ズンズンズンズンズン…
朝日をバックに歩く三人。
その表情は非常に険しい。
誰かと説明しなくとも決まっている。
「何で居ないのよバカシンジ!」
キャインと道を譲る散歩中のお犬様。
「アスカがそんなに怒るからじゃないの?」
「なんですって!」
なによ!っとレイも不機嫌さを隠さず返す。
「シンジ様ってば、大胆なんですからぁ…」
一人だけ会話に混ざらず妄想している。
そんなミズホに触発されて、野良猫達が発情していた。
GenesisQ’40話
「星くずパラダイス4」
「薫さん…、なんだ」
うわあ、うわあ、うわあと、シンジは慌てまくっていた。
抱きつかれた時の、柔らかな感触が消えてくれない。
「見てほら?、シンジ君にとかしてもらった髪、こんなに艶が戻ったの!」
真っ黒な髪は艶を帯び、光を受けて輪を浮かべている。
さらっと流れるのに合わせて、光がキラキラと舞っていた。
ドギマギするシンジに、カヲルの視線がちょっと冷たい。
「なに興奮してるんだい?、シンジ君…」
お尻をギュッとつねるカヲル。
「い、痛いよ、カヲル君…」
カヲルはつんとすねている。
「シンジ君が赤くなるからさ」
「あああ、赤くなってなんかないよ!」
くすくすくすくすくす…
しとやかに笑って、薫はちょっと喜んだ。
「相変わらずなのね、二人とも…」
シンジは真っ赤に小さくなった。
●
「そっか、テスト全部返って来るのって週末になっちゃうじゃない…」
アスカはレイの側で、迂闊だったと嘆いていた。
「じゃあデートは土日の2日ってことにしない、ね?」
英語の結果を見て、不敵にアスカに持ちかけるレイ。
「ほっほぉ、いいわよ?、まあシンジも誕生日じゃ警戒しちゃってるだろうし、ね?」
土日か、泊まりがけで出かけるってのも悪くは無いわね?
土日って言えばバイトが入ってたし、タタキさんにホテルでも取って貰って…
くふっとお互い笑みが漏れる。
「なによ?」
「なに?」
バチバチっと火花が散る。
無言の数十秒、しかしもう一人、見つめている目がある事に二人は気がついていなかった。
「シンちゃん!」
「うわぁ!」
バンッと机を叩かれて、シンジは驚きこけかけた。
「な、なに?」
慌てて椅子の背にしがみつく。
うるっと、マナの目に涙が溢れ出した。
「ちょ、ちょっと…」
「シンちゃんは…、シンちゃんだけは違うと思ってたのに!」
「はあ?」
キッと睨み付けるマナ。
「今朝の子だれ!」
ざわっと、教室中がざわめいた。
「だ、誰って…」
「シンちゃんがまた違う女の子に手を出してるのぉ!」
うわーんと泣き出す。
みんなの冷たい視線が突き刺さる。
「そうなのかい?」
「カヲル君!」
「ごめんごめん」
しかしかなり楽しそうだ。
「誤解だよ!、あの子は薫さんと言って…」
「昔同じ部屋で寝泊まりした仲なんだよね?」
「カヲル君ってば!」
うわーーーん!
教室中に、派手に泣き叫ぶ声が響き渡った。
「だからぁ、薫さんは同じ病室で一緒だっただけで…」
「嘘!、だって普通、女の子と男の子を同じ病室になんてしないもん!」
「そんなこと知らないよ!、とにかく僕はそうだったんだから…」
シンジはそこで口をつぐんだ。
「シンちゃん?」
「やめた」
がたんとシンジは、ふてくされて椅子に座った。
ふと途切れてしまった言葉に、マナは泣き真似をやめて声を掛ける。
「ねえってばぁ、怒っちゃったぁ?」
シンジは頬杖をついて反対を向いている。
「シンちゃんてばぁ、ちょっとしたヤキモチじゃない…」
シンジの肩が震えている。
くっくっくっくっく…っと、笑いで体を揺すっている。
「あーーー!、騙してるぅ!!」
くすっとシンジは笑みを漏らした。
「…マナだってよく僕を騙すじゃないか」
一応悪びれた感じで振り返る。
ぶうっと膨れてるマナ。
「大体さぁ、そんなに僕のことからかってて、楽しいの?」
「うん、とっても!」
すっごい笑顔で返された。
「はぁ…、酷いや、どうして僕ばっかり」
「そんなの、シンちゃんだからに決まってるじゃない」
と言って首に抱きつく。
はぁ…、またもシンジはため息をついた。
「それが嫌なら…」
そんなシンジの耳元で囁く。
「もっとかまって欲しいなぁ、なんて…」
「うわっ!、耳に息吹き掛けないでよ!」
シンジが突き飛ばすよりも早く、マナはサッと身を翻した。
「シンちゃん純情ー!、今朝だって女の子といちゃついてたくせに」
ガタン!っと机が吹っ飛んだ。
「なにぃ!」
「うわあっ、鰯水君、いったいどこから…」
お約束通りに頭を打っている。
「またしても貴様、なんてふしだらな奴なんだ!」
それでも糾弾は中止しない。
「ち、違うよ、誤解だよ、ねぇ話を聞いてってば…」
「うるさい!、あっやっなっみっさーん!」
ちっとも待たずに駆け出していく。
「…い、鰯水君」
空を切る手がかなり空しい。
「まあ、そう心配する事も無いよ」
「カヲル君…」
