「ねぇ、まだ決まらないのぉ?」
 イライラとシンジ。
「早くしないと、泳ぎに行く時間無くなっちゃうよぉ…」
 今日の夜にこちらを発つ。
 シンジは店頭のぬいぐるみを漁っている三人にため息をついた。
「ねぇ見て見てシンジィ!、このおサルさん、あんたにそっくり!」
 買っちゃおっかなぁっとはしゃぐアスカから、ミズホがもぎ取る。
「だめですぅ!、アスカさん、シンジって名札の付けたの、もう持ってるじゃないですかぁ!」
なんであんたが、そんなこと知ってんのよ!
 ばらすなー!っと叫ぶアスカの横で、レイが珍しいものを見つけていた。
「これって…」
 懐かしの「動くトトロ」である。
「すっごいレア物!、これってジャイアントシェイク以降は再版されてないのにぃ!」
 パン!
 レイの手の平の音にあわせて、身長40センチ近いトトロが、「ももももも」っと動き出した。
「あら?」
「すっごく可愛いですぅ!」
 みんなで見つめる。
 こてん…
 もももももも…
 前傾姿勢に倒れ込む。
「なんか…」
「腰振ってるみたい…」
「ひわいですぅ」
 はああああ…
 シンジは派手に、それは大きくため息をついてしまっていた。



Q’第36話 「そんな奴ァいねぇ!!」



「暇ねぇ…」
 ビーチは一通り平和を取り戻している。
 パラソルの下、シートで寝そべる美女がいる。
 うきゅ〜!
 沖の方から、時折叫びが上がっている。
 そう!、天使軍団は、まだここにいた
「ミヤは泳がないの?」
 ようやく上がって来たマイが問う。
「少し肌を焼きたいの」
「ふ〜ん、あんまり焼いちゃうと、ガンとかになるんだって、知ってた?」
「あたし真っ黒ぉ…」
 イサナが泣きながら現れる。
「イサナのは地肌じゃない、あれ?、みんなは?」
「ライと一緒に出かけちゃった」
「なにしに?」
「ナンパだって…」






 防波堤の上に片足を乗せてるライ。
「ふ、眩しいよな…」
 ばっかみたい。
 行こ行こ。
 しらけた少女達が、白い目で彼を見ていく。
「この渋さが分からないなんて…」
「ふっ、くだらんな…」
「なんだよ!」
 ムキになってテンマを見る。
「あう…」
 腕組みしている謎の女性。
 こう言ってはなんだが、ボい〜んのバい〜んだ。
「い、いつの間に…」
「ほら、あっちで奢ってあげるから!」
「……」
 無言で誘いに乗るテンマ、実は落とした財布を拾ってあげただけである。
 もちろん、「財布を落とした女性」を力で探したことは言うまでもない。
「やっぱこうなるとアラシが強いよねぇ…」
 ツバサは初めから傍観者だ。
 そして同じく、リキも一緒。
「顔だけで生きてるからな、下半身になる前に、放り出したい所だが…、あいつはどこだ?」
「あそこ」
 ツバサは防波堤の下、浜辺の人ごみの中を指した。






「友達探してるんだろ?、一緒に探してあげるよ」
 しつっこいなぁ…
 マナは少々むくれていた。
「下心見え見えー!、そんなの乗らないもん」
 だが相手はさらに上手の様で…
「そんなの当ったり前でしょ?」
 と、にこやかに笑って見せる。
 もちろん、アラシだ。
「せっかくの浜辺でさ、一人でいたってつまらないし」
「じゃあ、あたしは暇潰しぃ?」
「半分はね」
「ひっどーい!」
 だが素直な所には好感が持てる。
 健康的な素足が眩しい、霧島マナ、15歳(一応フリー)は、ちょっとだけ本来の目的を忘れかけた。


