NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':99 


「あら、ちょうど帰って来たみたい、ちょっと待ってね?」
 ユイは受話器の口元を押さえると、シンジに向かって呼び掛けた。
「電話よ?、秋月さんって人から」
「あ、うん」
 慌てて踵を踏んで靴を脱ぐシンジ。
 後ろで勝手にドアが閉まり、カチャリと音を立てる。
「はい」
「ありがと…」
(なんだろ?)
 シンジは受話器を受け渡された時のユイの微妙なにやけ具合に、ケンスケ、トウジに共通した物を垣間見た。
「もしもし、…よく番号分かったね?」
『ほら、そこはそれだから』
「そっか…」
(なに覗いてるんだよ?)
 台所に引き上げたようで隠れているユイを睨み付ける。
『それで、どう?』
 少しだけ声が弾んでいる。
 探るような声に、期待感が見え隠れしていた。
 シンジにも分かるほどだから相当な物であろう。
「うん…、一応話はしてみたよ、それでさ?、写真を見せて欲しいって言うんだ」
『写真?』
「うん、メールしてくれればいいからさ、お願いできる?、あ、それと…」
 忘れないように付け足しておく。
「できたら携帯の方に連絡くれないかな?」
『え?、いいの?』
「なんでさ?、携帯の方がいいよ…、家は、ちょっとね?」
『わかった』
(うれしそうだな…)
 首を傾げる。
 シンジは気が付いていないが、ミヤにとっては『初めて登録できる友達の番号』になるのだ。
 記録のない登録機能ほど、見ていて寂しくなる物は無いだろう。
「それじゃ、また」
 電話を切ったシンジの耳に、「さり気なく番号を教えるなんて、シンジ、大きくなったわね?」と、バカにする様に感極まった呟きが聞こえた。






「ただいまぁ!」
 アスカの声は勢い込んだ雄叫びにも似ていた。
 ドアを開ける、靴を脱ぐ、家に上がると、一足飛びに駆け込んだのだろう。
 ドタドタと階段を上がって来る様子にも、その気合いのほどが窺える。
「シンジ!」
 スパーンと襖が開けられる。
 シンジは「なに?」とテレビから顔を離した。
「あ、おかえり…、遅かったんだね?」
「何すっ呆けてるのよ、隠したって駄目よ!」
「え?」
「さあ白状しなさい!」
 いきなり詰め寄り、胸倉を掴み上げる。
「な、なんだよ?、何言ってるのかわかんないよ!」
 シンジは本能的な身の危険を感じた。
 やらなければやられる!、そんなものを通り越し、人間には成す術もない事象があるのだと泣きたくなるレベルの危機感だった。
「しらばっくれて、この!」
 震える拳を振り上げるアスカ。
 それをタイミング良く邪魔したのはミズホだった。
「シンジ様ぁ」
 うるうると潤んだ瞳でシンジを覗く。
「どちらにお出かけしたんですかぁ?」
 はぁ?、っと要領を得ないシンジ。
「どこって…」
「だ・れ・と、って言ってるのよ!」
「あ…」
 シンジは『和子』『ミヤ』と居た所を見られたのかと察した。
「違うよ、誤解だよ!」
「誤解ぃ!?」
「やっぱりデートしたんですねぇ!」
 泣き出しかけるミズホ。
「だから違うって、あれは偶然会って、それでちょっと喫茶店に寄っただけで…」
「偶然?、嘘つきなさいよ!」
「嘘じゃないって、ホントだよ、そうだ、カヲル君、カヲル君に聞けば!」
 と言ってから、自分でも空しい助力を乞うていると気が付いた。
(そう言えば…、あの次の日に『旅に出て来るよ』ってすすけてたっけ?)
 何をされて帰って来たのかが非常に気になる所だったが、北風とトレンチコートの組み合わせが涙を誘うようで、シンジは声が掛けられず、ただ見送る事しか出来なかったのだ。
「シンちゃん…」
「あ、レ…イ?」
 ぐしっと鼻をすすっている。
 涙に目が赤く腫れていた。
 そんなレイに呆然とする。
「…女の子から電話あったって」
 アスカに告げ口をするレイ。
「なんですってぇ!?」
 ギンッとシンジを睨み付ける。
 ついでにミズホも嘘泣きをやめた。
「シンジ様ぁ!、それはどういう事ですか!?」
 首を持ってがくがくと揺する。
「あ、はっ、く、苦しい…」
「さあキリキリ吐いて貰いましょうか!」
「シンちゃんの浮気ものぉ!」
「シンジさまぁ!」
 この後しばらくするまでは…
 ミズホのために、シンジが落ちていることに気が高ぶった三人は気付かなかった。



続く







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