一応フォローらしいのだが…
あまりに遅いよ。
だったら弁護してよとかなり言いたい。
「一応みんな、薫には会った事があるからね?、説明すれば分かってもらえるさ…」
「そうかな?」
「そうだよ、それに…」
どんっと突き飛ばされるカヲル。
「ここにはあたしが居るもんね?」
踏みっとカヲルの頭を踏み付ける。
「いや、居るって言われてもさぁ…」
足元でもがいているカヲルが奇妙で、マナにどう言えばいいのか分からない。
そこでマナは提案する。
「誤解じゃなくて既成事実コースとか…」
体を乗り出して胸を強調。
「ここ教室なんだけど…」
クラスの視線に、ひそひそと言う声が混じり出す。
よし、みんなの視線が集まった所で…
「じゃあ屋上に行く?」
マナは爆弾を投下した。
ぼんっと赤くなるシンジ。
「そ、そんなのできるわけないじゃないか!」
「え?、どうして?」
「だだだ、だって…」
シンジは赤くなったままうつむく。
「僕たち、別に付き合ってるわけでも無いし」
言い辛いが、はっきり言わなくちゃならない、でも…
「うん、そうだけどね?」
マナは平然とその言葉を受け止める。
あれ?っと、シンジはおかしく思った。
…泣き出されたらどうしようかと思ったのに。
「でもそんなの関係無いし」
マナは実にあっさりとしたものだ。
「でもシンちゃん、どうしてそんなことが関係あると思ったの?」
「え?」
これには、シンジはすっかり戸惑った。
「シンちゃんの気持ちは関係無いの☆、あたしが全部を上げたいくらい、シンちゃんのことが好きなだけ…」
うわわわわ…
この言葉には、シンジのみならずクラス中でざわめきが起こった。
「ままま、マナ!?」
シンジの視線がマナとクラスメート達の間をふらつき回る。
「いつでもオッケーの三連呼って…」
ぐいっ!
「あまりシンジ君をからかわないで欲しいね?」
「カヲル君…」
力づくで、カヲルはマナの足を持ち上げる。
シンジはちょっとだけほっとした。
「シンジ君の汚れを恐れる純白の心は、十分好意に値する物…、違うのかい?」
マナはぐりぐりと足を動かしながら挑発する。
「ひょっとして、妬いてる?」
「違うよ」
マナの問いかけに、余裕の笑み。
「その気になったらいつでも肌を重ねるさ…、男と女、僕にとっては同じだからね、その愛し方は」
きゃーーー!
黄色い悲鳴が廊下を貫く。
と同時に、シンジを含めた男子生徒が、何故だかお尻を押さえて引きまくった。
「やだ…、シンちゃんってそんな趣味が」
マナも引いてはいるのだが、でも二人を見る目がちょっと微妙だ。
ついでに頬も微妙に赤い。
「シンジ君ならいつでも僕の愛を受け止めてくれるさ、ね?、シンジ君」
「ちょ、ちょっと待ってよ、なんだよそれ!」
抗議の声を上げるのだが、シンジの顔もちょっと赤い。
「嫌なのかい?、僕のことは…」
おかげでカヲルの目には色がある。
シンジもちょっとその気に…
「って、そうじゃなくてさ!」
一生懸命否定する、しかし…
「嫌いじゃないなら、良いじゃないか…」
「マジなの?」
シンジは確認せずに居られない。
「僕はいつでも本気だよ」
カヲルの答えは決まっている。
「やめなさいっての!」
ずがん!
カヲルの股間を、背後からマナが蹴り上げた。
悶絶状態、男子は後ろに続いて前も押さえる。
「シンジ君、これで僕は受けに回るしかないようだよ…」
「結構余裕あるじゃない…」
マナは一応踏み付けてとどめをさした、ゴキブリのように潰れるカヲル。
「カヲル君、調子に乗るから…」
「で、話を戻したいんだけど?」
いいかげんシンジはうんざりとしている。
「まだぁ?、今日は何だかしつこいね…」
「本気なんだもん!、シンちゃんのこと…」
そうなんだ…
そのこと事態に嫌な気はしない。
でも、みんなの目が…
冷や汗ものだ。
シンジはその事の方が気になっていた。
「あの子とはなんでもないの?」
マナは一応確認する。
「…うん、薫さんが好きなのは、カヲル君だから」
「…変わってる」
マナは一刀両断した。
「かもしれない」
シンジの同意に、カヲルは抗議の痙攣を起こす。
「まあ信じてあげるけど…」
それを封じるマナ。
「…けど?」
「うん、マユミも見ちゃってたから」
「なにを?」
「今朝の抱きつき攻撃」
シンジは脇目も振らずに鞄をつかんで、逃走の決意を固めていた。
[BACK][TOP][NEXT]
新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
Q'はGenesis Qのnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
内容の一部及び全部の引用・転載・加筆その他の行為には
作者である私と原作者naryさんの許可または承認が必要です、ご了承ください。
本元Genesis Qへ>Genesis Q