Evangelion Genesis Real 
 Evangelion another dimension real:152+ 
 さてと!
 まあやっちゃったもんはしょうがないと思うわけよ。
「あんたねぇ?、いつまで泣いてんのよ?」
 しっつれいな奴よねぇ?
 このあたしが…、なんだっけ?、フデオロシしてあげたんじゃない!
「こんなのってないよぉ…」
 ロッカールームの隅でのの字書いてやんの。
「あんたもシャワー浴びなさいよ?」
 そう、あたしとあいつは素っ裸のまま。
 え?、ほんとにしたのかって?
 するわけないじゃん、偽装よ偽装!
 やっぱその…、ねぇ?
 最初はちゃんとしたいじゃない?
 シンジから求めてもらいたいって、そこの所がオトメゴコロよ。
 …無理矢理剥いちゃったけど☆
 こうしてると思い出すわね…
 あの…、戦いの後のことを。


「綾波は見たい映画ってある?」
 買い物帰りのレンタルショップ。
 あたしはSFXバリバリのモンスターモノ専門なんだけどね?
「わからない…」
「え?」
「…見た事、ないもの」
 そう言うあいつは寂しそうで。
 だからついつい…
「あんたこれの小説読んでたじゃない」
「…ヘレンケラーと、エマニュエル婦人」
 なに苦笑い浮かべてんのよ?
「そんなの読んでたんだ」
 ショックなのかしら?、幻想持ち過ぎなのよ。
「ちょっと感じが違うし、面白いわよ?」
 どう?っと、多少押し付けがましく薦めてみると…
「わかったわ」
 …文句無しにエマニュエル婦人を選んだわね?
「碇君、お願い…」
 しかも借りさせるのね?
「あ、綾波ぃ…」
「だめなの?」
 うるうるって…、こいつほんとに侮れないわ。
「わかったよ」
「ありがとう」
 こういうのを悪女というのね?
 ファーストって、ほんとに目的のためには何でもやるから恐ろしいのよ…


 それからあたし達は、たまぁに所有権争いを起こしていたわ。
「シンジぃ、肩揉んでよぉ」
「やだよぉ」
「むっ!、特別に触らせてやろうって言ってんのよ!」
「ななな、なに言ってんのさ!」
「…もう歳なのね?」
「なんですってぇ!」
「疲れ気味なのね、婆さん」
 勝てないのよぉ〜〜〜、くやしぃいいい!
 シンジなんてどうでも良かったのよ。
 ただ目の前でああいちゃつかれるとね?
「碇君…、これでいい?」
 あいつが差す出す小皿に、シンジがちょっとだけ口付ける。
「ん、もうちょっと濃くしない?」
「…わかったわ」
 味噌汁一つにこだわるあいつら。
「綾波って、包丁、奇麗に使うよね?」
「そう?」
「僕なんて力任せだから、結構材料バラけちゃうんだ」
 そのままじっと見つめるあいつ。
「…なに?」
「あ、え、エプロン!」
「これ?」
「似合うなって…、思って」
 おーおー赤くなっちゃって。
「お、お風呂…、見て来るわ」
「う、うん…」
 パタパタとスリッパを鳴らしてあいつは出て行く。
 その時の嬉しそうな表情。
 こぼれる笑みと、桜色の頬。
 シンジに可愛いって言われるのって、そんなに嬉しい事なのかしら?
 どっか世間ズレしてるのが見てられなくて、あたしはファーストに世話を焼いてた。
 まだどうも思ってなかったはずよね?
 この時は二人のことって、認めていたもの…


