NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':60 


 ふふふふふふ…
 見上げる、そこにかかった部屋の名前は、確かにシンジ達の部屋の名前だ。
「加持さんって、時々いい人ですぅ」
 失礼な事を言いながら部屋の中へと侵入する。
「!?」
 部屋には布団が二組、くっつけて並べてあった。
「こ、こんなことをして!」
 シンジ様の暴走を誘うなんてぇ!
 慌てていそいそと布団を離す。
「ふう、これで完璧ですぅ」
 部屋の両端に離しておく。
 かなり不自然な敷き方だ。
「えっとぉ…」
 ミズホは収納タンスの中を覗いた。
 何も入っていない、レイもシンジも服はバッグに放り来んでいた。
「ここに隠れて、シンジ様を取り押さえ…」
 ごめんミズホ、悪かったよ…
 ぶえええええーん、ですぅ!
 ですぅの部分で嘘泣きとわかる。
 なんでも言うことを聞くからさ、ね?
 ホントですかぁ?
「あれとこれと…」
 でへっとだらしなく緩むミズホ。
「ふきゅう、でわ!」
 内側からなので、戸を閉めるのに苦労した。


「あ、じゃあ…」
 お風呂を出てシンジを探すと、女の子となにやら話し込んでいるようだった。
 去っていく女の子を怪訝そうに見送るレイ。
「なに?」
 見覚えのある顔だった。
「うん…、時間があったら、後で来て欲しいって…」
「え!?」
「あ、ち、違うよ!、そうじゃなくて、なんだか相談に乗って欲しいって」
「相談?」
「レイとなにか話したんでしょ?、聞いてもらい事があるんだってさ」
 ああ…
 誰だか思い出した、お風呂場で話し込んでいた女の子だ。
「なんだろうね?、よくわかんないや…」
「はは…」
 何となく分かるのでコメントは控えておいた。
「ねえシンちゃん?」
「ん、なに?」
「早く戻ろ?、冷めちゃうよ」
「うん…」
 パタパタと先に行く。
 レイってほんとにああいう恰好似合うよな?
「待ってよぉ!」
 シンジも慌てて後を追った。


「ええ…、しかし過剰な演出は…、わかっています、では」
 通信を切る。
「最近、不確定要素が多いよなぁ?、さてと…」
 備え付けのテレビに電源を入れ、隠されていたスイッチを押す。
 ブゥン…
 映し出されたのは、シンジ達の部屋の様子であった。
 加持がミズホを追い出したのは、覗きのために邪魔だったからである。
「さ、シンジ君、期待しているからな?」
 既にビールは開けられていた。


