NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':98 


(また奢らされちゃったよ…)
 シンジは自室に引き上げると、座り込んだと同時に肩を落とした。
(友達の相談に乗って、喫茶店で話して、奢らされて…)
 それを和子が教えてくれた状況に照らし合わせる。
「デート、か…」
 ポツリと漏らす。
(あれもデートになるのかな?)
 端から見ればそうかもしれない。
 客観的に見て、いや、見られたら勘違いされると考えている自分を見付けて納得する。
「デート、かぁ…」
 そのまま後ろに倒れこむ。
「…なにやってんの?」
「「「あ、ははははは…」」」
 そこには気まずそうに階段から室内を覗き見ている三人が居た。






『デート、か…』
 その呟きははっきりとアスカの耳に残っていた。
「なぁに悩んでんのよ、あのバカは」
 ついでにシンジが持ち返った本の存在も気になっていた。
 シンジがあのようなものに興味を示すのは珍しい事だからだ。
(あんたが誘ってくれるなら、何処だっていいわよ)
 それと同じ台詞をカヲルが言ったと知ればどう思うだろうか?
 意外と似た思考をしているのかもしれない。
(ほんっとにバカなんだから)
 お猿のシンジを抱きしめて、布団の上を転げ回る。
「っと、そうじゃないわ?」
 はたと気が付く。
「誰を誘うつもりなのよ?」
 アスカの眉は酷く歪んだ。


『デート、か…』
「むぅ」
 同じ言葉にレイは別の側面から悩んでいた。
「何があったのかしら?」
 この間のことを気にしているのだろうかと想像する。
「違う、よね?」
 これまでのパターンから考えてみても、自発的にと言うのは考えにくい。
「やっぱり何かあったのかしら?」
 それを触発するよな出来事が。
 妙に行動や思考パターンを把握している。
 それは付き合いの長さから来るものだろう。
 ずっと一緒に居て、じっと見て来たからこそ、予想がついてしまうのだ。
「やっぱりヒカリと鈴原君?」
 他にその様な『人材』が見当たらない。
 思い付きもしない。
(あんまりシンちゃんらしくないのもねぇ?)
 だからと言って、誘ってくれないのもやはり寂しい。
「偉そうな事言っちゃったしねぇ」
 レイこそこの間のことを気にしていた。
『だから今は同情なんていらない』
『好きだからかまって欲しい』
『いろいろして上げたい』
「一緒に考えてもらえばいいんだって…、どうして分かんないかなぁ?」
 何事も一人で悩んで解決する必要は無いのだ。
 行き先などもそうだろう。
 勝手に決められるよりは一緒に考えた方が面白いし、その時間もまた楽しいのだから。
「決められないのかって、誰もシンちゃんを怒らないのに」
(でもデートに誘わないってのは、シンちゃんのせいになるのか)
 その分こっちが誘っているのだから、差し引けば問題は解決していると分かりそうなものなのだが。
「どっちが誘ったかなんて、関係無いと思うんだけどなぁ」
 それは満足しているからだろう。
「シンちゃん…、嫌だったのかな?」
(誘われるのって)
 誘いたいのかもしれない。
 そう言う結論に達して、やはりレイは『誰を』との問題にぶち当たった。


『デート、か…』
 ミズホはその台詞にどっぷりとはまっていた。
「シンジ様ぁ」
 はふぅん☆、と服を抱きしめて、何やら妄想に浸っている。
 室内は広げられた衣服が散乱し、足の踏み場も無くなっていた。
『奇麗ですぅ』
『でも少し風がきついよ、ほら』
『あ…、ありがとうございますぅ』
 シンジのコートの内側に招き入れられて、ミズホは…
「みみみ、ミズホわぁあああああああああ!、はっ、薄着薄着…」
 さっそく『そっち方面用』のコーディネイトをし始める。
 幾通りものパターンに対応できるよう、既に相当数の組み合わせが用意されている。
 ちなみにどの想像の中でも、シンジの身長はプラス十センチと言った所だ。
 現実的にはシンジの着るようなコートは人を抱き入れられるほど大きくは無い。
「はっ、そんなっ、人が見てますぅ」
 今度は車に乗っている所を襲われているようだ。
 レイかアスカであれば、さも嬉しそうに突っ込める状況がここにある。
「シンジさまぁ〜」
 お誘いがかかる事を、ミズホは全く疑っていなかった。



続く







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