綾波レイ。
 マルドゥク機関によって選ばれたファーストチルドレン。
 使徒の遺伝子を持つ限りなく人に近い少女。
 彼女は今、穏やかな陽射しの中でやや張りぎみの胸を赤子に咥えさせている。
 今年で十九歳。
 旦那の名は碇シンジ。
 問題が何もないかのように見えるこの夫婦であったが、唯一の災難は隣の奥さんがあの少女だった事である。

 Evangelion Genesis Real 
 Evangelion another dimension real:256+ 
「シンジぃ〜、いるぅ?、ちょっと温泉のタダ券手に入れちゃってさぁ、カニ食べに行かなぁい?」
 そんなアスカをジト目が睨む。
「…何しに来たの?」
「ファースト、ペンタが脅えてるじゃない、おーよちよち」
「…勝手に変な名前を付けないで」
 慌てて抱き隠す。
「なによぉ、いずれあたしの子になるんだからいいじゃない」
「ならないわ」
「ん〜、ほんとシンジそっくり!、あんたに似なくて良かったって感じよね?」
 勝手に茶菓子まで出してお茶をすする。
「ねえ、シンジはいつ帰って来るの?」
「その前にあなたが帰って」
「い・や・よ・☆」
「旦那さまが寂しがっているでしょ?」
「ああ、うちのボンクラなら海外出張よ」
「だからって人の旦那を誘惑しないで」
 この会話がなされるたびに、アスカは失敗したと歯を食いしばる。
 ちなみにアスカの結婚は偽装である。
(…シンジがちっとも焦ってくれなかったから)
 結局高校程度ではシンジは決断しなかった。
 だから…

「シンジ、あたし結婚するの」
「嘘!?」
「ほんとよ?、あたしの頭脳が欲しいって、…政略結婚って言うのかなぁ」

 などと言うのはシナリオだった。
 アスカは市政を司るどころか巨大なデータバンクとしても機能しているMAGIに近い事を利用して、架空の人物と偽の婚姻届をでっち上げて受理させたのだ。
 ちっ、シンジが捨てないでって泣き出したら「じゃあ離婚する!」って手筈だったのに…
 おかげでいまだに独り身だ。
「ただいまぁ」
 ブシュッとドアの開く音。
「…やっぱりアスカか、また来てたの?」
「おかえりぃ☆」
 むぎゅっとその顔面が捉まれる。
「…あにすんのよ、ファースト」
 ギロリ。
「またキスするつもりね?」
 ジトって感じ。
「いいでしょそれぐらい!、独り寝の夜は寂しいのよ!」
「せいぜい自分で慰めるのね、淫乱」
「なんですってぇ!」
「あ、あ、あ、ほらでもアスカがそう言う事すると声が大きいから近所迷惑だし、あれ?」
 なっ、なっ、なっ!
「なんであんたが知ってるのよぉ!」
 レイもまた剣呑な表情を作っている。
「だって何年一緒に暮らしてたと思ってるんだよ」
「いやぁ!、もうお嫁にいけなぁい!」
「…行ってるじゃない」
「あの人に顔向けできない!、責任取って!」
「責任?」
「うん、シンジと住む」
「ややや、やだよ!、アスカ寝相悪いんだもん!」
「…どうして知ってるの?」
「うっ!」
「ねえどうして?」
 あ、いや、それは…
「そりゃあ一緒に寝てた仲ですもんねぇ?」
「ち、違うよ、なに言ってんだよ、アスカが勝手に!」
「寝てたのね?」
「あ、い、う!」
「寝てたのね?」
「はい…」
「ほーほっほっほ!、とうとう認めたわね、ばぁかシンジぃ!」
 しかしレイの視線はアスカにも冷たい。
「でも先に裸を見られたのはわたし、胸を触られたのもわたし」
 ピシッと固まる。
「シンジぃ!」
「ひゃあ!」
「責任を取ってもらうならわたしが先よ…」
「なんでアスカが怒るんだよぉ!」
「騙したわね!、隠してたでしょう!」
「違うよ、何言ってんだよ、言える分けないじゃないかぁ!」
 今日も悲鳴がこだまする。
 シンジの関係はまだ変わらない。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

この作品は上記の作品を元に創作したお話です。