「…ない」
 レイはタンスの中を見て、次に汚れもものをまとめている段ボール箱を確認した。
 圧縮された下着の山。
 その頃のレイには「洗濯」などと言う概念が無く、彼女は下着を使い捨てにしていた。

 Evangelion Genesis Real 
 Evangelion another dimension real:0.5+ 
原案:hiyouさん


 シュー…っと開く自動ドア。
「いらっしゃいませぇ」
 きゅぴーん!っと目が光ったかどうかは別として、ランジェリーショップの新人スタッフ、彩香さん二一歳はそのターゲットに驚喜した。
 うっわー足細い手も細い、目がちょっと釣り上がり気味だけど冷たいのかしら?
 だがそれは問題にはならない、友達にも愛想の悪い子が居たからだ。
 やたらと友達付き合いの悪かった子が、好きな子が出来て柔らかい雰囲気を身に付けたとたんに化ける。
 そんなことは良くあることだったから。
「そう、そうなのよね?」
 ほんのちょっとだけ頬を染めて俯いて笑みを浮かべるようになれば、きっと誰もがあの奇妙な容姿を気にしなくなる。
 青い髪と白い肌に赤い瞳。
 奇異に見えるかもしれないが、それは神秘さと紙一重の存在だから。
「ぜったい可愛くなる!」
 つい声高に太鼓判を押してしまう。
 さてっと、どんなのを選ぶのかしら?
 大体想像は付いている。
 きっと味もそっけもない…、バーゲン品かな?、人目を気にするような感じじゃないし。
 思った通り、少女はバーゲンセールの篭を一直線に目指し、自分と同じサイズのものを山と抱え始めた。
「やっぱりぃ〜〜〜」
 許せないものがある、彩香はまるでホバー移動しているかの様ににこやかに横移動して背後を取った。
「お客様ぁ、それでしたらこちらの「赤いリボン付き」や「猫さんプリント」なんてどうですか?」
 完全無視。
「沢山買い込まれるんですねぇ?、でもそのお金で一点勝負なされた方が…」
 聞いてもいねぇ。
「可愛い下着を意識する事で自然と仕草も可愛くなって…、お客様でしたらきっと…」
「どいてくれる?」
 フリル付きの上下セットを持ったまま彩香は進退窮まった。
 まずいわ、まずいのよ!
 ここで下がれば彼女はきっと一直線にレジに向かうだろう。
 レイの抱えたブラとパンツのセットはゆうに三十日分はある。
 どうしてそんなにいるのよ!
 もちろん使い捨てにするからだ。
 動かなくなった店員の脇を通り過ぎるレイ。
 彩香はとっさにでまかせを放った。
「でもお客様?、それ、サイズが違いますよ?」
 その一言に立ち止まるレイ。
 サイズのズレ…
 その一言は予想以上の破壊力を持っていた。
 サイズ…、計り間違い、プラグスーツ…
 顔が青くなっている。
 自然とブラに目が落ちる。
 何かあったのかしら?
 微動だにしなくなったレイに焦る。
 でももう一息よね!
 服の上からサイズが分かるはずもない。
 しかし彩香は確かな手応えを感じていた。
 そうよねぇ?、やっぱりサイズが違うのって気になるわよねぇ?
 成長期なのだ、サイズが違うの一言はイコール「大きくなった」と言うことである。
 ではなぜ青くなっているのかと言う疑問が残るのだがそこは無視だ。
 フィッティングルームで素っ裸にされサイズを測られるレイ。
「肌が白くて奇麗ねぇ?、肌理なんて見えないし、あ、胸持ち上げてね?」
 言う通りに持ち上げる、メジャーが回されサイズは着々とチェックされていく。
「それでブラなんだけど、うちじゃこのサイズはこの辺りしか無いの」
 もちろん嘘である。
 持って来たのはベージュで大人しめだが生地が薄いだのととんでもない。
「やっぱり気になる人には奇麗に見られたいんだし、中学生ならもう遅くも無いしね?」
 後半の意味は分からなかったが、「気になる人」の部分には見事な反応を見せていた。
 おっ、好きな子が居るのね?、やっぱり。
 ニヤリとほくそ笑むが、レイの考えている相手は髭である。
「男の子って意外な一面に惹かれるものよぉ?、あなたがそんな着てるって知ったら誉めてくれたりして」
 碇司令。
 ぼ〜っとしてる間に、これとこれとこれとっと下着が次々合わされる。
 まき餌を終了し当たりを待つ釣り人のようにその瞬間に合わせて攻撃する彩香。
 完全に釣られてしまったレイは、店を出てから持たされた紙袋の重みに気がつくのだった。


 翌日、ネルフ本部。
 ターミナルドグマ最下層。
「じゃあレイ、脱いで」
「はい…」
 ゲンドウとリツコの前でおもむろにスカートを脱ぎにかかるレイ。
 ピク…
 ゲンドウの硬化してしまったかのような表情筋が珍しく反応した。
「レイ…」
「はい」
 ゲンドウを伺いつつ質問するリツコ。
「…スリップなんて、どうしたのかしら?」
「買いました」
「自分で?」
「はい」
「そう…」
 ピクピクと頬が引きつってしまう。
 スリップブラ?、この子が流行に気をつかう様に見えないし、どういうこと?
 隣の男が気になってしまう。
 これは調査する必要がありそうね…
 実に恐ろしきは女の嫉妬。
 レイが下着を買った店は某国諜報部の息が掛かっているとの疑いが捏造さた。
 レイの身体データは常にリツコがチェックしているのだ、レイのサイズが置いてないなどと言うことはあり得ない。
 となれば何等かの陰謀が介在していると判断されてもしようの無い事。
 表向きは…


 その後、このスリップブラは零号機の暴走事件によりブラを一人で着用する事ができなくなった時に重宝したのだが、それはまた別の話である。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

この作品は上記の作品を元に創作したお話です。

このお話の元ネタはhiyouさんより50万HIT記念として頂きました。