山を下りて来たシンジを待っていたのは加持だった。
「先生?」
「よっ!、悪いな、デートの邪魔して」
「いえ……、いつから待ってたんです?」
「待つのもデートの内さ」
 隣に乗れ、と指示をする。
 良く見ればミサトの車で、シンジは多少不安になった。
「回転数上げないとまともに走らないんだよな、こいつ」
 そう言うセッティングなのだろう。
 乗り込むシンジ、戸を閉じたのはミヤ、彼女は乗らなかった。
「じゃ、あたしは」
「悪いね」
「いえ」
「秋月さん」
「シンジ君……、がんばってね?」
「はい?」
 よくわからない、と言う顔をすると今度はドア越しにキスされた。
「じゃね」
 去っていくミヤにぽーっとする。
「……なんです?」
「いや」
 笑ってる加持。
「そうやって慣れていくもんさ、キスなんてな」
「そうなんですか?」
「ただ余り慣れないほうがいいぞ?、お姫様達とした時にぎこちなさがないってバレるからな」
「経験談ですか?」
「そういうことだ」
「うわ!」
 ホイルスピン気味に走り出す。
「加減して下さいよ!」
「悪いな!、慣れてないんだよ!」
 ぎゃんっと一気に加速する、正面の信号が青だったのは運が良かった。


「どこに向かってるんですか?」
 安定したクルーズになったころ、シンジは訊ねた。
「君のお父さんの会社だよ」
「父さんの?」
「ああ」
 頃合いだろう、と語り出す。
「君のお父さんが、ただの会社員じゃないことはもう気付いているだろうけど」
「はい」
「ネルフ……、と言ってね、レイちゃん達のような子供を保護する仕事を、君達が生まれる前から行ってるんだよ」
「父さんが……」
「ああ、実を言うと俺と葛城も君のお父さんに拾われてね、今ではこうしてその下で働かせてもらってる、多分、今日はその関係の話をするはずだ」
 返事が無い。
 横目に見るとシンジは瞼を閉じて何かを考え込んでいた。
「どうした?」
「……父さんは僕になにをさせたいんでしょうか?」
「さあなぁ、そこまでは」
 嘆息。
 結局は行けばわかる、と言うことで落ち着いた。


 シンジが迎え入れられたのはゼーレ日本支部ビルの中階にあるレストランだった。
 広い空間の窓際の席に三つの人影。
「あ、シンジお兄ちゃーん!」
 ばたばたと手を振っているのは……
「マイちゃん?」
 その隣で会釈したのはメイ。
 シンジは一人心細く近寄った、当然、残りの一人は父だった。
「え、っと……」
「そこへ座れ」
「あ、うん……」
 マイの隣に座る。
「今日は、なに?、どうして……」
「うん!、今日は移籍の相談なのー」
「移籍って……、へ?」
 メイが答える。
「香港の会社が潰れてしまってね……、こちらへ相談に」
「ああ……」
 しかし根本的な答えにはなっていない。
「シンジ」
「なに?」
「先日の事件の最中、カイザーが天使の歌を聞いたと言ってな、そのインスピレーションを元に曲を書き上げた、それがこれだ」
 ゲンドウは楽譜をテーブルに放り出した。
「彼女達にはこれを歌ってもらう」
「う、うん……」
「シンジ、お前も参加しろ」
「え!?」
「確かに彼女達を受け入れたい所だが、専門の部門が無い以上は話にならん、アスカ君、レイ、ミズホ君がいれば一応の形にはなるだろう」
「ちょっと待ってよ!」
「待てない」
「どうして!?」
「この曲が捧げられるのは、子供達へだ」
 シンジは浮かし掛けた腰をそのまま落とした。
 子供達。
 それがどの子供を指しているのか、わかりすぎたからだ。
「お兄ちゃん……」
 マイの縋るような目に負けてしまう。
「どうして、僕なの……」
「それはお前が一番良く知っているだろう」
「このために僕を呼んだの?」
「そうだ」
「無理だよ……、だってプロの仕事に素人を引っ張り出してどうするのさ」
「彼女達のバックを務める者に必要なのは技術ではない、ソウルだ」
「ソウルって……」
「魂の響きだ、シンジ、お前がどう思っていようとも、彼らはお前を待っている」
「待つって……、僕を?」
「お前が知らなくとも、彼らはお前を知っているぞ」
 ぎくりとする。
「え、あ……」
「忘れるな、彼らには言葉以上に意志を伝え合う方法がある事を、しかしそれ故に持て余す感情がある、お前は彼女達に協力し、彼らを導かねばならん、それがあの事件に荷担した者としての責任の取り方だ」
 席を立つ。
「後は任せる」
「はい」
 背後からの声にシンジは立ち上がり気味に振り返った。
「カヲル君!?」
 薄っすらと笑みを浮かべて。
「時が来たよ、シンジ君」
「カヲル君、どうして……」
 薄い笑みを浮かべるばかりで……
 カヲルはしっかりとは答えなかった。


 その頃、碇邱では。
「裸にリボンと言うのは邪道でしょうかぁ?」
「引く引く……」
「シンジの許容範囲なんてパジャマか裸の0、1だっての」
 妙な作戦が進行していた。



続く







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