あーーー!、あんたわ!!
 シンジの声をかき消すように、アスカはアラシを指した。
「まだここに居たの?」
 ミズホを庇うように、レイも目を細める。
「おいおい、今はほんとに遊んでるだけだって」
「嘘…」
 レイは初めから疑っている。
「あ、あの、レイ、きっとほんとに偶然なんだよ、うん…」
 シンジはとりなすように間に入る。
 くいくいっと、シンジの海パンを引っ張るマナ。
「シンちゃんの知り合いだったの?」
「違うよ」
 答えたのはアラシだ。
「あいにくと、男の友達は作らないことにしてる」
「言い切ったなぁ…」
「さすがだねぇ」
「信じらんない」
「最低〜」
「不潔ですぅ」
「シンジ君、こうなったら終わりだからね?」
 どうやら味方はいないようである。
 うん…と言いかけて、乾いた笑いでごまかすシンジ。
「はっきり言って負けてるね、アラシ…」
「何故!」
「いや、この差を見れば…」
 ツバサはシンジをちらりと見た。
 シンジと腕を組んでいるマナ。
 その背後にアスカとレイとミズホが並んでいる。
 はっきり言って、まぶし過ぎるよ…
 ツバサは劇画度を上げて目を細めた。
「だあ!、勝手にモノローグするな!」
「だって、ねぇ?」
 振り返ると、リキのむさい体が目に入る。
「悪かったな」
「いや、もう見慣れたから」
「じゃなくて!」
 アラシはシャツの奥から分厚く膨らんだファイルを取り出した。
「見ろ!、この成果の数々を!」
 おおー…
 皆一応は驚いた。
「暇なんですねぇ」
 というミズホの一言が、その驚きの内容を示してはいたのだが。
「よくもまあこれだけ…」
「でもはっきり言って」
 アスカはふふんと胸をはった。
「質はこっちの方が上よね?」
「でもそれは、彼個人の力じゃないだろう?」
 妙に突っかかるアラシ。
「頭数だけ揃ったって意味無いわよ」
 べ〜っとマナ。
 アラシのこめかみが引くつく。
「これって…、下は赤ん坊?」
「上はおばあちゃんまでいますぅ」
「まさに数だけって感じよね?」
「イケス作って、迷いこんで来た魚を次々と囲ってる奴とは違うからな」
「なんですってぇ!?、シンジ、あんたなに黙ってんのよ!」
「あ、うん…、あの、イケスって、なに?」
 ゴン!っと、派手に後頭部をど突く。
「いいわよもう!」
 倒れたシンジを踏んづける。
 アスカはアラシを睨み付けた。
「自分から行かなきゃ寄って来て貰えないなんて、寂しいわねぇ?」
「そうですぅ、あなたなんかに、シンジ様の良さは分かりません!」
 そのシンジを「うんしょ」と助け出そうとするミズホ。
「人徳の差って奴かなぁ?、シンちゃんの方がとっつきやすいもんねぇ?」
「ってくっつかないでよレイ!、今はあたしのシンちゃんなんだから!」
「ちょっと、誰があんたのなのよ!」
「そうですぅ!、あなたはあの変態さんと仲良くしててください!」
「ぜっっっったい、嫌!」
 偉い言われ様だな…
 もはや慰めようも無いリキ。
「ずるいぞ貴様!、こっちが女の子には強く当たれないのを知ってて…」
「ええっ!?、僕のせいなの?」
 がばっと起き上がるシンジ。
「そんなの僻みですぅ!」
「シンちゃん、無視よ、無視!」
「まあまあ、ここは一つ、僕に任せてよ」
 何かよからぬ事でも思いついたのか?
