Evangelion Genesis Real 
 Evangelion another dimension real:160+ 

 はぁ…
 もう昼になろうというのに、いまいち教室の雰囲気は暗い。
「アスカ、どうしたのかしら?」
「またセンセとケンカしたんとちゃうかぁ?」
 双方の親友二人のコメントを頂いてから、カメラは無人の座席にパンして映す。
「甘いな」
「何やケンスケ?」
「シンジだけならともかく。、綾波も来てないんだ、何かあったんだよ」
「なにかって、なんや?」
「例えば…、シンジの浮気が発覚したとか」
 はぁっとトウジは溜め息を吐く。
「そんなん、いつものことやないか…」
「じゃあ単純にうまくいって無いんじゃないの?」
「かもしれないけど…」
 ヒカリは心配の余り立ち上がる。
「アスカ…」
「うん…」
「碇君、休み?」
「うん…」
「何かあったの?」
「うん…」
「元気出してね?」
「うん…」
 やっぱおかしいのぉ…
 目を細めるトウジ、ケンスケは脇でこの会話を書き止めるために、勢いよくキーボードを叩きまくっている。
 ついに破局か!?
 ゆっくりと波紋が広がる。
「ねえ、惣流さんたち…」
「やっぱりねぇ?、碇君、前から綾波さんと」
「惣流、可哀想だよなぁ…」
「ここは俺が慰めて…」
「ばか!、やめとけって、また殴られるぞ!」
 小さな波紋は、消えることなく大きく揺らぐ。
「惣流…、元気だせよ」
「うん…」
「あ、あのさぁ!、惣流にはもっと似合う奴が居るんだしさぁ」
「うん…」
「鈍い振りして二股かけるような奴なんてさ」
「うん…」
「どう?、俺なんて、なんちて」
「うん…」
「え?」
「うん…」
「お、俺と付き合ってくれるの?」
「うん…」
 ぐっと堪えてガッツポーズ。
「やったぁ!」
「「「えええええー!」」」
 一人の絶叫は大多数の悲鳴に飲み込まれてかき消される。
「アスカ!」
「え?」
「見損なったわ!、碇君が可哀想よ!」
「へ?」
「そやけど委員長、こいつらにはワシらのわからんこともあるんやろうし…」
「何言ってんのよ?」
「惣流さん!」
「え、え?」
 突然両手を強く握られて混乱に陥る。
「幸せにします!」
「「「おおー!」」」
「ちょっと…」
「惣流さんの傷ついた心、きっと僕が癒しますから!」
「なに言って…」
「おはよーって、あれ?」
 シンジは教室に入るなり困惑した。
「みんな、どうしたの?」
「どうもこうも無いわよ!」
 ヒカリが叫ぶ、その泣き混じりの声はシンジと、シンジの半歩後ろに立つレイにも向かって放たれている。
「碇君!、あなたねぇ!」
「まぁまぁ…、碇!」
「へ?」
「綾波と仲良くな!、惣流さんの事は俺に任せろ」
「え!?」
「今日から惣流さんは俺と付き合うのだ!」
「そ、そうなの?」
 シンジは寂しそうにアスカを見た。
 その手は彼がしっかりと握っている。
「へ?」
 やや呆然とした感じのアスカ。
 えっと…
 自分の手を見て、状況分析を開始する。
「さあ惣流さん!、二人で愛を宣言しま…」
 ドン!
 その一瞬の出来事を誰も認識できなかった。
「あ…」
 シンジの後頭部に汗が垂れる、彼の男の子ごと吹っ飛んだ机、教卓、その向こうの黒板は傾き、壁は穴が空いて隣の教室に繋がってしまっていた。
「零距離打撃…」
 ボソッとレイが補足する。
 腰を落とした状態のアスカの拳が全てを物語っていた。
「シンジ、おっそーい!」
「え?」
「もう!、お昼には来るって言ってたから、お昼食べないで待ってたのよ!」
「あ、ごめん…」
 はっと再起動を果たすご学友達。
「あの、アスカ?」
「え?、なにヒカリ」
「えっと…、碇君と何かあったんでしょ?」
「何かって…、やだもう!、ヒカリ何考えてんのよ!
