顔に驚いた。
「な、何ビックリしてるの?」
「え?、えっと…」
(ええ!?)
 画面に三択が表示される。
 シンジは慌ててレバーを引いてスイッチを押した。
『ご、ごめん、寝ぼけたみたいで…』
(僕の声!?)
 合成音だが、どうやって作ったのかと恐くなる。
「もう!、またエッチな夢でも見てたんでしょ?」
(なんだこりゃ?)
 良く分からない。
「ほら起きて!」
「う、うん…」
 つい口に出して返事をしてしまうのは人が良いからかも知れない。
(このゲームって…)
 ようやく画面の視点が自分の操作しているキャラクターの視点だと気が付いた。
「じゃ、早く起きてね?」
 パタパタと元気に駆け出していく。
「…誰なんだろう?、あれ」
 呟きと同時にウインドウが開いた、そこにあの女の子の顔写真と簡単な説明文章、それにパラメーターが表示される。
「親の再婚相手の子供で同い年?、小さい頃から僕を慕ってるって…、ちょっと待ってよ?、これって!」
 ザーッと青ざめる。
 このゲームのジャンルに気が付いたからだ。
「れ、恋愛ゲーム…」
 さらには対戦である、当然ゲットした人数が問題になるのだろう。
(まずい、まずいよ!、こんなのアスカ達に見つかったら!!)
 殺される。
 ある意味シンジにもっとも有利で、もっとも不利なゲームであった。


「負ける戦はしない主義なんだよ」
 にやりとほくそ笑んだのはアラシだった。
 既に登校を選択して、爽やかな笑顔を振りまいている。
『おはよう』と返される微笑みに、アラシは十分な手応えを感じていた。
 その中で話しかけ、電話番号までこぎつける確率は実に七割、これは選択肢のためであってアラシ本来のトークを披露できないためである。
「そのリボン可愛いね、って誰だこんなありがちな台詞を設定したのは」
 ぶちぶちと言いながらも「この辺りだろう」と当たりをつけて口説いていく。
「ん?」
 しかし一人妙な反応があった。
「あ、アラシ君って2−Aだよね?、ケンスケ君にこれ、渡しといてくれないかなぁ?」
(なにぃ!?)
 驚き対戦相手のデータを開く。
「好感度相対値が俺の180倍!?、こ、この俺が『いい人』に分類されている!?、何故だ!」
 伏兵。
「ええい、ライとツバサは何をやってる!」
 ライはプールで波止場ごっこ。
「ふっ、霧笛が素敵…、イマイチだな」
 ツバサは惰眠を貪っていた。






「ふわーっはっはっは!、天国じゃ天国!」
 その頃、ケンスケは精力的に校内を徘徊していた。
「やっぱ男は顔じゃないよな、ハートだよ、パッションだよ!、迸るパトスだよ!!」
「あら?、ご機嫌ね」
 保健医だろう、廊下でばったりと出くわした。
 ケンスケは素早く検索を開いた、早々に「返事をするまでのタイムラグ」がポイントに影響していると見抜いていたのだ。
(検索を利用してみて、知ってる人だったら会話に名前が使えるんだよな)
 その分選択肢も変化する、馴れ馴れしくなるのだ。
「斎藤せんせぇ〜☆」
 相田ケンスケ、十六歳。
 ようやく人生に花を咲かせたかと思えば、やっぱりデジタルのようだった。


「なんやつまらんのぉ」
 その頃、トウジは極普通に家を出てごく普通に歩いていた。
「なぁんも起こらんやないか…、何処がゲームやねん?」
 ゲームとはつまり「非常識」な選択をする事によって「イベント」が発生するものだ。
 それに対してトウジは実に平凡な選択をし過ぎていた。
『起きるか?』と尋ねられれば起きて、『学校に行くか?』と聞かれれば「はい」と答える。
 あるいはヒカリの教育の賜物かもしれないのだが…
「お、またか?」
『近道をする?』
 それはプログラム側の判断だった、このままではイベントが全く消化されないかもれない、『つまらない』と評価されないための緊急措置である。
「そやな、行こか」
 トウジが抜けようとしたのは神社の境内だった。
「なんや?、なんかある思たんやけどなぁ?」
 あそこまで露骨に何かありそうにやられると、さすがのトウジでも気が付くらしい。
「なんや?」
 何処からか『バシ、ドス』っと言う音が聞こえて来た。
「誰かおるんか?」
 瞬間ウィンドウが開いた、『見に行く<>学校へ急ぐ』
 トウジは当然と思える側を選択した。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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