NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':122 


 さて、時に余談であるがここに一人の少女がいた。
 少女と言っても二十歳を越え、短大を卒業した立派なOLである、現在は某企業からの出向者の秘書などを努めている、極めて実直な少女であった。
 名前を鳳加奈子と言う、が、覚える必要はさほど無い。
 それ程までに、話しの本筋にはあまり関わって来ない人間だからだ。
 少女はとある男性を相手に恋をしていた。
 どこかの脂ぎった親父達とは違い、毅然と物事を言い放ち、それでいて人には気を遣う。
 時折、そう、彼の妻が「可愛い所もあるんですよ?」とのろけるように、非常に可愛らしい部分も見せる。
 田舎に育った彼女にとっては、ドラマのシナリオになるような不倫関係は夢の産物であった、しかし、ここににわかに現実味を帯びる。
 自分の立場を生かして、なんとか彼のアパートを探り出した。
 一目だけ、なんとなく自分をストーカーみたいと卑下しながらも、彼のアパート前までやって来ていた。
 彼には妻があるらしい、当然だろう、歳も歳だ。
 しかし同年代の腐った青少年や、馴れ合うだけの大人しか知らない彼女にとって、彼は貴重な存在であった。
「ゲンドウさん……」
 愛しい人の名……、人が聞けば気は確かかと訊ねたくなる様な人物を呼ぶ。
 果たして、その彼は期待通りに部屋から出て来た、しかし何と言う事であろうか?
「あ……」
 ショックを受ける。
 そう、自分では余りにも歳が違い過ぎる、だからこそこの恋は胸に秘めようと誓いもしたのだ、なのに。
「いってっらっしゃい」
 そう言ってにこやかに見送る女性の歳若い事。
 自分とさほど変わらない、ただ、そのなんとたおやかである事か。
 太めの腕が嫌になってしまう、彼女に対して嫉妬心が芽生えた、同時にゲンドウへの怒りもだ。
『どうして?』
 どうして自分ではないのか?
 どうしてあの人なのか?
 その胸に抱いて見えた赤子の存在もまた彼女を打ちのめす。
『ゲンドウさん』
 ふらふらと後をつけながら、彼女はさらにショックを受けた。
 ゲンドウが、娘ほどの少女と腕を組んだからだ。
 ここに来て、彼女はとうとう泣き出し、背を向けた。
 ……くり返しておくが、この出来事を、彼女の名前を覚えておく必要は無い。
 例え酒に酔って泥酔し、駅で倒れ凍死寸前となった所をユイに拾われ、ゲンドウのアパートに連れこまれ、赤ん坊付きの愛人、正妻、横恋慕で三竦みにはまり、さらに援助交際まで加わった所でゲンドウが事態に窮しようとも、名前を覚える必要は無いだろう。







 とんてんかんとんと音がしていたのが数分前。
 それはミズホがカヲルを封印しようと、ロフトへの扉を板に釘持って打っていた音だった。
(そんなことしても、無駄なのに……)
「ふう、終わりましたぁ!」
 シンジはそう思っていたのだが、あんまりミズホが爽やかに言うものだから、いつものように嘆息するだけに止めておいた。
 小脇に板を、手に金槌を持って腕で額の汗を拭う、顔は一仕事終えたと実に満足げなものだった。
 むろん、カヲルがその苦労を屁とも思わず、神出鬼没するのはいつものことだ。
 今、シンジはミズホの部屋で待たされていた。
 恐ろしげに隣を見ると、布団に枕が二つ並んでいる。
「……どこで覚えたんだろ?」
 さらにティッシュまで用意されている、それの意味が分かる辺り、シンジの学習元も実に興味の尽きない所であろう。
「お待たせしましたぁ」
 と言ってミズホはすぅっと襖を開けた。
 ちゃんとその場に座って、顔は伏せている、目を合わせようとしない。
「ミズホ……」
 シンジはゴクリと喉を慣らした。
 ミズホは一旦は立ち上がって敷居を跨ぎ、また座って襖を閉めた。
 何の決意の顕れなのだろうか?、白い装束を着ている。
 立ち上がった時に、シンジはとある事を見て取っていた。
 布団を挟んだ反対側に正座する、間違い無かった。
 いつもとは胸と、お尻の位置が微妙に違う、垂れているのだ。
(ってことは……)
 下着を着けていないと言う事になる。
 シンジはハッとして、淫らがましい想像を打ち払おうとした。
(だめだ、だめだ、だめだ!)
 しかしもちろん、シンジも健康的な高校生だ、もうすぐ二年生だ。
 これだけの状況が用意されていて、なにも期待しないようでは逆に病気だ、しかし、シンジには徹底的な教育が為されている、そう、恐怖によって。
(だめだ、だって……、そうだ、カヲル君が居るんだから!)
 と、決意を込めて断ろうとしたシンジの先を制するように、ミズホは三つ指付いて、軽く頭を下げた。
「ふつつかものですが……」
 後は聞こえなかった、気圧が変わった時のように、耳は何も聞こえなくなった。
(うぅ……)
 わざとなのかなんなのか、装束の前は合わせが緩くて見えかけたのだ。
(ぼ、膨張してしまう……)
 そうなると今度は逃げ出すために立ち上がるのも封じられてしまう。
 シンジは咄嗟にアスカやレイの事を考えた、しかし効果は無かった。
 逆に二人の裸体を思い出して、余計に身動きがとれなくなった。
(どうしよう……、そうだ!)
 こういう時には萎える物を思い出すのが一番だ。
 シンジは咄嗟に、父親の顔を思い浮かべた。
(うっ!)
 だが効果は無く、と言うかあろうことか膨張は親父の顔でと言う多大な精神的な傷を負う事になってしまった。
(最低だ)
 この心を癒す天使もまた真正面に用意されている、しかし決して触れてはいけない花なのだ。
 シンジの頭は今、これまでに無いほど勢いを増して回転していた。



続く







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