「ふ、フケツ…」
 真っ赤になったアスカに引き下がる。
「ほな、なんでぼうっとしとったんや?」
「あ、このせいじゃないの?」
「なんだそれ?」
 ケンスケのカメラがパンフを捉える。
「ネルフの幹部用物件情報誌だよ、ほら、ミサトさんと加持さんが結婚するから引き払う事になったでしょ?」
「なんや、シンジらも一緒に行くんか?」
「あんたバカァ?、そんな野暮しないわよ」
「じゃあどういう事やねん?」
「ミサトさんはあそこのままだけど、僕達が出てく事になったんだ」
「「「えーーー!」」」
 悲鳴が上がる。
「じゃあ碇君転校しちゃうの!?」
「惣流さん!」
「綾波もか!?」
 まぁまぁと抑えて、こういう時のクラス代表、相田ケンスケが矢面に立つ。
「その辺のコメントは?」
「え?、ほら、僕達ってパイロットだから…、普通の不動産物件には住めないでしょ?」
「不便な話やなぁ…」
「でも家賃ネルフ持ちだからね?、それで三人で新しい部屋を探そうと思って…」
「新居」
「あんたは居候でしょうが!」
「奥さんだなんて、なにを言うのよ…」
「言ってないわよ!」
「「「ちょっと待てーーー!」」」
 認めたくない現実が降りかかる。
「それって、同棲…」
「ち、違うよ!」
「違わない」
「シンジぃ、ベッドは一つで十分よねぇ?」
「は、はーれむ…」
「いやんな感じぃ…」
 うわあああああああああああ!
 熱い男達が教室を飛び出し夕日に向かって走っていく。
「ええっと…」
「それで転校すんのか?」
「あ、しないよぉ、ただもう卒業だからね?、中学に近くするかネルフに近くするかで迷っているけど…」
「ファーストはおば様と暮らせばいいでしょう!?」
「あなたこそ、強制送還…」
「おあいにくさま、S級国際公務員として正式に過去の経歴は抹消!、惣流アスカとして日本に帰化したのよ!」
「そうなの?」
「だってぇ、シンジと一緒に居たかったんだもぉん☆」
 もう勝手にしてくれといわんばかりの空気が漂い始める。
「そうかぁ、ほなこれからはそう遊びに行けんようになってまうなぁ」
「え?、なんでさ…」
「アホぉ!、邪魔なんぞできるわけないやろ、…恐ぁて」
「ははは…、僕としては邪魔して欲しいんだけどな」
 引っ越しが決まった時、一人暮らしと同居の二通りの選択があった。
 一人暮らしじゃ危ないんだよ…
 二人を噛み合わせる事で、抑えにかかることにしたらしい。
 ほんとは母さんに、一緒に暮らさないかっていわれたんだけどさ…
 苦手なのだ、父親同様、どう付き合えばいいのか分からなくて。
「あ、シンジ!」
「え?」
「お弁当!、お腹空いて死にそうなんだから!」
「ああ、ごめん…、えっと」
 シンジは鞄を下ろすと中からどでかい保温弁当箱を取り出した。
「ありがと☆」
「ってちょっと待てや」
「なによぉ?」
「それ、全部お前んかい!」
「当ったり前じゃない」
「…惣流、お腹に虫でも飼ってるんじゃないのか?」
「くすくす、病院送りね…」
「何てこと言うのよ!、この子は虫なんかじゃないわ!」
「「「えっ!?」」」
「うっ、シンジ産まれる!」
「えええええ!?」
「シンジぃ!」
「抜け駆けしおって!」
「碇君…」
「あ、綾波!、そんな恐いよ、笑わないでよ!、笑わないでよぉ!」
 うわああああああああ!
 今日も嬉しそうな悲鳴が響き渡る。
 実に楽しそうな学校であった。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

この作品は上記の作品を元に創作したお話です。