Episode:21_4 Take7



 シャー…
 シャワーの音が、湯気と共に風呂場を埋める。
 碇家のお風呂は、現在ただいま使用中。
 湯気の向こうに、細い体と短い髪がかすかに見えた。
 少しばかりシャギーがかった髪が湯気に濡れて張り付いている。
 それをうっとうしげに払いのける指。
 その繊細で細長い指がシャンプーのボトルをつかんだ。
 たっぷりと髪を濡らした後で、まずは手で揉むように洗っていく。
 一度流すと、今度は毛先から髪の根元に向かって洗い上げた。
 こうしないと、絡まっちゃうしね?
 地肌は首の後ろから、つむじへ向かうようにマッサージの要領で。
 血行を良くして、抜け毛が増えないように気をつけないと…
 そして再び洗い流す。
 今度はリンスだ。
 面倒臭い時には洗面器でお湯に溶かし、それをかぶって終わりにするんだけど…
 今日は色々あったから、たっぷり目に髪につけて、そのまま湯船に浸かってひたすら待つ。
 洗い流すのは、五分ぐらい待ってからっと!
 髪にしっかりとなじむのを待つ。
 これって面倒臭いけど…
 シンちゃんのためなんだぞ?っと思ってみる。
 思ってみたのだが余りにも恥ずかしかったのか?、きゃっと照れて暴れてみた。
 一人幸せそうなレイ。
 ちゃぽーん…
 天上に溜まった水滴が落ちて来た。
「今日も一日、ごくろうさん…」
 シンちゃん、大丈夫かなぁ?
 天井を見上げる。
 その向こうでは、いまシンジはアスカとミズホによって吊し上げられているはずだった。
「んふふ〜、でもよかったぁ、誤解が解けて」
 本当はまだ解けてはいないのだが、レイは気がついていない。
 ふう、まったく誤解だって言ってるのに聞かないんだから…
 シンちゃん!?
 でも、なんだか歌ったらすっきりしちゃったな…
 聞こえて来た声に、あわててすりガラスの向こうを見た。
 衣擦れの音。
 シンちゃん、お風呂に入るつもりなんだ!?
 いま入ってる!、…っと言おうとしてやめた。
 これはチャンスかもしんない。
 にへらっとよからぬ事を企んで、レイはまず隠れ場所を探した。
 が、お風呂場の中だ、隠れるような場所などどこにもない。
 それに第一、湯船から出たらお湯の音で気づかれちゃうよ!
 潜ろうか?、と考える。
 あ、リンス付けたまま!
 ちちぃっと舌打ちしそうになったが、なんとかこらえた。
 あ、それよりも…
 脱いだ物が洗濯かごの中にある。
 気づかないで、お願い!
 レイの祈りが通じたのか、シンジは気にする事も無くパンツを脱いだ。
 それをガラス越しに確認するレイ。
 こいこいこいこいこい…
 シンジが扉に手をかけた。
 来た!
 ガラッと風呂場の戸が開くのと、ガタっと脱衣所の扉が開くのは同時だった。
 素っ裸のシンジに赤くなるアスカ。
「な、な、な…」
「うわー、うわーですぅ」
 その横でミズホは目を丸くしていた。
「何やってんのよ、この変態がぁ!」
「うわぁ!」
 驚きシンジは湯船に飛び込んだ。
 ばしゃあん!っと、ハデに飛沫が飛ぶ。
「何だよ勝手に入って来たのはそっちって…、え?」
 ぐにゅっと感触。
「あん!、シンちゃんってばそんなに急いであたしの上に乗っかっちゃうなんて恥ずかしいじゃないって、ホント信じらんないけど、レイちゃん幸せだから抱きしめちゃおって、ぎゅー☆」
 っと抱き締める。
「うわあ!、なんだよ、なんでレイが入ってるんだよ!!」
 慌てて飛び出ようとするシンジ。
「シンジ、あんたまさかレイと…」
 ふるふると拳を震わせるアスカ。
「そんな!、シンジ様不潔ですぅ!」
 ミズホが洗面器を振り上げていた。
「違う、誤解だよ!」
 うわっと恐れて身をちぢこませる。
「えー?、だって知ってて入って来たんじゃないのぉ?」
 逃げようとするとレイが体を密着させてきた。
「うわぁ!、離れて、離れてよぉ!」
 怯えるようにレイの顔を手で引き離す。
「離れると見えちゃうもん」
 つーっと鼻血が伝った。
「バカシンジィ!」
「入ってるんなら言ってくれたっていいだろう!?」
 なんとかふり払って立ち上がる。
「うわー、うわーですぅ」
 両手で顔を被いつつも、指の間からしっかり見てる。
「この変態!」
 パンっと平手。
「うわぁ!」
 気がついてしゃがみこむ。
「あん☆」
 座るとレイの膝の上だった。
「って、どうしろっていうんだよぉ!」
 前門のトラ、後門の狼という言葉を思い出し、シンジはどちらがマシだろうと現実逃避を始めてしまいそうだった…



 一方その頃カヲルが何をしていたかと言うと…
「風邪を引くといけないからね?」
 シンジの布団を、いそいそとなぜだか敷いていた。
 シンジ君の匂いがする…
 その中に潜り込むカヲル。
 スーっと息を吸い込んだ、火照りだした体に布団の冷たさが心地良い。
「ちゃんと人肌に温めておいてあげるよ、シンジ君…」
 ごろごろと悶えまくる。
「まだかなぁ…、シンジ君は」
 トラと狼だけでなく、得体の知れない物体にまで狙われているシンジであった。



続く




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