方舟の中、シンジは惚けたような顔をしてしまった。
 外から見た大きさと釣り合っていないように感じられた、さらには力尽きたように多くの生き物が倒れ伏していた。
 その数の多い事、だが、ほとんどは氷によって封じ込められていた。
「凄いや……」
 素直に感嘆し、氷の洞窟を奥へと歩く。
 ぺたぺたと素足であるのに、冷たくないのはどういう事か。
『どうしたの?』
「うん……、氷なのに、冷たくないんだなって」
『この中は、時間が止まっているからね』
「え……」
『冷凍睡眠装置を知ってる?、理屈は同じだよ、時間は原子の周りを電子が回る回数で決定される、この氷はその速さを極力低下させるんだよ』
「眠ってるの?、みんな……」
『そう、みんな、ね……』
 動物や獣ではなく、まるで同胞に対するような物言いを使う二人だ。
 シンジが目を向けると、恐竜に翼の生えた生き物が居た、あるいは一抱えもある巨大な昆虫。
「いつから……、眠ってるの?」
『分からない……、人が時を計り出すずっと前からだから』
 氷が何かを反射し始めた、それは奥からの光によるものだった。
『着いたよ』
 彼は言う。
『僕には、分からないんだ』
「何がさ……」
『これから、どうすれば良いのかが』
 だから。
『君に、教えてもらいたいんだ』






「天使?」
 カヲルは怪訝そうにした。
「ああ、そうだ、実験体を基準に新作された人造人間だよ」
「人造?、僕達とは違うのかい?」
「俺達は元は人間だった、エヴァと呼称される何かを定着させられただけのな、だが奴等は違う、エヴァそのものだ、それだけを抽出して二重の螺旋構造を確立した、その結果生まれたのが奴等、天使だ」
 はて?、とカヲルはおかしなことに気が付いた。
「でも僕は幾つかの彼らを知っている、彼らは確かに、仲間を使って組み合わされていたよ?」
「それさえもだ」
 リキは吐き捨てた。
「俺達の体の部位を繋ぎ合わせ、拒絶反応を確認して構造を確立していったんだよ、そして最終的な一体が生まれた」
「一体?」
「ああ、三十二枚の翼を持つ人型の『物体』だ」
 カヲルは顔をしかめた。
「物体とは……、また酷い表現だね」
「だがそう『仮称』するしかない、テンマが判断した」
「テンマが?」
「人間でも、物理現象ですらなく、最も近い表現としては『事象』だそうだ」
「だが彼らが作り出した物なんだろう?」
「その枠を越えたと言う事だ、あるいは」
「なんだい?」
「……枠を取り払われてしまったか」
 カヲルは目を剥いた。
「エヴァそのもの、そういうことか」
「そうだ、エヴァ、この力の利用法を奴等は確立し始めている、だが本質はいまだに解明されていない、もしかすると」
「僕達の力の、源と言えるかもしれない存在がこの世界に剥き出しになった?」
「そう言う事だ、俺達は」
「その天使を通じて、繋がっている?」
「あるいは『奴』から供給を受けているのか」
「だとすれば、それは天使じゃないよ」
「なんだ?」
「神さ」






 その頃、少女達は平穏な日常の中を歩んでいた。
「むぅ……」
「考え過ぎなんじゃないのぉ?」
 悩んでいるレイにアスカは気楽な調子で言う。
 レイほどすっきりしていないのか、どこか気怠く眠たそうだ。
 もうすぐ学校と言う場所である、同じ方向に向かう流れが、少しばかり鬱陶しい。
「あ〜あ、今日はパンかぁ、学食にする?」
「うきゅう、すみませぇん」
「いいって、本当なら学校サボって休みにしてやろうかってくらいなんだから」
 いつもならそうしてしまう所だろうが、今日はユイが家に居る。
 ユイがそう言う事について口喧しいかと言えばそんな事はないのだが、どこかやましさのために居づらいのは事実だ。
 なら学校で寝ていた方がまだ良いだろう。
「まだ悩んでんの?、レイ」
「んーーー」
 やはり納得出来ないようだ。
「この間から、なぁんか隠されてるみたいな気がする」
「はぁ?」
「シンちゃんも、喧嘩したり真剣な顔してたり、なんか前と違うのがねぇ」
 心当たりがあることはあるのだが、それはきっかけに過ぎなかった。
「アスカのあれのせいでって言うのは分かるんだけど、でも喧嘩したって言うのは色んなことを考えたからだよね?、じゃあ、どんなことを考えたんだろ?」
 ねぇ?、との問いかけに不機嫌になる。
「分かんないっての、あの馬鹿が考えてる事なんて」
「うん……、でもほら、いっつもそうじゃない」
「へ?」
「悩んでるか思い詰めてるか、それで気が付いたらもう爆発してて手に負えなくなってる、この間だってそう、見てるだけだった」
「だから?」
「その前に……、ケアしてあげたいなって、思うんだけど」
「ふうん……、ん?」
 アスカは気が付いて、はぁっと溜め息を吐いた。
「ふぴーーー……、れすぅ……」
「歩きながら寝てる……」
「鼻提灯と涎ってのは、ちょっとねぇ」
 とか言いつつも、注意してやんない二人であった。



続く







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