NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':124 


「それで……」
 とカヲルは切り出した。
「三人とも、何をやっているんだい?」
 半笑いを浮かべるシンジである。
 他の三人は、アスカの部屋に詰めたまま出て来ない。
「ミズホのお仕置きかい?」
「へ?」
「しただろう?、抜け駆け……」
 シンジはかぶりを振って答えた。
「違うよ」
「違うのかい?」
「うん……」
 辛げに溜め息も吐く。
「アスカもレイも……、ミズホが居ない時に同じことをするから良いんだってさ」
「はぁ……」
 カヲルは天井を見上げた。
「でもそうなると……」
「なに?」
「いや」
 笑みを浮かべて頭を振る。
「大変だねぇ、シンジ君も」
「へ?」
「今でも大変なのに……、これで洞木さんあたりがトウジ君と初体験、なんてことになったら、凄い事になるんじゃないのかい?」
 シンジは目を剥いた。
「まさか……」
「あり得ない、なんて言えるのかい?」
 うっと言葉が喉に詰まった。
「まあ、無事を祈るよ」
「うう……」
 心臓のあたりを押さえて、激しく息切れするシンジであった。


Neon Genesis
EvangelionGenesisQ'124

「ラブ・シンクロイド」


「それじゃあ、はい!」
 アスカの号令一下、三人は一度にスケッチブックを裏返した。
「あ」
「う」
「ひどいですぅ」
 ぐしっとなるミズホである、それぞれの『ボード』には……
『アスカ>ヒス、ミズホ>天然』
『レイ>貧乳、ミズホ>天然』
『アスカさん>おこりんぼ、レイさん>盆地』
 となっていた。
「だ、誰がヒスッてるってのよ、あんたわぁ!」
「しっかり怒ってるじゃない!」
「怒ってるのとヒスッてるのは違うでしょうがぁ!」
「天然じゃないですぅ」
「あたしだってちゃんと育ってるのにぃ!」
「ほっほぉ?、じゃあ何センチ増えたの?」
「う……、い、いっせんち……」
 はんっとアスカ。
「誤差ね」
「うう!」
「ひどいですぅ」
「ひぃいいいん!」
 どうやら前回の、それぞれに欠けている物をチェックしようとしているらしい。
「ま、まあ、でも大体の所で認識は一致してたわけよね」
「アスカのおこりんぼう」
「ですぅ」
「自分でやろうって言い出しといて」
「ですぅ」
「図星差されたからって」
「ですぅ」
 ごん、がん!、っと景気良く。
「いたいぃいいい!」
「ですぅうううう!」
だったら黙ってなさい!」
 まったく!、っとアスカ。
「それより」
 アスカはうざったく、首の後ろから頭の上へと髪を掻き上げた。
「問題は、これをどう捉えるかって事よ」
 レイは首を捻った。
「じゃあ……、総合すると」
「シンジさまはぁ、怒りんぼうでぇ、胸が小さくてぇ、天然な人がお好みなんですかぁ?」
 はて?、っとアスカは怒るよりも、何やら引っ掛かる物を感じたようだった。
「それって……、なにか」
「マナ?」
 ポツリと出た名に手を打った。
「そうよ、そう!」
「そう言えば……、当たってるかも」
「あの女ァ」
 ギリギリと歯を噛み締める。
 その怨念が直線距離で数キロを渡ったかどうかは謎であるが。
「とにかく!、次」
「はぁい」
「えっとぉ、お題はなんですかぁ?」
 何か勘違いしているのが一匹居たりする。
「もうちょっと限定した方がいいわね」
「じゃあ……、髪形?」
「アスカさんってぇ、もうちょっと前に持って来ると垂れ耳みたいですぅ」
「誰が垂れてんのよ!」
「え?、アスカ気にしてたんだ……」
「してないわよ!」
「うう、わたしも将来、アスカさんのように垂れるんでしょうか?」
 うがぁああああああ!
 びりびりと襖が震える。
「漫才やってんじゃないのよ!」
「うう、アスカがぶったぁ」
「うう……」
 涙目の二人。
「あんたねぇ!、こんなだからトリオでワンパックだ、なんて話しになってるんでしょうが!」
「あう」
「つまりぃ、シンジ様は一人ぼけ突っ込みの出来る方のほうがおよろしいと」
「違うぅうううう!」
 そろそろ血の涙でも流しそうな感じだ。
「違うってば違うのよぉ」
「よしよし」
 泣き伏すアスカの頭を撫でる。
「でもでも、ロングとショートで言ったら、多数決でロングでしょ?」
 レイはアスカとミズホの頭を見比べた。
「ん〜、でも、撫で易いかどうかだと、ミズホが外れちゃうか」
「がぁん!」
 ショックを受けるミズホ。
「ど、どういう事ですかぁ!?」
「え?、だって頭の上にまとまってると、崩れちゃうから触るの恐いし……」
 レイは自分の前髪を引っ張った。
「こんな感じだと、雑に触っても恐くないでしょ?」
「じゃ、あんたは撫でてもらった事があるわけ?」
「えーーーーーー!?」
 ギロリと睨み上げるアスカと、いやいやをするミズホであった。






「へぇ、大変だったんだ」
 一方、シンジは自室でのんびりと茶などをすすっていた。
「まあね」
 どうやら昼間のことを、シンジに軽く報告したらしい。
「最初は取り合いだったけど、最後は意地の張り合いになっていたよ」
 肩をすくめる。
「これがモテるってことなのかい?、想像以上に体力を使うものだったんだねぇ」
 シンジはカヲルに曖昧に笑った。
「でも良かった……、ナカザキさん、受かったんだ」
 そっかぁ、とシンジは感慨深く微笑んだ。
「心配だったのかい?」
「え?、あ、そうじゃなくてさ」
 照れ臭く、複雑な表情を見せる。
「去年……、大変だったから」
 ああ、とカヲル。
「そう言えば、そうだったね」
 そうか、とカヲルは納得した。
 去年の事件を、シンジが失踪した時の事を思い出しているのだ。
「まだ一年なんだねぇ」
「そうだよ」
「もう二年くらい経ってるような気がするよ」
 どの様な基準で言っているのか、良く分からないが。
「まあ、薫も薫で大変だったからねぇ、勉強も遅れていたし、本当ならもう一学年下でもおかしくなかったそうだから」
「そうなんだ」
 目を丸くする、何しろシンジも結局無駄になったとはいえ、合格ラインを越えるために詰め込み勉強をした口だ。
 苦労程度は想像できた。
「そう言えば、秋月さんは?」
「ミヤはもう、高校は諦めているからねぇ」
「そうなの?」
「大学か、短大か……、まあ大学だろうね、定時制高校って選択肢は取らないみたいだよ」
 ふぅん、とシンジは生返事をした。
「なんだい?」
「あ、うん……」
 言いづらそうに頭を掻いた。
「なんだか、想像できないや」
「なにをだい?」
 ぱくぱくと口を無意味に開け閉めしたのは、言葉を探したからだろう。
「秋月さんって、どんな友達が居るのかな、って思って」
 カヲルは驚きを露した後、考え込むように口元に手を当てた。
「そう言えば……、そうだねぇ」
「でしょ?」
 苦笑する。
「友達くらい居るんだろうけど、どんな風に遊んでるのかって、想像できないよ」
「カラオケには、良く行くみたいだけどねぇ」
「秋月さんが?」
 それこそ、シンジには想像もできない事だった。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

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