NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':97 


「あれは…、誰だったんだろう?」
 シンジはそのまま帰ることを選択していた。
 コトネと一緒に居た少年。
 その姿が妙に引っ掛かる。
(ゲームのキャラって感じじゃなかった…、じゃあプレイヤーなのか?)
 なら放っておけば良いと言う事になる。
(僕が救う必要は無い…、なら僕は)
 アオイの事を思い出す。
(あの子に…、専念するか)
 シンジは甘く考えていた。


Neon Genesis
EvangelionGenesisQ'97
To Heart コミック版」


 HRが終わると同時に逃げ出すように席を立つ。
 それがここ数日のパターンだったのだが。
「ちょーっと待ってよ、お兄ちゃん!」
 今日はその逃亡を許されなかった。
「ゆ、ユイ…」
 教室の入り口で捕まってしまう。
「どうしたの、さ?」
 むぅーっとした半眼に見上げられてシンジは引きつった笑みを浮かべた。
「…何処に行くの?」
「あ、ちょ、ちょっと…」
「ここんとこ、ずーっとだよね?」
「ご、ごめん…」
「じゃあ、今日ぐらい一緒に帰ろうよ、ね?」
「あ、そ、それが…」
「だめなんだ、ふぅん…」
「な、なんだよ?」
「きゃっ!」
 怖れるように後ずさり、背後に居た誰かにぶつかってしまう。
「あ、ご、ごめ…、なんだアカリか…」
 知った顔にほっとする。
「うん…、なにしてるの?」
「ユイがさ…」
「お兄ちゃんのせいでしょ!」
「あ、う、うん…」
「どうかしたの?」
 しょうがないなぁと言う顔で微笑ましく兄妹を見守る。
「お兄ちゃん、この頃一緒に帰ってくれないんだもん」
 あ、とアカリは漏らした。
 自分もよく断られるようになってしまったからだ。
「うん…、でも用事があるんじゃしかたないよぉ」
「なぁに言ってるの!」
 ビシッと指差す。
「用事って言うだけで何してるのか教えてくれないし」
「あ、だから、それは…」
「護魔化すし」
「う…」
「…女の子でしょ?」
 ギクッとする。
「あー!、やっぱりそうなんだ」
「おう、シンジぃ」
「トウジ?」
 救いの声にほっとする。
「アオイんとこ行こうや、待っとるで?」
 全然救いじゃなかったのでジタバタ慌てるが首根っこを掴まれる。
「鈴原君、何処に行くの?」
 ユイはシンジを捉えたままでにこやかに尋ねた。
「クラブや、クラブ」
「え〜!?、お兄ちゃん、二年のこの時期から部活始めたの?」
「あ、うん…、まあ」
「呆れたぁ…、別に隠す事無いじゃない」
「あ、はは…、そうだね?」
 なんとか護魔化せたかとシンジは胸をなで下ろす、が…
「なんや、しゃあないなぁ」
「なに?」
「どうせアオイの事がバレたら怒られる思たんやろ?」
 ピクッとするユイ。
「…アオイって、誰?」
「おう、それはやなぁ…」
「トウジぃ…」
 トホホとうなだれる『ゲームのシンジ』、だが逆に…
(しょうがないよなぁ)
『現実のシンジ』は笑っていた。


「…ダメですね、やはり」
「そうか」
 オペレートルーム。
 ゲンドウはモニタリングをしていた開発者からの言葉に、考え込むような仕草を見せた。
「シンクロ率は?」
「下がっています、シンジ君は酷いですね?」
「どういう事かね?」
 冬月も割り込む。
「ゲームだと割り切ったのでしょう、確かにそれでも良いのですが…」
 シンクロとはすなわちゲームにのめり込んでいる度合を差す。
「まずいな、碇」
「ああ」
「このVAシステムはプレイヤーの感情を読み取り、それをゲームキャラに反映させるシステムを取っている…、キャラクターに感情移入を…、すなわちシンクロできなければ」
「ああ、徐々にキャラクター達から嫌われ出す」
「どうする?」
「…後を頼みます」
「何処へ行く?」
「彼女達の所ですよ」
 そう言って、ゲンドウは部屋を後にした。