 二人の破局…、ってぇかただのすれ違いだったけど、ほんとに呆れるくらいパターン通りの展開だったわ?
「なにしてるのよ?」
 セカンドインパクトがあったのと同じ、九月の十三日。
 あいつはケーキを用意して待ってたのよね?
 リボンがかけられてるのは、…フランケンシュタイン?
 なんて本を用意してるのよ?
 もとい、やっぱお似合いだわ、あんたらって。
 しかしあいつは帰って来ない。
 あたしはシンジの正面に腰かけた。
「今日って…、あいつの誕生日よね?」
 シンジはうなだれたまま顔を上げない。
「今朝…、約束してたわよね?」
 お祝いしてもいいかな?って。
「あいつ、赤くなっちゃってさ」
 わざとシンジを苛立たせてみる。
「…忘れてるわけ、ないわよね?」
 ビクンとシンジの肩が震えた。
「…どうしたのよ?」
 ゆっくりと上げられたのはうつろな目。
「…綾波、冷たいんだ」
「はぁ?」
「待ち合わせしても、遅れて来るんだ」
「男が待つのは当たり前でしょ?」
「何も言わずに、帰るんだ」
「へ?」
「学校でも、何処かに出かけてても、気がつけば居なくなってるんだ…」
「それって…」
「電話すると、もう帰ってるって…」
 ぐしっと鼻をすすり上げてる。
「シンジ…」
 あたしはいたたまれなくなって、シンジの隣に座り直した。
「そんな分けないじゃない」
 慰め?
 同情?
 他に言葉なんて無いわ。
 そう言わなきゃたまらなかったのよ。
 だって…
 あたしは見て来てたから。
 ぎこちなく口元を動かす事から始めて。
 やっと笑って。
 シンジの焦る姿に苦笑して。
 微笑みにドキッとして、はにかんで…
 あいつが自然に笑えるようになるの。
 見て来たのよ?
 ずっとずっと…
 それなのに。
「でも僕はもういらないんだ!」
 シンジの目を見てドキッとしたわ?
 あたしに絶望してる。
 このあたしによ?
 あたしが何度も鏡で見てた…、そう、同じ、あたしと同じ目をしてるんだもの。
「そんなことないわよ…」
「だって…」
「あいつに服を買ってあげたじゃない?」
「それはアスカが付き合ってくれたから」
「海にだって行ったでしょう?」
「アスカが旅行なら海がいいって教えてくれたから」
「あんただって…」
「僕は…、いつも」
 ただ焦っていただけ。
 そう、そうよね…、そうだわ。
 あたしの時もそう。
 こいつはあたしの目を見てた。
 死ぬのかなぁって思ってたあたしを、ミサトは何度も揺さぶっていたわ?
 でもだめ。
 なにも感じなかったの。
 いつまでも甘えてんじゃないわよ!
 ドカ!って痛そうな音がした。
 誰が殴られてるの?
 シンジじゃない…
 ごめんよだって。
 もういいわよ。
 そう思って、耳を塞ごうって思っていたのに。
 アスカがいないと、独りでご飯食べるの、やだよぉ…
 ほんと、情けないわね?
 あたしは瞳を動かした。
 不意にシンジと目線が合ったの。
「アスカ!」
 はいはい。
 うるさいわねぇ…
 でもまだしばらく喋れなかったわ?
 でもいいの、言葉なんて要らないの。
「アスカ、これでいい?」
 温かい牛乳。
 あたしの目を見て、あたしがなにして欲しいのか分かるみたい。
 時々間違うんだけど。
 お仕置きものよね?
「ミサトさん、なにかして欲しいみたいなんだけど、僕じゃ嫌だって言ってるみたいで、僕…、僕また嫌われたみたいで」
 バァカ。
 いくらなんでもカテーテルから小が出てるとこなんて見られたか無いわよ。
 カテーテルってのは尿道に差す管のこと!
 だってしょうがないじゃない、自分でどうこうできなかったんだから。
 それからしばらくして話せるようになったんだけど…
「アスカ…、退屈?」
「何か雑誌仕入れて来てあげましょうか?」
「お腹空いたの?」
「果物持って来てあげるわよん」
 そんな感じになっちゃった。
 シンジが一言言うと、ミサトがいろいろ面倒見てくれるのよね?
 …だから誤解したの。
 ミサト、役に立つなって。
 でもね…
「ほんと、シンジ君って優しいわね?」
「はぁ?、シンジが何してくれたって言うのよ?」
「本気?」
「だって全然役に立たないじゃない、本買ってこいって言っても、どんな本?って感じでさ、自分でなんにも考えないし…」
 派手に溜め息を吐かれたわ。
「あのねぇ?、あたし、アスカがなにして欲しいかなんて何にも分からないわよ」
「へ?」
「シンちゃんが、アスカ、どうしたの?って口にするからピンと来るだけ」
「あ…」
「お姫様を護るだけの資格はあるわよ?、ちゃんとアスカのことを見てるんだから」
 あたしを?
 見てるの?
「でも…、シンちゃんは騎士のままね?、王子にはならなかったか」
 その時の残念そうな顔。
 今なら分かるわ。
 情けないのよね?
 どうしていいのか分からないなんて…