 リキの目がツバサを睨む。
「ここは一つ、ゲームでもしない?」
「やだ」
「べーだ」
「さ、シンジ様?」
「行きましょう」
 無下も無い。
「しくしくしくしくしく」
「き、聞くだけでも聞いてあげようよ、ね?」
 引きつるシンジ。
「ありがとう!、感謝の気持ち!!」
 ツバサはちらりとアラシを見た。
「アラシも、こういうとこ見習えばいいのに」
「お前の遊びに付き合っていられるか」
「ま、その通りなんだが…、で、何を思い付いた?」
 リキの問いかけに胸を張る。
「ナンパ合戦なんてどう?」
「「「ええーーー!」」」
「どうしてそんなことしなくちゃいけないのさ!」
「なんだ、自信が無いのか?」
 アラシの目線にムッと来るシンジ…、ではなかった。
「そうだよ、そんなの無理だよ、できるわけないよ!」
「やれやれ、これだから生餌に次々と寄って来る魚を捉まえるような真似をしている奴は…」
「ちょっと、あんたにそこまで言われる筋合いは無いわよ!」
「そうよ!、シンちゃんはね?、ズ〜ッと付き合ってて初めて良さが分かるんだから」
「そうそう、短期決戦型じゃないのよね?」
 って、そんな人を酢昆布みたいに…
「ちょっとちょっと、話しは最後まで聞いてよ、ね?」
 ヒートする外野を押さえる。
「数で行きゃ、そりゃアラシが勝つのは目に見えてるよ、だから、質で勝負ってのはどう?」
「質ぅ!?」
「そ、たった一人でいいの、…そうだな、判定はリキが付けるってことで」
「俺がか!?」
 派手に驚く。
「うん、だって向こうじゃ私情が入っちゃうし…」
 女の子達を見る。
「まあ、そりゃそうかもしれんが…、しかし」
「よし!、話しは決まりだね?」
「ちょっとちょっと!、何処が決まりだってのよ!」
「そうだな、特定小数にしか通じないような魅力じゃ勝負にならないし」
 あはははは、そうだね…と言いかけたシンジを蹴倒すアスカ。
「なんですってぇ!、わかったわよ、やったろうじゃない!」
「ちょ、ちょっとアスカ!」
 レイのなだめも効果が無い。
「シンジ様の素晴らしさは、万国万民、世界共通ですぅ!」
「見てらっしゃい?、あたしの戦略プランで飛びっきりの女の子を見つけてあげるんだから!」
 ペンタゴンまで着いてるよ…
 ちらりと見ると、アラシはちょっと悔しそうにしていた。






「まったくもう、アスカってばあんなこと言っちゃって…」
「ごっめーん!、でもあそこまで言われちゃったらさ?」
 たく…
 シンジを見るレイ。
「どうしろって言うんだよ、あんなこと言っちゃってさ…」
「もう!、うじうじしないの!!」
 マナがその背をバンと叩く。
「面白そうなことやってるじゃないの…」
「うわぁ!、ミサトさん!」
 ぬーっと現われるミサト。
「いったいどっから…、その頭の海藻は…」
「あはは、これ?、ちょっちねー」
 右手にペンペンをぶら下げている辺りがよく分からない。
「それより!、時間無いんでしょ?、サクサク行くわよ?」
「え?」
 いきなり仕切られている。
「とりあえず、シンちゃんの好みからいってみましょうか?」
 ピク!
 耳がダンボになる四人。
「そうねぇ…、髪は長くてお人好し、面倒見も良くて、ちょっとずぼらなとこが愛敬の、年上お姉さんなんてどんな感じ?」
 う…
 ちょっと嫌な予感が走る。
「い、いえ、どっちかって言えば髪は短くて自分勝手、人の言うこと聞かないで細かいとこに気のつく年下の女の子なんかが…」
「ほほぉ…」
 ミサトの頬がピクリと引きつる。
 それってなんだか…
 ねえ?
 ふんぎゅうですぅ…
 なんとなくマナに視線が集まる。
 そそくさと水筒からジュースなどを注いでいるマナ。
 その気になってる今がちゃーんす!
 なにやら粉薬を混ぜている。
「ささシンちゃん?、喉渇いたでしょ?」
 う、なんか妖しい…
 そのいっちゃってる目つきに気がつく。
「ま、マナが飲みなよ」
「ってシンちゃん!、あたしを薬でメロメロにしてどうするつもり!」
 マナ…
 とりあえず汗が吹き出す。
「とぼけた顔して何言ってんのよ!」
「ほら、ミズホも協力しなさい!」
「嫌ですぅ、どうしてシンジ様が他の方と仲良くするお手伝いをしなくちゃいけないんですか?」
「あんたバカァ?、さっきあんたも賭けに乗ってたじゃないのよ!」
「ぶー!、わたしは反論しただけですぅ」
「とにかくもう遅いのよ!、ほらバカシンジ、さっさと選びなさいよ!」
「え、選べって言ったって…」
「その辺見渡せば適当に居るでしょうが、ほら!」
 アスカはシンジの首をつかんだ。
「痛い、痛いよアスカ!」
「あの辺なんてどうなのよ?、あんたの持ってたヌードグラビアの子そっくりじゃない!」
「ええ〜!?、何それシンちゃん!」
「シンジ様酷いですぅ!」
 ミサトも一言。
「先生にも詳しく話して欲しいわね?」
 ちょっとマジが入っている。
「ぼ、僕のじゃないですよ、あれはケンスケが無理矢理…」
「どっちでもいいから!、って、きゃあ!」
 たーっちっと、小さい男の子がアスカのお尻を叩いた。
「この忙しい時に何すんのよ、くそがきゃあ!」
 げしゃ!
「あ、アスカ…」
 はっと我に返るアスカ。
「や、やあねぇ、最近のガキって」
 動いてないよその子…
 ははははっと、乾いた笑いだけがこだました。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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