NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':114 


「わぁ!」
 喜び一杯に目を輝かせて、きーんと両手を広げて走っていく。
「見て見て、メイ!、すっごくおっきい!」
「ホントね…」
 さしものメイも唖然としていた。
「やっぱり日本って凄いのねぇ…」
「そうですか?」
「はい、香港のスタジオはもちろん、コンサート会場でもここまで立派なセットは」
「アメリカではざらですが」
 そう言って、メイよりも頭一つも二つも高い男性は微笑んだ。
 アレクである。
「良いスポンサーが着いているからね、ついでに、肩書き上、君達は彼女の引き立て役だ」
「彼女?」
「聞いたことは無いかい?、あすかって子だ」
 メイは、「ああ」と複雑な声を出した。
「あの子ですか」
「うちの子に良く似ていて、少し複雑な心境だよ、それに、アスカとも友達らしい」
 肩で笑い、アレクは彼女達が主役を張る舞台を見上げた。
 第三新東京市ドームコンサート。
 そう看板には描かれている。
 草輪とハートマークが余りにも臭いのだが、そこはそれ、当日の雰囲気とライトアップで、それなりに映えることになるだろう。
「コンサートは、十四日でした?」
「ええ、ホワイトデー、馴染みは?」
「ありません」
 メイは素直にかぶりを振った。
 自分達の複雑な事情だけではない理由がそこにはあった。
「まあ、仕方がありませんね、バレンタインが女の子主体のイベントで、また全国的に、宗教的にも問題無くイベントとして浸透しているのは、日本だけですから」
「ホワイトデーは?」
「また意味合いは違いますよ、日本では男性が女性の想いに答えを出す日となっています」
 メイはざっと見渡すように、会場の広さを確認した。
「これだけの席が、恋人で埋まるんですか?」
「その内の何人が、君達の魅力に別れる事になるのか」
 くくっとくぐもった笑いを漏らす。
「楽しみな事だよ」
「本当に?」
「そう大したことではないよ、この程度で別れる事になるのなら、所詮はその程度の関係だと言う事さ」
「まあ…、大半はそれ以前からの恋人なのでしょう?」
「イベントでは照れが入るからね、後になってどうしてこんな子と付き合うことにしたのか?、その場の雰囲気や焦りがそうさせたのかもしれないが、まあ、別れるきっかけには丁度いいさ」
「酷い話しですね」
「そうかな?、きっかけを失ってズルズル付き合うのと、本当にどちらが幸せなのか、考えてみなさい、バレンタインに心を込めてチョコレートとプレゼントを贈ったと言うのに、その見返りをホワイトデーに返してもらった女の子はどれぐらいいると思うね?、そして、女の子と言うのはそう言ったお返しに心を夢見るものさ」
「シンジ君達は?」
 アレクはにやっと笑った。
「さて、どうなることか…」
 騒然と組み上げられていくセットを改めて眺めた。
 ホワイトデーのイベントを日本にセッティングしたのは、お祭りとしての仕立て易さがあったからだった。
 主催は米国の企業である。
 イベントへの参加グループはプロアマ問われなかったが、当然その中でもトップの位置に彼女達は居た。
 チケットは全て無料配布である。
 参加アーティスト達が受け取って来た、ディスク、ペーパー、通信メディア、あらゆる媒体のファンレターから、限定せずに数万人を選び出し、特別にチケットを送り、第三新東京市でコンサートを行うと言う。
 主題は女の子達へ捧げる讃歌であった、玉砕した女の子達の中には、そのイベントを憎悪する子まで現われている。
 もちろん、それをやっかみとして受け流せるだけの幸せを、チケットの利用者は手にしているわけだが。
(この人は、その喜びを壊そうとしている…)
 メイは視線を向けずに嫌悪した。
(その中に、シンジ君達まで含めて、どうして?)
 マイを探して首を動かしながら、メイは思考にはまっていった。


Neon Genesis
EvangelionGenesisQ'114
「BABY BABY」


 ドームで何かイベントがある。
 大半の人間は、それがなんのイベントであるのか知らなかった。
「それも当然、チケットは全て無料のプレミア配布、コンサートの費用はテレビとの提携と後から出すディスクの類で回収するから、宣伝の必要は無かったらしいよ」
 ケンスケの部屋だった。
 端末機はネットに繋ぎっぱなしになっている。
 その隅にある時計は、朝の十時を差していた。
「そやけど、よう気付いたなぁ」
 ケンスケはあまり嬉しそうにはしなかった。
「気付いたのは随分前なんだよな、ドームの予定が埋まってるのに、その内容は部外秘になってて、調べるのにてこずってたんだよ」
「ほな、なんでわかったんや?」
「惣流だよ、昨日電話があってさ、それでトウジにも来てもらったんだ」
「アスカがなんでそないなこと知っとんねん?」
「親父さんの関係だってさ、…ところでトウジ」
「なんや?」
「いつからアスカって呼ぶようになったんだよ?」
 トウジはキョトンとして、逆に聞き返した。
「口に出とるか?」
「出とるよ」
「あかんなぁ…」
 口を押さえる。
「ヒカリの言葉が移って来とるんや」
「…ま、惣流の前で口にしない方がいいぞ?」
「なんでや?」
「なんでって、そりゃ…」
 ケンスケは呆れた、が、答えなかった。
(ま、彼氏に疑われたくないとか、惣流がそんなこと考えるとも思えないしな)
 勝手に怒られてくれと早々に見捨てる。
「とにかくさ、まあそんなわけで、いま中堅所のアーティストが集まって来ているわけだ、当然、ドームの外ではアマチュアバンドやらなんやらで溢れるだろうな」
 ケンスケはそっち向けの掲示板を呼びだし、バンドの動きをトウジに見せた。
「わしらは?」
 ケンスケを押しのけるように端末を奪う。
「参加せんのか?」
「やめとく、中途半端はちょっとな」
 ケンスケの言い方に、トウジは少し顔をしかめた。
「シンジのことを言うとんのか?」
「違うよ」
 雑誌を取って顔を仰ぐ。
「…シンジでも綾波でも渚でも、主役はドームの中で全国中継、外でいくら頑張っても脇役だ、もったいないだろ?、あいつらには主役が張れるくらいの力があると俺は思うんだ、それなら今回は逃げた方がいい」
 そんなケンスケらしくない発想にトウジは鼻白んだ。
「弱気やなぁ…」
「なんだかんだ言ったって、ポイントはシンジのギターだよ」
「そらまあ、そうやけど」
「もう一度聞きたいんだけどさ」
「シンジはわかっとらへんやろ?、そう言うたら、自分で聞いたことはあるんか?」
「あるだろう?、いくらなんでも…」
 二人はう〜むと首を捻った。
「それで、アス…、惣流は?」
「そろそろ行こうか?、十一時に、商店街にある喫茶店で待ってるってさ」
 ケンスケは腰を上げさせるために、端末の接続を切って電源を落とした。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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