NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':125 


「なぁんで春休みに、こんなとこうろついてなくちゃなんないのよ」
 アスカのもの言いにケチをつけたのはレイだった。
「アスカばばくさぁい」
「なによ!」
「アスカさんはぁ、こたつでぬくぬくとしてるのが趣味なんですねぇ」
「それはあんたでしょうが!、段ボール箱で蜜柑買い込んでるくせに!」
 がうっと噛みつく振りをする。
 三人は寒さに人の少ない街を歩いていた。
 誰もが喫茶店や本屋、映画館などに足早に駆け込んでいく中を、どこに行くかも迷っていた。
「じゃあ、アスカはどうしたいのさ?」
「べっつにぃ」
 ダッフルコートのポケットに手を突っ込む。
「ま、あんたには期待してないわよ、どうせお金、ないんでしょ?」
 はぁっと溜め息を吐く。
「たまには割り勘で行こうよ」
「だから今日は割り勘にしてあげてるじゃない」
「その分、お金の掛からない所に行こうとするから」
「何か言った?、レイ」
「ん〜んぅ、別にィ」
 その時、ポツリとミズホが言った。
「一時間、三千円……」
「なにそれ?」
「カラオケ?」
「いえ、あそこに……」
 っと指差した先を見て、アスカとレイは流石に真っ赤になって足を速めた。


Neon Genesis
EvangelionGenesisQ'125

「爆れつハンター」


「ねぇ、何急に焦ってるんだよ」
「いいから!」
 シンジは手を引かれながら首を傾げていた。
 右手を持つアスカに対して、左腕を引くレイを見る。
 真っ赤になって俯いている。
「あの看板、何だったんでしょうかぁ?」
 素朴な疑問を呟くミズホ、本当に分かっていないらしい。
 シンジは看板にすら気付かなかったのだが。
 背後のミズホの物言いに、何かあったのだろうと適当に納得する。
 するとシンジは、ようやくの事に気が付いた、アスカとレイの手をキュッと握り返す。
「手、冷たくなってるよ?」
「まあねぇ、レイなんてほっぺた、赤くなってるじゃない」
「ほんとだ」
「そんなに赤い?」
 レイは繋いでない方の手で頬をさすった。
「いたそぉ」
 アスカは目を細めた。
「あんた肌の色薄いから、擦り切れてるみたいに見えるのよねぇ」
「ん〜、ちょっとひりひりするかも」
「ねぇ、アスカ」
「なによ?」
「取り敢えずさぁ、喫茶店でもなんんでも良いから入ろうよ、僕も……、足、冷えて来ちゃって」
「じじむさいわねぇ」
「むぅ」
「なによ、ミズホ」
「お二人とも、仲が良いですぅ」
「は?」
「アスカさんがお婆さんっぽくて、シンジ様がお年寄りだなんて」
「……妙な事に嫉妬してるんじゃないっての、あんたは」
 どっと疲れたアスカであった。


「あ、アスカぁ」
「ヒカリ?」
 入った店はビル二階のテナントに入っている喫茶店だった。
 女の子の方が多いように見えたのだが、大きな声で手を振ったのは、男連れの見慣れた子だった。
「トウジ、何やってんのさ?」
「阿呆」
 トウジは隅っこの席で、身を小さくしていた。
「こないな店で、堂々としとれるかい」
「そだね」
 苦笑する、ケーキやパフェなど、甘い物がメインらしく、客層も偏っている。
 トウジだけでなく、男の子は余り居心地を良さそうにしていない、逆に女の子ははしゃいで、大きな声で秘密話までしてしまっていた。
「聞いてよアスカぁ、トウジってば、人の話し聞いてくれないのよ?」
「はぁ?、この馬鹿が?」
 アスカはトウジを見下ろした。
「あんたねぇ、惚れた弱みって奴でしょうが」
「あほ言うてんな!、話しやったらここ出てから聞いたるわい!」
 皮肉を交えて首を振る。
「行こ行こヒカリ、愚痴聞いてあげるから」
「アスカぁ」
「シンジも居づらいみたいだしね、男は男同士、仲良くやってなさいよ」
「じゃあ、あたしは……」
「わたしも……」
「あんた達も!、こっちにくるのよ!」
「ああ〜ん」
「はうぅん!」
 通路を挟んだ隣に座った四人に苦笑して、シンジは諦め、トウジの前の席に座った。


「で、こないなとこ、何しに来たんや」
 まだ仏頂面のトウジに、シンジはおかわり自由の紅茶を頼んでから話した。
「お供、暇だから、遊びに連れてけって」
「はん?、ガキやあるまいし」
「仕方ないよ……、この間のことだってあるし」
「なんや、それで引きつれてデートかいな、ご機嫌取りやなんて、情けないのぉ」
 ちょっとむっとする。
「トウジはどうなのさ?」
「なんや?」
「洞木さん、すっかり仲良くなっちゃって」
 トウジは赤くなったものの、罵声は吐かずに、どっかりと頬杖をついてそっぽを向いた。
「阿呆、余計な事言うなや」
 あれ?、っと感じる。
「怒らないの?」
「怒らん」
 変わったな、と感じた。
「何がおかしいねん?」
「そんなことないけど」
「笑っとるやないか」
「だってさ」
 運ばれて来た紅茶に口をつける。
「前なら、真っ赤になって口をぱくぱくさせてるか、ぶつぞって手を上げてるかしてたじゃないか」
 トウジは苦笑して、怒りを解いた。
「まあ、ヒカリのことくらいは考えたらんと」
「え?」
「好きや、言うこっちゃ」
 臆面も無く、トウジは言い放った。
「否定してみいな、泣かれたら叶わんわ」
「泣くの?、洞木さんが?」
「あれでよぉ泣くんや」
 声を潜めた。
「どうせ可愛くないわよ、とかなぁ、言われてみぃや」
「どうするの?」
「んなもん……」
 いいごもる、大体やることは決まっているだろうが。
「ま、シンジには縁の無いこっちゃ」
「なんだよ、それは」
「ほな聞くけどなぁ」
 また声を小さくする。
「お前、アスカやらが「あたしは可愛くない」なんて言うて拗ねると思うか?」
 黙っておいた方が良い、そう思って返事をしなかったのは、ほぼ直感に頼った選択であった。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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