NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':116 


「さむ……」
 マユミは鼻をすすった。
 吹き荒む強風に、鼻が赤くなっている。
 ドームの天井、それも外側、屋根の上だ。
 補修、点検用のタラップで身を潜めていた。
「マナはいいですよね、暖かくて……」
『なぁに言ってるの、その代わり臭くて臭くて……』
「臭い?」
『機械の……、樹脂の臭い?、これ取れなくなるなぁ』
 耳につけているヘッドフォンから溜め息が聞こえて、マユミは微笑んだ。
 空を見上げると、月を遮るように化鳥が飛んだ。
 下を覗く、うねるような人の流れが見える。
 そのうねりを作り出している置き石のような存在は、風に乗って聞こえて来る不協和音の元だった。
 側で聞けばそれなりの音楽なのかもしれないが、ここで耳にしていると混ざり合っていて良く分からない。
「レイもあの中に居るのかしら?」
『レイだって』
 ぷくくと笑いが聞こえて赤くなる。
「なんですか!」
『べっつにぃ、擦り込みって凄いと思って』
「そういう言い方は、嫌いです」
 ザッとノイズが入って、マユミは慌ててヘッドフォンを外した。
「痛……、マナ?」
 恐る恐る、ボリュームを調節しながら再び耳に着ける。
「マナ!」
 しかし返事は来なかった。


「何故ここに?」
 カヲルはポケットに手を突っ込んで力を抜いた。
「あら?、『妹』達の晴れの舞台を見てはいけない?、わたし、あの子達の舞台って見た事が無かったの」
「じゃあ……、じゃあどうしてミズホを!」
「ミヤ……」
 サヨコは困り顔を作った。
「ごめんなさい、それは本当にわからないの」
「わからない!?」
「だって、わたしが薦めたのは、この街の外への移住だから」
 テンマが割って入った。
「カヲル」
「なんだい?」
「どうして、この街にこだわる?」
「愚問だね」
「そうか?」
 テンマは一つ突っ込んだ事を訊ねた。
「敵が居ないからか?、居心地がいいからか?、違うな」
「僕と言う存在を認めてくれている人達が居る、それだけで十分さ」
「だがこの街の平和は崩れ去る」
 テンマは告げた。
「火の海に沈むことになる、それでも、この街にこだわるのか?」
 カヲルの顔に動揺が浮かんだ。
 それだけの力が、テンマの言葉には秘められていた。


 無線機からは、風と、化鳥の鳴き声が聞こえていた。
 それが突然ノイズに邪魔されてしまったのだ。
「あれ?、ちょっとマユミぃ?」
 マユミ同様に耳をやられて手で塞ぐ。
「なんなの?」
 はっとする。
 気配を感じて身をすくめると、帯のような光が寸前で弾けた。
「なに!?」
 マナは閉じていた目を開いて顔を上げた。
 地面から染み出した黒い何かが、黄金の閃光を霧散させていた。
「ロデム?」
 アメーバのように不定形を保っていたそれは、マナの問いかけに反応して硬化した。
 無数の棒状に変化して、編み細工を作り上げる。
 黒豹の形をした獣人の篭。
 それはマナに与えられた鎧であった。
「誰!?」
 気を配る、しかし相手の姿は見えない。
「どこ……」
 キュンと音が聞こえた、配管の隙間を縫うように、また帯が飛んで来た。
「この!」
 腕で弾く、正しくは腕を取り巻く磁界でだ。
「なるほどな」
 声が聞こえた。
「空間を歪めるほどの強磁界で俺達の力を弾いた子供がいたって話だが、その応用か」
 のそりと姿を現したのは、マナの知らない大男であった。



続く







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