 シンジは人でごった返す浜辺を、一人でふらふらと歩いていた。
「せっかく来たんだから、肌ぐらい焼いて帰りたいよな…」
 シンジは自分の白い腕を見た。
 細い…
 せめて力こぶぐらいは作りたいと、腕を曲げて見る。
「シンちゃーん!」
 ふと、遠くから呼ぶ声がした。
「あ、マナさん」
 ビーチサンダルで砂を蹴ってくる。
 息を切らせて、立ち止まる。
「一人なの?」
「うん、みんなお土産買うのに夢中で…」
「変なの、自分の買い物じゃないんでしょ?」
「そう言えば…、そうだね」
「自分の欲しい物ばっかり選んでるんじゃない?」
「僕も…、そう思うよ」
 クスッと笑い合う。
 マナはそのまま、シンジの腕に腕を回した。
「ま、マナさん!?」
「だからマナで良いってば!」
 耳元で怒鳴る。
 口を尖らせて。
 可愛い…、んだけどな。
「ちょっとだけでいいから、こうさせて」
「ど、どうしたのさ?」
 耳打ちするような声に合わせる。
「ナンパ!、ほんとにしつこいんだから…」
 ぐいぐいと押し付けられる胸。
 以外とあるんだな…
「どうしたの?、…あー!、シンちゃんどこ見てるのよぉ!」
「そ、そんな、腕なんか組まなきゃいいだろ!?」
 シンジはマナを振りほどこうとした。
「だめぇ、またあいつに言い寄られちゃう」
「そ、そんなの…、浩一君にでも頼めばいいじゃないか」
 だが今は姿が見えない。
「だめよぉ、浩一ってばおもしろがって消えちゃったんだから」
 シンジは困った表情を浮かべた。
「それに!、いま霧島マナはシンジ君に夢中なんだもん!」
 え?
 ドキッと、シンジの胸が跳ねた。
「やだ!、シンちゃん赤くなってる!」
「だ、だから、マナさんが!」
「ほほぉ、これはこれは…」
「「アスカ!」」
 二人同時に振り返る。
「お熱いわねぇ?」
「シンジ様ぁ…」
「シンちゃん…」
 泣く子とミズホには叶わないが、それ以上にレイの冷たい視線は恐い。
「み、みんな、機嫌悪そうだね…」
「あんたのせいでしょうが!」
「ええ!?、僕の?」
 シンジはびくりと後ずさった。
「酷いですぅ、シンジ様!」
「そうよ!、あたし達見捨てて、こんな女といちゃついてたのね!」
「ちょっとぉ、こんなのはないんじゃない?」
「なによあんた、ちょっとシンちゃんが優しくしてくれるからって付け上がっちゃってさ、何か勘違いしてるんじゃないの?」
 こわ〜…
 レイ、どうしたんだろ?
 実はトトロを買いそこねたのだ。
「そこまで言う!?」
「あんたみたいのがいるから!、こっちはストレス溜まってしょうがないのよ!」
「溜まってるのはストレスだけぇ?、お腹の肉だって、ずいぶんと溜めこんじゃってさ!」
「んな!?」
「酷いですぅ!」
「そうよ!、いくらほんとのことでも…」
あんたたちぃ!
「「「きゃー☆」」」
「どうしてこうなるんだろ?」
 シンジはマナの言うナンパ男が近づいて来るのに気がついた。


 シンジは近寄って来る少年を見た。
 あれ?
 何処かで見た事があるような気がする…
 どこだっけ?
 思い出せない。
 なんだか、睨まれてるみたいだ。
 シンジはちょっと恐かった。


 碇シンジ!
 またこいつなのか!っと、アラシはちょっと気が立っていた。
「白昼堂々、衆目気にせず、いちゃいちゃしやがって、どちくしょうめ!、天誅!
 そう叫んでど突き回せたら、一体どれだけ幸せになれるんだろうか?
 憎しみで人が殺せたら!
 アラシは本気でそう思っていた。
「けど、傷害は良くないよ、うん」
「まったくだ、もてない男のひがみというのは…」
「ツバサとリキには言われたくないわ!」
 振り向くと二人が立っていた。
「リキさん!」
「よお」
 見た事があるかもしれないし、ないかもしれない。
 だがリキの存在によって、シンジはなんだか相手の正体を知ってしまったような気がした。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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