NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':96 




「ってな感じでね?」
 シンジはアカリに、今日あった事を一通り聞かせていった。
 今日も夜の散歩に繰り出して、公園にまで足を伸ばしていた。
「ふぅん…、でもそれ、ほんとだよ?」
「え…」
 …このままであれば恒例になってしまうかもしれないと言った感じであった。
 アカリの覗きこむような目にドキッとする。
「みんなに優しいシンジちゃんは好きだけど、自分も勘違いさせられちゃってるのかなぁって不安になっちゃうもん」
「あ…」
 逆転の発想だった。
(そっか…)
 勘違いさせてしまった事への罪悪感、だが良く考えれば女の子は暗闇に突き落とされてしまうようなものだろう。
 舞い上がれば舞い上がっていただけ、高い所から…
「でもさ…」
「うん、シンジちゃんはそう言う事、できないもんね?」
 にこっと微笑む。
(誰かに…、似てるな?)
 そんな疑問が沸く、が、すぐに薄れた。
(他の子達だって…、僕が重ねちゃってるだけなのか)
 適当に言い訳を作り上げる。
「あ、コトネちゃんだ」
「え…」
 シンジは「ほら、あそこ」と指差した先に目を向けた。
「ホントだ…」
 公園の外…、道路を挟んだ向こうの歩道に彼女は居た。
 昼間の犬とは違う、別の種類の犬の背を撫でつけている。
「あの子、また来てたんだ」
「…え?」
 アカリの心配げな声に首を傾げる。
「また?」
「うん…、毎日このぐらいの時間にね?、ベスに餌を上げてるみたいなの」
 じっとコトネの様子を見守る。
「…それで散歩に誘ってくれてたの?」
「バレたか」
 てへっと舌を出すアカリ、だがすぐに真剣な表情に戻ってしまった。
「ベスってね?、引っ越した川村さんが置いて行っちゃったでしょ?」
「うん…、それで近所の子供達が遊んであげてるんだよね、保健所に電話しようって人も居るんだけどさ」
「あ、気が付いたみたい」
 コトネが立ち上がってこちらを見た。
 おそらくはベスの視線に気が付いたのだろう。
「コトネちゃーん!」
 大きくてを振るアカリ、それに対してコトネはうろたえたように見えた。
「あっ!」
 ベスはと言えば、そんなコトネを置いてまっすぐシンジ達を目指して走って来た。
 道路にいきなり跳び出して。
「だめ、行っちゃ、だめ!」
 彼女は目を丸くしながら大きく叫んだ。
「ベス!」
 シンジも何が言いたかったのかに気が付いた。
 車が来たのだ、ベスの跳ね飛ばされる悲鳴が『ギャン!』と聞こえた。


 夜でも救急として動物病院は受け付けてくれた。
 怪我は大したことは無かったらしい、車のスピードはかなりあったようにも思えたのだが…
 コトネは治療室外の廊下にあるベンチに座って、白くなるほど力を込めて、膝の上に拳を握り込んでいた。
『あ、あ…』
 口元を手で被って、脅える少女。
『大変だ!』
『早く病院に連れ行って上げなくちゃ』
『あたし…、あたしの、せい』
『え…』
 脅えるように、横たわった犬を見ている。
 その震える声がシンジの耳に入り込む。
 シンジはとにかく、と、彼女も連れて病院へ向かうことを選択していた。
「これで…、分かりましたよね?」
 コトネは苦しげに呻きを漏らした。
 少なくともシンジにはそう聞こえてしまった。
 ドアを見る、治療室の中にはアカリが付き添いでベスの手術を見守っている。
「予知能力、か…」
「悪いことばかり見えるんです…、わたしの側に寄ると、不幸になるから、だから」
「でもこれは事故だよ…、悪いのはあの車だ…」
「違います!、あたしがあんな予知なんてしてしまったから」
 はっと大きな声を出してしまった事に気が付く。
「…ごめんなさい」
「あ、ちょっと待って…」
「これ以上、わたしに関わらないで下さい」
 シンジは立ち上がったコトネに触れる事が出来ず…
 呼び止めようと上げた手を、ただ宙に漂わせてしまっていた。


 翌日。
 クラブを休ませてもらい、シンジはアカリと共に動物病院を尋ねていた。
「え?、治療費は払ってあるって…」
「ええ、先程、女の子が来て、全額支払いを済ませていかれましたよ?」
 アカリとシンジは、お互い『あの子だ』と思って顔を見合わせた。


「この辺、だよな?」
「うん」
 お金だけの問題ではない。
 二人は彼女がベスに会わずに帰ったと聞いて、絶対に会わせようと尋ねて来ていた。
「住所はこの先になってるよ?」
 治療費の支払いの時に記入された住所を写させてもらったのだ。
「うん…、あ…」
「あ、え?」
 コトネが居た、だが一人では無かった。
「誰だろ?」
「さあ…」
 家の前で困ったように俯いていた。
 男の方は、熱心な顔つきでコトネに話しかけていた。



続く







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