NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':58 


「いかぁりくん☆」
 唐突にシンジの机に両手を突く。
「な、なに?、マナ…」
 んふふふふっと、実に嫌な笑いを浮かべている。
 碇君だって…
 その口調に不安を募らせるシンジ。
「あのね?、これ!」
「へ?」
 紙切れ一枚。
「これって!?」
 そこにはこう書かれていた。
【第一回、ミス第三高校コンテスト】と。


GenesisQ'第五拾八話
エンジェリックインパクト


「つまらんなぁ…」
 ぼうっとしている加持。
「なにか面白いこと、ないかなぁ…」
 ぱらぱらとめくっているのは、とある農業組合発行の冊子だ。
「二学期か…、体育祭と文化祭まではまだ日があるし…」
「校長!」
 ガチャッと勢いよく扉が開く。
 校長室に飛び込んで来たのは教頭だった。
「か、加持校長!」
「どうしたんですか?、息を切らせて…」
 素早く足元に冊子を捨て隠し、威厳ある態度で迎え入れる。
「こ、これを…」
 見せたのはマナが持っていたのと同じチラシだった。
「…ミスコン?」
「そうです!、学園内で破廉恥な!!」
 まてよ?
 しかしそんなチラシが配布されたと言う情報を、加持は察知していない。
 おかしいな、教頭の目にとまるぐらいなら、かなり大沙汰になっているはずだが。
「このチラシは?」
 加持はその点を訝しんだ。
「生徒会が準備している所を押さえました」
「ふむ…」
 また監視してたのか…、困ったもんだが、面白いかも…、いやまてよ?
 バン!
 更にもう一人飛び込んで来た。
「こ、こら待ちなさい!」
 数人の教師を引きずり、息を切らせて飛び込んで来たのは、生徒会長の七瀬だった。
「ミスコンが中止ってどういう事ですか!」
 ダンッと踏み込む。
 女ながらに身長170センチは大きい方だろう。
「納得のいく説明をお願いします!」
 加持の鼻面にまで勢い込む。
 バスケでもやってそうだな…
 カッコいい子だと言うのが第一印象。
「七瀬!」
「まあいいじゃないですか、教頭」
 加持は教頭を抑えてから柔らかく微笑み、居住まいを正した。
「で?」
 それだけで雰囲気ががらりと変わるのは加持だからだろう。
「あ、はい…」
 呑まれる七瀬。
「あの…、ですね?」
「ミスコンだね」
「あ、はい!、そうです、どうして…」
 先程よりは感情を抑えてしまっている。
「悪いけど、俺もいま聞いたばかりでね?、詳しいことは知らない」
「なら!」
「しかしだ!」
 大声で先を塞ぐ。
「俺も反対する」
「理由を教えて下さい!」
「君は相田ケンスケと言う少年を知っているかい?」
 ギクッと固まる。
「その様子なら説明はいらないな?」
 どんっとどでかいファイルを持ち出す。
「これ?」
「近隣の美少女ファイルだ」
「校長!」
 教頭が悲鳴のような非難の声を上げるが、まるで無視だ。
「新設校であるうちには3年生は少ない、美少女と呼ばれるのはわずかに一人か二人、2年生もだが、1年生にまで下りなければ勝負にならない」
「…よくおわかりですね?」
「惣流、綾波、信濃、霧島辺りかな?、参加をこじつけられると思うか?」
「それは先輩命令で!」
「無理だな、俺はあの子達を良く知っている、動きゃしないさ」
 くっと歯噛みする七瀬。
「せっかくの…、生徒会初のイベントなのに…」
「そう悲観する事もないさ」
「気休めはよして下さい」
 半ば自棄気味に吐くセリフに肩をすくめる。
「まあありがちだからな?、餌でも用意してあれば盛り上がるだろうが…」
「餌…、ですか?」
「そうだな?」
 笑いながら適当を言う。
「古来から女の子は贈り物に弱いと決まってる…、っとこれは失言だったかな?」
「いえ…」
「まあそれで釣って見た所で、他の子達はどうする?」
「どうって…」
「エントリーされなかった子は?、何処に参加すればいい?」
 くっと唇を噛む、反論できない。
 まさか女の子に投票する気は起きないだろう。
「面白半分、冗談半分、全員参加が基本じゃないのか?」
「校長!」
 がるるるっと教頭が唸りを上げている。
「はは…、まあそう言うわけだ、せめてこれぐらいなら…」
 キュキュッとチラシにマジックで書き入れる。
「面白かったかも知れんが?」
「…これ、ですか?」
「他にこういうのも…」
「あ、なら…」
「そう来るか?」
「コホン!」
「「あ…」」
 教頭のワザとらしく咳払いに、二人とも動きを止める。
「ま、まあそういうところだ」
「はい、わかりました」
 どこかさっぱりとした感じに加持は少し笑った。
 七瀬も軽く微笑み返す。
「あたし、校長が先生みたいな人で良かったと思います」
 クルクルとそのチラシを丸める七瀬。
「そうかい?」
 悪い気はしない加持であった。






