「へぇ、結婚するのか、ミサト先生」
「うん」
 翌日、ケンスケ宅を訪問したシンジであったが、二人の横でぼへ〜っと寝そべっている物体が気になって気になって仕方がない状態に陥ってしまっていた。
「ねぇ、ケンスケ」
「なんだよ?」
「なぁんで和子ちゃんがいるのさ?」
 形容のし難い顔をするケンスケだ。
「暇なんだとさ」
「……そう」
 流石に長年の付き合いから、付き合ってるの?、とは訊ねなかった。
 付き合ってるなら「俺にも春が来た」、と騒ぐ事くらい容易に想像出来るからだ。
「それでさぁ」
「ああ、俺はいいけど、トウジと洞木は?」
「そっちはカヲル君に行ってもらってる」
「なんで?」
「……ケンスケ」
「なんだよ」
「こう、さ、インターホンを押すんだ、するとはぁいって言って洞木さんがエプロンで手なんか拭いながら出て来るんだよね、それでこう言うんだ、「あ、あら碇君」って」
 ケンスケはその妄想に少しばかり驚いたようだ。
「よくそんなこと思い付いたな」
「いや、アスカが言ったんだけどね、あんたそれでまともに話してこれるのかって」
「なるほどね……」
 ところで、シンジとケンスケは知らなかったのか忘れていたのか。
 ゴロゴロとしている和子の恩師もまた、葛城ミサトであったのだ。


Neon Genesis
EvangelionGenesisQ'142

「エデンズボゥイ」


「ほぉ?、おもろいこと言うとるやないか」
 そう口にしたのはトウジであった。
「怒ったかい?」
「散々見せつけとったん、ダレやっちゅうねん」
 アスカの懸念は可能性であって確定した未来ではないと言う事だろうか。
 トウジは一人だった。
「で、洞木さんは?」
「今日は家族で食事やと、なんやおとんが帰ってきとるらしいわ」
 カヲルは苦笑する。
「それは寂しい事だねぇ」
「お前かて、前は一人暮らししとったやないか」
「溜まり場にされたけどね」
「嫌やったんか?」
「そうじゃないさ、君とは違うってことだよ、僕は一人だったからね、だから気楽に遊びに寄れる、けれど君の所には洞木さんが来ているかもしれない、遠慮して当然なんじゃないのかな?」
 トウジは嘆息した。
「いらん気ぃつことるなぁ」
「それも仕方ないさ」
「あん?」
「君はともかく、洞木さんは二人きりでくつろぎたいからここに来てるんだろう?、その邪魔をするのは無粋と言う物だよ」
「ま、ええ気はせんわな」
「本来は電話かなにかで外に呼び出すのが礼儀なんだけどねぇ」
「帰り道で会うてそれもないやろ」
「何処で誰に聞かれるか分からないからね」
「あん?」
「まだ話を広めたくないって事さ」
「なんでや?」
「葛城先生が人気者過ぎるからだよ、学校の講堂を場所に選んだのは正解だよ、下手すると運動場や校庭にも溢れ返るだろうね」
「お祭り好きが多いさかいになぁ」
「便乗も増えるかもしれない、まあそれはいいさ、君は手伝ってくれるんだろう?」
「もちろんや!」
 ドンと胸を叩く。
「ヒカリにも話し付けとくわ」
「頼むよ、ただ裏方になるから大変だと思うけどね」
「その辺は都合付くんか?」
「アスカちゃん達が料理の出来る人間を掻き集めてるよ、問題は招待方法さ」
「ミサト先生がハガキ出すやろ?」
「でもそれだと、教え子からの選別が大変になるよ、直接担当してもらった事が無くても、面倒を見てもらった人は多いんじゃないかな?」
「かぁ!、切りないのぉ」
「そう言う事さ、大事な人にはハガキを出してもらって、これは講堂の中、式場だね、それから教会と同様に外に出てもらって、自由参加の皆に祝ってもらう、多分それが一番だと思うよ」
「そこんとこはケンスケにやらしゃええわ、で、わしは?」
「整理係か何かになるだろうね」
「暴力担当かい」
「ただの入場整理だよ、結婚式というよりお祭りだからね、顔の知られてる人間の方が良いんじゃないのかい?」
 暗に問題児で有名だったと口にしただけなのだが、トウジは単純に有名だと言う部分にだけ喜んだ。






「お前いい加減にしろよ」
「うう、葛城先生〜〜〜」
 どこから聞きつけたのか、懐かしい組み合わせで揃っている三人が居た。
 青葉シゲル、伊吹マヤ、日向マコトの面々である。
 居酒屋なのだが……
「どうしたの日向君?」
「まあ、色々とあるんだろ」
「あ、もしかして日向君って」
「まあそう言う事」
「なるほどねぇ、そうね、感謝しなくちゃいけないものねぇ」
「え?」
「だって葛城さんの代勤やってるんでしょ?、よかったじゃない、仕事が見つかって」
「ううーーー!」
 悶えるマコトに、流石に痛ましい目を向ける。
「まあそれよりさ」
「メールのこと?」
「そうそう、詳しいことはシンジ君達に任せてあるんだってな」
「そう言えばシンジ君って、時々青葉君に会いに行ってるの?」
「会いにって言うか、最近はあんまり……、ちょっと前まではよく曲持って来てたんだけどな」
「シンジ君って作曲もやるんだ」
「詞も書くよ、素人の域、って言うよりも照れが抜けてないから大人しいけどさ」
 小さく吹くように笑う。
「まあ今回は裏方だからってな、人前で歌わずに済むって安心してるよ」
「で、引っ張り出すわけね」
「それが葛城作戦部長のご指示だろ?」
 マヤも微笑をこぼした。
「ちょっと前まで、シンジ君達テレビに出てたのにね」
「この頃はさっぱりだな、そろそろ忘れてる人も居るんじゃないかって思ったんだが」
「そうでもないの?」
「ちょこちょこ歌ってるの、結構チェックしてる人が多くてさ、充電期間だとかなんとか、そう思って待ってるみたいだよ」
「実際芸能科だもんね」
「この間曲の売り込みに行ったら驚いたよ、知り合いなんだって?、ってさ、プロデューサーに声かけられて」
「今の内サイン貰っといた方がいいのかなぁ」
「俺のは?」
「遠慮しとく」
「あ、そう」
 軽く交わそうとした冗談のつもりで、結構傷ついた青葉であった。







[BACK] [TOP] [NEXT]


新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
内容の一部及び全部の引用・転載・加筆その他の行為には
作者である私と原作者naryさんの許可または承認が必要です、ご了承ください。

本元Genesis Qへ>Genesis Q