「あれ?」
「なに?」
 二人で布団を見る。
「変な並べ方だよね?」
「そうね?」
 レイはずずっと布団を寄せた。
 あああああ!、何考えてるんですかぁ!
 シンジは「ん?」っと首を捻った。
「…レイ、何か言った?」
「ううん?」
「そう…」
「なに?」
「空耳かな?、って、そんなに引っ付けてどうするのさ?」
 すき間もなくくっつけられている。
「だって…、ね?」
「ね?、じゃないだろ…、まったく」
 ぶちぶちと引き離す。
「シンちゃあん!」
「あのねぇ…」
「シンちゃん、ちょっとそこに座って!」
 レイはぼすっと布団の上に座り込んだ。
「え?」
「良いから早く!」
「う、うん…」
 素直に正座して視線を合わせる。
 レイは何秒か睨み付けた後、ようやくシンジに問いただした。
「…シンちゃん、そんなにあたしと寝るの、嫌?」
「へ?」
「だから!」
「あ、わ、わかってる、分かってるから…」
 怒ることは無いよなぁ…
 ついついため息を漏らしてしまう。
「なに?、その不満そうな顔…」
「だって…」
 すねる。
「くっついちゃったら、眠れないじゃないか…」
「え?」
「そんなの…、恥ずかしいし」
 かーっと赤くなるのが分かった。
「シンちゃん…」
「だ、だからね?、嫌いじゃないんだよ、だから余計に…」
「好きって事?」
 あっと、シンジは言いよどんだ。
「…うん、そういうこと、になるのかな?」
 何を思ったのか?、レイは立ち上がると電気を消しに動いた。
「れ、レイ!?」
 急に真っ暗になって不安になる。
「いいの!、これなら恥ずかしくないでしょ?」
「うん…」
 また正面に座るのが分かったが、確かに顔が見えないので気は楽だ。
「シンちゃん?」
「なに?」
「あたしのこと、好き?」
 ええええ!?
 ガタン!っとラップ音がした。
「い、今の音っ、何かな!?」
「いいから!」
 レイはそちらに集中している。
「う、うん…」
「はっきり答えて!」
 テンションが少し上がっている。
「…好きだけど」
「それって、女の子だから?」
 へ?
 一瞬意味が分からなかった。
「…当たり前じゃないか」
 わからないので、そのまま答える。
「そ、よかった!」
「うわ!」
 飛び付かれて押し倒される。
「れ、レイ!?」
 ふええええええ!?
 ここに居ない子の泣き声が聞こえる。
 二人は同時に、驚いた顔を見合わせた。


 ふえええええーーーー!
 押し入れの中でもがくミズホ。
 抱き合う二人。
 見つめ合う瞳。
 このままだと一線を越えてしまいそうだ。
 だ、ダメですぅ!、でもでもぉ…
 泣き出しそうになりながら、だがこの雰囲気を壊す勇気はどこにもない。
 うわ、うわぁですぅ…
 両手で顔を覆い隠す。
 シンジ様ぁ…
 指の間から確認する。
 もぞもぞと動く影が、ミズホの主観的EYESによって補正されて投影される。
 シンジの手が背中にかかり、何かを探っているように見えた。
 頭のシルエットが一つになっている。
 そんなことまで、ふわわわわわ!
 どうやら好奇心が勝り始めたようである。


 一方、建物の外から一室一室確認している二人が居た。
「まったく、こんな手間までかけさせて!」
 怒っているのはアスカだ。
 その体はカヲルによって支えられている。
「本来…、僕の力はこんな事のためにあるわけではないんだけどね?」
 空中に浮かんでいる二人。
「あんたがただの人間じゃないことはわかってるんだから…」
 それなら利用するまでである。
「それはそうだけどね?」
「あんたはただの人間じゃなくて、出歯亀の得意な人間なのよ」
 それがアスカの分析であった。


「今の…、ミズホの…」
 レイもこっくりと頷いた。
 シンジは驚いているのだが、レイは悟ったような表情をしてしまっている。
「やっぱりかぁ…」
「やっぱりって?」
 レイは起き上がるように身体を離した。
「やっぱり、ミズホやアスカ、みんなのこと気にしちゃってるのかなぁって…」
 シンジも「ああ…」っと納得した。
「だから聞こえるのかな?」
「聞こえたような気がしたのよね?」
 レイは力を抜いて、シンジの上に被さった。
「ねえシンちゃん?」
「なに?」
 面倒なので、レイの背中にそのまま手を置く。
「この浴衣…、薄いね?」
「うん…」
 お互いドキドキしてしまっている。
「いっつもそうやって、気付かせるよね?」
「そっかな?」
「うん…」
 お互い体温上昇中。
「だってシンちゃん…」
「僕だって…、男のつもりなんだけど」
 腕に力がこもるのが分かった。
 シンちゃん!
 意を決する。
「ああいうの、見ちゃうとね?」
「へ?」
 窓の外を見やるレイ。
 ほぼやっぱりと言うか、予想の範囲内と言おうか?
 爪で引っ掻き、ガラスに切れ目を入れている、アスカの姿がそこにはあった。



続く







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