 でも誰よりも気づかってくれてたんだわ?
 あの時はわからなかったけど。
 騎士はあたしを守ってくれるの。
 でも幸せにしてくれるのは王子様。
 騎士様は二人を見送るだけね。
 寂しく、微笑んで、まるでシンジそのままって感じで。
 後で知ったんだけど、シンジ、あたしと一緒にファーストの相手もしていたみたい。
 人らしく振る舞うあいつ。
 あたしが癇癪を起こして、あたしを放っておくなら殺してやるって泣きわめいてた時、あいつはずっとたたずんでたわ?
 それも悲しそうに、脅えながらね?
 それからあたしは立ち直って。
 立ち直ったのかどうだか、多分今でもまだダメなんだろうけど…
 それでもレンタルショップの時みたいに、ずっとファーストの相手をして…
 それがいけなかったのかしら?
 ファーストは料理も…、シンジがヒカリに習ったのを教えてくれてるって知ると、シンジを通さずヒカリに教えてもらうようになっちゃった。
 寂しそうだったな、シンジ。
 あたしもいつかのミサトの役にはまっていたわ?
 ファーストはシンジの、見守ってくれてるだけじゃものたり無くなっちゃったみたい。
 あたしと同じね…
 シンジが役に立たないと思ってるのかしら?
 そんなのあたしだけか…、そこまで考えちゃうのは。
 最近のあいつ、シンジに頼らないであたしに聞くもの。
 服のこととか、下着のこととか…
 そりゃシンジに聞くだけ無駄でしょうけど…
 あたしの方がわかってるでしょうけど。
 …いつの間にか、あたしはシンジの頭を抱えてた。
 こいつってば泣きじゃくってる…
 あたしの胸に顔押し当ててるの、気付いてないでしょ?
 薄いシャツしか着てないんだから…、濡れちゃってるじゃない、まったくもう。
 それでもシンジを離せない。
 ううん、離すつもりなんてまったくない。
 こいつってばいっつもそう。
 優しいのに…
 ちゃんと見てるのに。
 見てくれてるのに。
 どうしていいのか分からなくて。
 シンジが困ってるのを見て、ミサトや、ヒカリや、他の人が手を差し伸べて。
 損してるわね?
 優しいって思われるのは、結局手を差し伸べてた人間なのよ。
 それに気付いて、助けてあげてってお願いしている人じゃあないの。
 あんたバカよね?
 そりゃ目の前で弱ってる人間が居たら、助けてあげなきゃ後味悪いわよ。
 でもそれって優しいの?
 あんたバカよ。
 そいつらが何してくれたって、結局あたしの傷の具合には気がつかないのよ?
 気付かないままで、傷口広げてくれちゃうのよね?
 ほんとに優しいのは…
 傷口の大きさが分かるくせに…
 それをちゃんと見てくれてるあんたじゃない。
 痛みが分かるくせに。
 自分も痛いくせに。
 自分の傷が開いちゃいそうだって、泣いてるくせに。
 それでもあたしの傷を気にしてくれてるあんたじゃないの。
「ほんとにバカよね?」
 でもこいつは何も言わずに笑っていたのよ。
 ずっと、ずっと…
 あたしの時にも泣いたのかしら?
 こんな風に…、僕はやっぱりいらなかったんだって。
 泣いちゃったのかしら?
「シンジ…」
 脳裏に焼きついているのは下校の瞬間。
 シンジとファーストが笑ってる。
 遠慮がちに手を繋いでる。
 幸せなのかな?
 そりゃもちろん当然よね?
 でもその手を離しちゃったのはファーストの方。
 そりゃ、あいつも『人間』だもの。
 シンジ以外の人とだって話すし、歩くし…、微笑みもするわ?
 人間だものね?
 嬉しいのよね?
 人として埋没していられる自分が。
「シンジ…」
 その分一人にされたのはこいつ…
 寂しいって脅えてる。
 慈しむって、こういう事かしら?
 愛おしいって言葉の意味。
 ほんとはあんたが…
 シンジが離したくなかったんでしょ?
 繋いでいてもらいたかったんでしょ、この手を…
 そっと優しく包んであげる。
 左腕は肩を抱いて。
 右手でシンジの両手を包んであげる。
 固い髪ね?
 つむじに口付け。
 寒かったんでしょ?
 温もりが無くなっちゃったから。
 でもそれは巣立って行くということなのよ。
 あいつにとっては、親を捨てて行くということ。
 …一番嫌で、恐い事よ。
 あいつは人になれたから、それが出来る様になったのね?
 あたしには分かる。
 シンジ…
 でもあたしはダメ…
 あたしもダメなの。
 独りは嫌…
 あんた、こんな辛いこと、ずっと感じてくれてたの?
 あたしの傷を、ずっと…
 一人でも歩けるようになったあたしを、こんなに震えて、見ていてくれたの?
 ねえシンジ…
 でもいいわ。
 もういいの。
 あたしが側に居てあげる。
 いいえ、あたしが側に居たいのかしら?
 ああもう!、ゴチャゴチャとそんなのどうでもいいわ。
 好きってことにしとくから。
 ファーストになんて、返さないわよ…


