NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':124 


「やるじゃない」
「あなたもね」
 妙な友情が発生するのは、お互いの実力を認め合った時だろう。
 あんっと噛んだチップスが、バリッと音を立てて砕け散る。
 破片が散るのを気にしないのは、性格なのか疲れているのか。
(この子のペースについてけるなんて、ねぇ?)
 呆れた目で見てるのは和子であった。
 時計を見る、そろそろ夕飯を詰め込まないと辛い時間だった。
「ねぇ、まだ歌う気?」
 やっと熱唱が途切れた所を狙って問いかける。
「そうね」
「もう喉痛いし……」
 とか言いつつも、薫とミヤはコード表を手に持った。
 どうやら歌のパターンを変えようと思っただけらしい、急ぎめくっては、これと決めた物を素早く入力し始めた。
 それを見ていて、和子は思った。
(ホント、仲良くなっちゃって、まぁ……)
 溜め息が出てしまう。
 意地を張り合うように入力していく二人なのだが、良く見ていると入力してはリモコンをちゃんとテーブルに置いていた、それを素早く取って入力する、ちゃんと手放した所でまた奪って入力、と、決して連続で入れたり独り占めはしようとしないのだ。
 どうやらルールを守っているつもりらしいが……
「でもねぇ……」
 ちらと予約数を見た。
 複数の通信カラオケから、見つけた予約曲から順に演奏していくので、その礼儀正しさは意味が無い。
 その上、二人とも常にデュエット状態である。
(良くそれだけ曲知ってるわ、ほんと)
 呆れて物も言えないとはこの事だ。
「ねぇ」
「なに?」
「なぁに?」
 和子は恐る恐る訊ねた。
「帰ってもいい?」
「え〜〜〜?」
「もう帰っちゃうのぉ?」
 薫はともかく、何故さっき見知ったばかりのお姉さんにまで、そんな事を言われなければならないのか?
 少々所ではない頭痛に襲われながらも、和子は堪えた。
「でも渚先輩、とっくに帰っちゃったんだけど」
「え?」
「え!?」
「気付いてなかったでしょ?」
 ミヤはギュッとマイクを握り締めた。
「あいつ……、逃げたな」
 薫は目を丸くした。
「逃げた?、カヲル君が?」
「ええ!」
 憤慨しているミヤに、薫は恐る恐る問いかけた。
「あの……」
 それはつい今の今まで忘れていた疑問であった。
「秋月さんって……、カヲル君の」
 続きが聞けない。
 恋人?、彼女?、友達?、他には?
 一体どれが無難なのか?
「何だと思う?」
 にっと口の両端を持ち上げたために、上唇が猫のように膨らんだ。
「昔の彼女」
「ぶー!」
 ミヤは答えた和子に苦笑した。
「正解は」
「正解は?」
 溜めを作って気を持たせる。
「玉砕した一人ってだけ」
「へ?」
 キョトンとした和子に代わって、薫が言った。
「ほんとですかぁ?」
「ほんとほんと」
 曲が鳴っているにも関わらず、ミヤは椅子に腰掛けた。
 一口喉を潤してから、軽い調子で二人に教えた。
「まあ、幼馴染に近いんだけどねぇ、友達、かな?、で、ね、告白して、振られたの」
「はぁ……」
「まあ、それで終わりになるって関係でもなかったから、こうして勉強くらいは見てもらってるんだけどねぇ」
 そう言ってパタパタと参考書を振る。
「ナカザキさんが心配するような関係じゃないって事は確かね、もし……、あの時、OK貰えてたら、ちょっと違ってたかもしれないけど」
「けど?」
「今はあたしの方が、誰かと付き合う気ってないから」
 おずおずと訊ねる和子。
「それって、振られたから?」
「違うって、……まあ、必死に彼氏ゲットしようって思ってた時期もあったけど」
 それについては落ちついたらしい。
「今はねぇ……、他に幾らでも楽しい事があるから、男の子と付き合っちゃうと、ね」
 和子は首を捻った。
「そんなもんですか」
「違うかなぁ?」
「まあ、からかえなくなるのは確かですけど」
「でしょ?」
 二人は薫を見た。
「なによぉ……」
「面白いし」
「両方、結構……」
「和ちゃん!、秋月さんも」
 ミヤは失笑をこぼした。
「彼女付きの男の子って、からかうと結構楽しいのよね、女の子に見つかった時とか、一生懸命言い訳するんだもん」
「誰のことですか?、それ」
 和子はニュアンスの微妙な違いを嗅ぎ取ったらしい、訊ねた。
「知ってる、かな?、シンジ君」
「ああ」
「碇先輩……」
 妙に納得する二人であった。






「で、これは……」
 同時刻の碇邱である。
「だからぁ」
 アスカは苛立たしげに足を踏み鳴らした。
「えっと……」
 レイは長髪のウィッグに苦しんでいた、どうも首の辺りが鬱陶しいらしい。
「如何な物でしょうかぁ?」
 ミズホは髪を下ろしただけだが、胸にさらしを巻いているらしく苦しい様子だ。
 座椅子に大人しく座らされたシンジの前で、ミズホとレイは身を捩っていた。
「取り敢えず中身は捨てて、シンジの好みがどれかって話しになったのよ」
「はぁ」
 シンジは気の無い返事をして、背後に居るアスカを見上げた。
「で、アスカは?」
「あんたバカァ?」
 呆れて言う。
「こんな馬鹿なの、やってらんないじゃん」
「ひっどーい!」
「ですぅ!」
 ふふんと鼻であざ笑う。
「ま、参考にはさせてもらうわよ」
「だったら次、アスカがやってよ!」
「ですですぅ!」
「はん!、あたしのどこに欠点があるってのよ?、ねぇ、シンジぃl」
 っと背後から抱きつく。
「「あーーー!」」
「ねぇ、シンジぃ、気持ち良い?」
 後頭部に胸を押し付ける。
 シンジはそののしかかって来るようなアスカに、自然と素直な感想を漏らした。
「重い……」
「でしょお?、やっぱ大きい方が……」
「そうじゃなくて……、首が痛い」
「え?」
 ギシッと固まる。
「そう言えば」
「腰回りが」
「お尻も」
「顎にお肉が」
「腕太いですぅ」
「いやぁあああああ!」
 ガンッと一撃。
「な、なんで僕が……」
「だめだってシンちゃん」
「禁句ですぅ」
「そうそう、女の子にはね、思っても言っちゃいけないことってあるんだから」
「ほんとですぅ」
(酷いや、二人とも……)
 蹴り転がされながら、煽った二人を恨めしく思うシンジであった。







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Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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