「シ〜ンジ?」
 テレビを見ていたシンジは、キョトンとした顔でポッキーを噛み折った。
「なに?」
「んふふぅ」
 なにやら嫌らしい笑みを浮かべて背中に抱きつく。
「あ、あの、アスカ?」
 家に居る時のいつものラフさ。
 シャツ一枚でシンジを変に誘惑する。
「…どうしたのさ?、なんだか変だよ?」
 気が気でない、二人っきりならまだしも、アスカの向こうには同じように異様な笑みを浮かべたレイとミズホが存在している。
「シンちゃんも見たんでしょ?、あのチラシ!」
 真横からしな垂れかかるレイ。
「わたしが一番ですよね?、シンジ様ぁ」
 ゴロゴロと膝の上で喉を鳴らすミズホ。
「あ〜、また張り合ってるのぉ?」
「シ・ン・ジ・☆、答えないとどうなるか分かってるでしょうねぇ?」
 ニコニコと言われたってさぁ…
「もしかして参加するの?」
 後頭部をぱこんとどつかれた。
「出るわけないでしょうが!」
「そうなの?」
 顎をさするシンジ。
「バカ共の前に出たってしょうがないわよ」
「シンちゃんが比べてくれればそれで決着が付くんだしぃ」
「ですぅ」
 その下では頭を押さえている涙目のミズホが居る。
 ですぅって、あのねぇ…
 三人に引っ付かれているというのに、暑さとは別の冷たい汗が吹き出し始める。
「それでまあ、シンちゃんなら誰に投票してくれるかなって…」
 ぐいっと引っ張る。
「ね?、シンちゃんってアスカみたいに一般ウケするのって嫌だもんねぇ?」
「一般ウケってどういう意味よ、一般ウケって!」
「どういうって、言葉通りに決まってるじゃない?」
 んふふんっとレイ。
「なんですってぇ!?」
「アスカって得よねぇ?、胸もお尻も大きくて、みんなにやたらともてるんでしょ?」
「なによそれヒガミ!?」
「でもでもぉ、それならレイさんも同じですしぃ」
「ええ〜!?、あたし全然好きって言ってもらったことないのぉ☆」
 嘘つき…
 いやんいやんとぶりっ子するレイに、冷たい視線が突き刺さる。
「それに比べましてもぉ、わたしはいつもシンジ様に…」
「あんたのボケ妄想はどうでもいいのよ!」
「ふええん、酷いですぅ!」
 そのままシンジの胸元で泣き崩れる。
「だからそういうことするんじゃないわよ!」
「ふええええーん、シンジ様ぁ!」
 明らかにワザとの泣き真似だ。
 レイの後頭部にお怒りマークが点滅する。
 バゴン!
「はう!」
 頭頂部への空手チョップ。
「れ、レイ!?」
「殲滅完了!」
「あんたちょっと酷いわよ!?」
 二人でミズホの身体を支える。
 ミズホはぐったりと気を失っていた。






 翌日。
「何よコレぇ!?」
 素っ頓狂な声を上げるアスカ。
 ブルブルと震える手で持っているのは、生徒会から正式にまかれたビラである。
 そこにはこう書かれていた。
 大ウサギ狩り大会と。







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