NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':94 


「むぅ〜」
「出て来ないねぇ?」
 ゼーレビル正面。
「手がかじかんで来ちゃいましたぁ」
「寒いもんねぇ?」
 手を擦り合わせて、はぁっと息を吐き掛ける。
「アスカぁ、帰んなぁい?」
「だめですぅ、シンジ様をお待ちしませんと!」
「むぅ」
 すっくと立ち上がる。
「アスカ?」
「そうよ!、なぁんでこんな所で寒がってなきゃなんないわけ?」
 急に天に向かって吠えたかと思うと、ずかずかと挑むように歩き出す。
「アスカって、何処行くの!?」
「入れてもらうのよ!」
「え〜?、無理よぉ」
「何が無理なのよ!」
 立ち止まるつもりはないようだ。
「シンジが入れてもらえてあたしが駄目って事は無いでしょうが!」
「なんでぇ?」
「あたしのパパだってここで働いてんだから、なんとかなるわよ!」
「今いないじゃない…」
「あ、アスカさん、正面は閉まっちゃってますから警備員さんにお尋ねしましょう!」
「わくわくって…、ミズホも、もう…」
 レイは異様な迫力を誇るゼーレビルを見上げた。
(お父様の会社、かぁ…)
 子供としては『遊びに来るような場所ではない』と言う思いがわいてしまう。
「アスカってば、もう!」
 それでも最後には好奇心の方が打ち勝って、口元がひくひくと笑みを形作ろうとしていた。


Neon Genesis
Evangelion
GenesisQ'94
「To Heart」

「おはよぉ」
「おはよう」
(くぅ〜〜〜、これだよこれ!)
 おはようと言えば女の子からでも挨拶が返って来る。
「寂しいやっちゃのぉ」
「うるさい!、っと、シンジはどうしたんだ?」
「ここにいるよぉ〜」
 何故かずたぼろの様子で入って来た。
「どうしたんだよ?」
「うう…、みんなが僕を苛めるんだ」
「はぁ?」
「こんなとこまで苛められとるんか?」
 がたんっと、少々乱暴に席に座る。
「どうせまたみんなに優しく〜、なんてやってたんだろ?」
「違うよぉ、そうじゃなくてぇ」
「なんや?」
「…みんなが僕にぶつかって来るんだ」
「はぁ?」
「やったじゃないか、シンジ!」
「へ?」
「それはお前に興味を持ってる証拠だぞ!」
「そ、そうなのかなぁ?」
「そうやって自分の存在をアプローチしてるんだよ!」
「こんなのは嫌だよぉ…」
「なんでや?、イベントっ中やつやろ?」
「痛いんだよ!、このプラグスーツって言うの?、転ぶたんびに電気が走るんだ…」
「ええやんけ、おもしろうて」
「はぁ…」
 シンジはへたっと倒れ込んだ。


 注意…、現在視点は観戦モードでお送りして下ります。


 どうやら三人が情報を交換できるのは朝のホームルーム前だと決まっているらしく、また時間調整もそこで行なわれているらしかった。
 そのため授業が始まると、基本的にそれ以降の接点は断たれてしまうのだ。
(とにかくちゃんとやんないとなぁ…、父さんに何言われるかわかんないし)
『お前には失望した』とゲームパッドを奪い取り、次々と女の子を落としたはいいが母に見つかって情けない声を上げていた父の姿が思い浮かんだ。
 それ以来、シンジは「アスカ達の前ではやるまい」と恋愛ゲームは人の家でやる事に決めている。
 とりあえず校内をうろついて見ることにする。
「イベントって探そうと思うとぶつからないもんなんだよなぁ…」
 と、ぶつくさ漏らすと…
「あややや、あややややや…」
 コピー用紙の詰まった段ボール箱を二段重ねにして階段を昇ろうとしている女の子を見付けてしまった。


『危ない!』
 咄嗟に駆け出したシンジ、その状況に対してパラメーターから数値を割り出し、計算が即座に行なわれる。
 勢いよくスクロールしていく情報を眺めながら、冬月は溜め息と共に受話器を置いた。
「碇」
「なんだ?」
「『娘さん達』がおいでのようだ」
「そうか」
 ゲンドウの反応に眉根を寄せる。
「どうするつもりかね?」
「問題無い」
「このような所を見られては、シンジ君もただではすまんぞ?」
 手短な端末を操作して、警備モニターの映像をウィンドウの一つに表示する。
 そこにはキョロキョロと『お上りさん』している三人が居る。
「警備係には何と指示する?」
「社内の見学コースでも案内させておけ、直に用は済むと言ってな?、食堂も解放だ」
「ふむ…、では休日出勤を労ってのサービスと言う事で無料にするぞ、いいな?」
「ああ…」
「予算はお前のボーナスから組む、構わんな?」
「冬月…」
「使途不明金は許さん」
「ちっ…」
(甲斐め)
 それもこれもと、話を持ち掛けて来た相手に押し付けてしまうゲンドウだった。


「ロボット!?」
 その頃、シンジは助けようとして一緒にひっくり返った女の子を相手に驚いていた。
「はい、わたしはM78星雲から送られて来た電波を元に作られた最新型のメイドロボットで」
「あ、ああ、そうなんだ」
「はい」
 にっこりと微笑む。
(にしては…)
 見た目まるで普通の女の子である、耳にあるパーツが無ければ判別できないだろう。
(どうでもいいけど、なにも腕力まで人並みにする必要は無いよなぁ?)
 と言うワケで、コピー用紙の箱を一つ運んでやるシンジであったが…
「シンジぃ!」
「はうっ!」
 がぁんっと背後から突き飛ばされた。
「ああ!、シンジさん!?」
「ぐえ!」
 驚いた少女の手から箱が落ちてシンジを直撃する。
「あわわわわわ!」
「Oh!、シンジ、大丈夫?」
(うう、まただよ…)
 多発する事故に、交通事情はどうなっているのかと不満が募る。
「シンジぃ、怒った?」
「あうあうあう、ごめんなさぁい!」
 何故だか二人とも反射的に謝る。
「ごめんねぇ?、チョット驚かせるつもりだったヨ」
 どうやらシンジを突き飛ばしたのは金髪ポニーテールの少女のようだ。
「ごめんネ?」
「はぁ、もういいよ…」
 うなだれる。
(これもイベントって奴なんだろうけどさ?)
 いくらなんでも「何度もぶつかる」相手がこう多いのはどうしてだろう?
「シンジ、怒ったか?」
「え?、ああ、もういいって…」
「デモ」
「ただ…、ちょっと事故が多かったからさ?」
「事故?、車に跳ねられたのか?」
「違う違う、女の人だよ」
「それはラッキーね!」
「ら、ラッキー?」
「ドラマチックな出会いって奴ヨ」
「う、うん…」
「だけど気をつけなくちゃダメだヨ?」
「わかってるよぉ」
「ナニしてる?」
「え?」
 ギクッと固まったロボットの子は、何故だかシンジに体当たりしようと準備していた。







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Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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