NEON GENESIS EVANGELION
Genesis Q':118
点検用の通路からドーム内部へ向かって走る。
マユミは返事がない事から焦りを感じて移動していた。
「マナ?、マナ!」
「待つんだ」
不意の声にびくりと震えて足を止める。
脅えるように振り返って、マユミはようやく安堵をついた。
「浩一君……」
赤い髪をした少年が立っていた。
背後に道はない、一本道を走って来たのだ。
だのに浩一は、忽然と出現していた。
「まだ死人は出ていないよ、怪我人の保護と治療にはロデムを回した」
「マナは!」
「元気だよ」
ポンとマユミの肩を叩いて、浩一は心の中で舌を出した。
「天井が本当に落ちてしまわないように手を回さなくちゃいけない、手伝ってくれるね?」
マユミは取り敢えず頷いた。
●
「さいあくぅー!」
マナは黒煙に這いつくばっていた。
いい加減、体の自由も取り戻している。
廊下は前も見えないほど煙が立ちこめていた。
息を吸えば肺が焼ける、熱気で汗も吹き出す。
(耐火訓練受けといて良かった……)
煙を吸い込まないよう、身を低くしている、それでも目には涙が滲んで、ここが何処なのかはよくわからなかった。
「あっ、ロデム!」
オコジョの様な黒くて小さな生き物が、目の前をとことこと歩いていった。
「なんでー!?」
無視するの、と思ったら……
床に、人に踏み付けられたらしい足跡を残した、巨大な黒い風呂敷が広がっていた。
「なにこれ?、これもロデム?」
良く見ると人の形に盛り上がっている。
群集に押し倒された人間だった、床に偽装していたロデムが保護したのだ。
「で、あたしはぁ?」
やはり助けてくれないらしい。
マナはしくしくとほふく前進を再開した。
●
「ちょっと待って」
歌っていたアスカがストップをかけた。
「どうしたのさ?」
「なんやねん」
汗だくになったトウジがせっつく。
「ええとこやないか」
「あんたばかぁ?、なんか変じゃない」
ドームの玄関口から、人が押し合いへし合い飛び出して来る。
最初はぱらぱらと、次第に勢いよく、前の人間を突き飛ばすように溢れ出していた。
少し遠いのと、人が多くて良く見えないのだが、それでも半狂乱になっているのがなんとかわかる。
外にたむろっていた、状況の分かっていない人達を突き飛ばしていた。
「喧嘩か?」
ケンスケは目を凝らした。
確かに怒った観衆とドームの客との間でつかみ合いになっている。
それも当然だろう、外の人間にして見れば、楽しんでいたのをぶち壊されたのだ。
だが恐怖に支配された人間には、それどころではないと言う心理が働いている。
お前達こそ何をしているんだと言う、言葉よりも行動が先に立っていた。
「まずいよこれ、ケンスケ」
「ああ」
シンジの言葉にケンスケはトウジを仰ぎ、トウジは頷いた。
「撤収!」
「ええーっ!」
悲鳴を上げるアスカ。
「なんでよ!」
「すぐにそれ所じゃなくなるって」
「そうだよ、逃げなきゃ……」
シンジはギターをケースに戻そうとした。
「ちょっと待ちなさいって!」
アスカはその手を掴んで引き止め、レイに目配せをした。
これなのか、と問うつもりだったのだ。
だがレイはと言えば、広がっていく混乱に棒立ちになっていた。
「アスカも、早くキーボード片付けて!」
ヒカリの悲鳴が上がった。
「アスカ!」
「待ちなさいって言ってるの!」
アスカは怒鳴り返した。
「なに言ってるんだよ!」
そんなアスカの手を、シンジは振りほどいた。
「巻き込まれたら危ないよ!」
「だからよ、レイ、レイ!」
「ミズホ、アスカのキーボードを片付けて!」
「はいですぅ!」
「シンジ!」
「なに怒ってるんだよ!」
シンジは怒鳴り返した。
「変だよ、おかしいよ、アスカ!」
今度はシンジがアスカの腕を掴む番だった。
「離しなさいよ!」
振り払う。
「アスカ!」
「シンジ、ほっとけ!」
「そや、先に片付けんと……」
だが中と外を合わせて、何万から十何万と言う人の流れだ。
間に合うはずもなかった。
「シンジ!」
「え?」
振り返ったシンジの目に、誰かに殴り飛ばされたらしい人の背が映った。
「あ……」
巻き込まれるように倒される。
「シンジ様ぁ!」
「え?、シンジ?」
「シンちゃん!?」
「あかん、信濃、綾波!」
「こっちよ!」
「惣流もだよ!」
そんな声が連続で聞こえた。
(あ……)
何かに包まれるような感触があって……
シンジの視界は、暗い闇に閉ざされていた。
●
「ん?」
妙な気配を感じて、テンマは顔を上げた。
手のひらをガラスに当てる。
キュンキュンと小さな六角形が生まれ、接触面で輝いた。
『流石だね……』
ぐわりとつまんだように鏡面が盛り上がり、人の大きさほどもある透明な顔を作り上げた。
「ひっ!」
口を押さえて、ミヤは小さく悲鳴を上げた。
「浩一君……」
カヲルが正体を教えた。
『気付かれる前に隔離したかったんだけど』
「僕も含めてかい?」
カヲルはミヤを数えなかった。
『君達を守るためには、仕方が無いさ』
大きな口の動きと声はタイミングがあっていない。
声は実際のものではなく、思念であった。
「守る?」
『その答えは、この人から聞いてくれ』
浩一はテンマに目を向けた。
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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
Q'
は
Genesis Q
の
nary
さんに許可を頂いて私
nakaya
が制作しているパロディー作品です。
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