(神社…、って森に囲まれてるのに、なんで木枯らしが吹くんだろう?)
 坂下とアオイが、それぞれ制服にプロテクターを着けただけで向かい合っている。
「せいっ!」
「はい!」
 ショートパンチからフェイントにアッパーを混ぜて、そらした体にストレートを叩き込む…
 アオイの優勢に見えたがそれもすぐにくつがえされた。
「アオイちゃん!」
「きゃ!」
 アカリが恐さに目を覆う。
「やったぁ!」
 逆にユイは歓声を上げた。
 坂下の前蹴りをもろに食らって体を折ったかに見えたが、アオイはその蹴りを両腕でブロックしていたのだ。
 コマのように回転して足を払い、坂下を倒す。
 そのまま側宙から両足を揃えて坂下の腹に叩きつけた。
「そこまで!」
 応援に来ていたアヤカが止めた。
「やったじゃないか、アオイちゃん!」
「はい!、これも先輩方の…、うっ」
「泣くんやない」
 トウジの言葉にぐっと堪える。
「まだクラブの存続がかかっとおる、アヤカにも追いついとらん、戦いはこれからや!」
「はい!」
 二人揃って見上げた場所に、キランと光る星がある。
「あれがエクストリームの星や!」
「はい!」
 残った面子は、そのノリに着いていくことが出来なかった。


(って、ダメじゃないか…)
 はたと気が付くと自分の両隣にはいつもの通りの二人が居る。
 翌日の学校、シンジは屋上で黄昏るように選択をした。
「「はぁ…」」
 不意に溜め息が重なる。
 隣を見ると…
「委員長?」
 赤くなっている女の子がいた。


「待たせたな」
「おじ様!」
 ガタンと立ち上がるアスカ。
 レイとミズホはパフェのカップを手にハグハグとやっている。
「おじ様、シンジは?」
「あと、おまけが二人」
「はぐはぐはぐ、ですぅ」
「あんたねぇ、食べるのと喋る方を逆にしなさいよ!」
「はぐはぐぅ」
「足すな!」
 いつもの通りに突っ込もうとしたアスカだったが、流石にゲンドウの手前、口だけにしたようだ。
「で、お父様」
「うむ」
 ゲンドウは大揚に頷いた。
「実はゲームのテストプレイをさせている所だ…、もう暫くは手が空かんだろう」
「え、そうなんですか?」
「なぁんだ」
 ほっと胸をなで下ろす。
「それってぇ、どんなゲームなんですかぁ?」
「恋愛物だ」
 ピクッと…
 座ろうとしたアスカが固まる。
「恋愛…」
「それってぇ、アドベンチャーゲームなんでしょうかぁ?」
「そうとも言えるが…、いまシンジは複数の女の子から『好みの子』を探すのに夢中になっている所だ」
 にやりと口の端を釣り上げる。
「へ、へぇ…、どんな子かしらね?」
 引きつるアスカ。
 興味が無い態度を取ろうとして失敗している。
「う〜ん、やっぱり、あ、やめとこうっと」
「なによ?」
「べっつにぃ?」
「なんかムカツクわね?」
「どうやら同居している元気の良い女の子と、隣に住んでいる幼馴染と言う選択肢からは逃れたいようだがな?」
 ピシッと硬直する二人。
「あはははははははは」
「「笑うなぁ!」」
「はう〜ん!」
「おじ様、シンジはどこ!」
「…今は駄目だ」
「どうして!」
「一応は部外秘なのでね…、ああ、ゲームの観戦なら可能だが?」
「あ、あたし見たぁい」
「わたしもですぅ」
 ひとり、「しょ、しょうがないわね」っとそっぽを向きつつ言うアスカ。
「じゃ、そう言う事で…」
「ポップコーンは無いんでしょうかぁ?」
 また食券を買いに行く。
 ゲンドウはあえて、テーブルに並べられている皿やコップの数は数えなかった。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

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