 …なんかだんだん分かって来ちゃったのよね?
 誰と付き合ってもキス一つ、手を繋ぐ気にもなれなかったほんとの理由が…
 あれだけあんた達に憧れてたのに。
 相田のバカとデートした日にゃ、さすがにシンジも動揺してたけど…
 あれ程あたし達に近い人間でもダメだった。
 だってね?、やっぱりなんにも晒してくれないんだもの。
 なんにも見せてくれないの、自分を。
 それがきっと、ほんとの理由…
 あたしはシンジに甘えられる。
 だってもう、隠すものなんて何にも無いから。
 シンジもあたしに泣いてくれる。
 他のみんなが恐いから。
 お互い、心を吐き出せる。
 それだけでこんなに安心できるんだわ。
 嘘で固めて、相手の壁に身構えなくてすむってだけで…
 だからあたしにはシンジが必要なのよ。
 あたしがあたしであるために。


「うっうっうっ…」
「だから泣くんじゃないって言うの!」
 これで足組んでタバコでも吸ってりゃ、あたしまるっきりリツコじゃないの。
 …そう言う噂があるってだけよ?、一応補足しとくけど。
 チルドレン候補生相手に何やってるんだか…
「いいから!、さっさとシャワーを浴びて戻りましょうよ」
 抱きつき攻撃に続いて引き起こし!
「む、胸を押し付けないでよぉ!」
「もう他人じゃないのよ?」
「耳に息吹き掛けないでぇ!」
「あ、元気ね?」
「わわわ!」
 前屈みになって隠そうとしちゃって…
 手で隠れるほど小さくないじゃない。
「昨日はキスだってしてくれたのに」
「だって…」
「しょうがなかった?」
「違うよ!」
「じゃあいいじゃない…」
 ちょっとだけ離れる。
「アスカ?」
「あたしは…、あんたがあいつとキスしててもかまわない」
「アスカ!?」
「でもお願い、あたしにもキスして…」
「…いいの?」
「同じだけ、ね…」
「うん…」
 こいつ案外浮気性ね?
 そしてキスしながら考える。
 ま、なんとかなるでしょ。
「ん〜〜〜〜!」
 舌入れたぐらいで騒ぐんじゃないわよ、ばぁか







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

この作品は上記の作品を元に創作したお話です。