NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':69 


「データの洗い出しはどうなっている!」
「ハッキングは一系統のみですが、防壁は次々と破られています」
 今だネルフでは怒声が飛んでいる。
「目的は何だ?」
「E関係にハックしている模様!」
「まずいな…、碇は?」
「第三者に介入要請を行うとの事です」
「第三者?、赤木君か…、いや、違うな」
 碇…、何を考えている?
 シンジを危険に晒し、本部を窮地に追い込んでまで。
「何を求めるつもりだ、碇…」
 冬月は不安に似た焦燥を感じていた。


GENESIS Q'69
「マジンサーガ」


「ん〜、やっぱちゃんと話した方がいいのかも」
 レイは授業中ずっと悩んでいた。
 そして終業時間になって思い立つ。
「決めた!、シンちゃん、今日ちょっと用事を思い付いたから…」
「そう?」
「じゃ、今日は久しぶりに二人っきりね?」
 アスカの一言にムッとする。
「どうして、そう言うこと言うの?」
「朝の仕返しに決まってるじゃない」
「いいもん、シンちゃん今日も待っててねぇ?」
 べぇっと返事を返したのはアスカだ。
「晩もあたしが貰うわよ!、さ、行くわよシンジ?」
「あ、うん」
 レイを見送ってから、遅れて教室を後にする。
「さあってと、ミズホも先輩につかまってるし、どっかに寄ってくわよ?」
「…奢らないからね?」
「なによぉ、あんた少しは悪いって思わないわけ?」
「なにがさ?」
「レイにばっかりサービスしちゃって…」
「さ、サービスって、違うよ!、そんなんじゃなくて…」
「嘘よ、あんたそうやって焦るから誤解されるのよ、わかってんの?」
 何の誤解だよ、なんの…
 はぁっと溜め息を吐きつつも、左腕の感触に気を取られる。
 アスカと極自然に腕を組んでいた。
「下にみんながいるってのに、そんなとこであんたが何かする分けないじゃん」
「何だよもぉ…、僕だって男なんだから」
「だから?、ん?、なによ?、言ってみなさいよ?」
 ううっと、がっくりしてしまう。
「ごめんなさい…」
「だからあんたはバカなのよ」
 うかれているのか?、アスカはかなりの上機嫌であった。


「何処に行くつもりだい?」
「カヲル…」
 キクの通学路を辿っていたレイは、途中でカヲルに出くわした。
「いいでしょ別に…」
「キクちゃんに会いに行くのかい?」
 キッとレイは睨み付ける。
「何を言うつもりだい?」
 今度は唇を噛み締める。
「…もう遊んであげられない、そう伝えるのかい?」
「…違う」
「じゃあ、何を話すつもりだい?」
「わからない…、けど、このままにしたくないの」
 カヲルは小さく溜め息を吐く。
「…残酷だね?、君は」
「でも、あたしにはシンちゃんの方が大事なんだもん」
「だからといって傷つけることは無い、そうじゃないのかい?」
「これ以上は、きっともっと大きな傷になっちゃうから…」
「だから恨まれるのかい?」
「キクちゃんに必要なのは、本物の家族でしょ?」
「僕達にシンジ君が現われたように?」
「そうよ…」
「でもだめだよ」
「なんで?、どうして!?」
「キクちゃんなら…、今日は寄り道をしに行ったようだからね?」
 だったら早く言ってよもう…
 レイはがっくりと肩を落とした。


「なぁんかシンジとこうして寄り道するのって懐かしいわね?」
 ペロペロと季節はずれのソフトクリームを舐めている。
「そう?」
 シンジはホットの缶コーヒーだ。
 まだ日が傾くには早い時間。
 二人は遠回りする道を選んでいた。
 黙って歩いているだけでも、わりと良い雰囲気がに包まれている。
「…なに笑ってるのさ?」
「シンジも慣れたもんだと思ったのよ」
「なにがさ?」
 アスカの右腕はシンジに絡んだまま、ソフトクリームを口元に上げている。
 アスカはそれをシンジに突き出した。
「気付いてないの?、あんた女の子用のペースで歩いてんのよ」
「ふぅん…」
 そのソフトをペロッと舐め取る。
「だって合わせないとアスカが引っ張るじゃないか」
 腕で。
「でも今日は一度も引いてないでしょ?」
 少しまじまじとした目で足元を見る。
「なによ?」
「うん…、こういうのも気をつかってる事になるのかなって…」
「あんたバカァ?、こんなの出来て当然じゃない」
「そうなの?」
「そうよ!、こんなの優しさの初歩の初歩よ」
「…優しいって、こんな事でもいいの?」
 残ったコーンをカリカリとかじる。
「相手に無理をさせない、気をつかわせないってのが優しさの基本でしょ?」
「うん」
「それが自然に出来てるから、あんたは優しいって言われるのよね…」
 シンジはどう返していいのか言葉に迷った。
「でもだめよ?、優しいなんて言われようとしちゃ」
「どうして?」
「なんだか良い子になろうとしてるのって、嫌らしくて嫌じゃない…」
「そっか、そうだね?」
「それに!」
 急に明るい声を出す。
「あ、こいつ気をつかってくれてるって気がつくから、どんどん好きになっていくのよ!」
 ふとした弾みに気がつくからこそ。
「ねえ…」
「なに?」
「あんた、あたしに何か言うことは無いの?」
「え?、えっと…」
 急な展開に戸惑ったりする。
「アスカのCD…、返してないこと?」
「違う」
「じゃあアスカのお気に入りの服にジュース引っ掛けたこと?」
「あんたねぇ…」
「あ、じゃ、あれでしょ!、この間レイの裸見ちゃったこと」
「なんですってぇ!」
 うひゃうっと身を庇う。
「ご、ごめん!」
「何でそんなの見るのよ!」
「だだだ、だってさ」
「だってもくそもなーい!」
 …言い訳ぐらいさせてくれてもいいじゃないかぁ。
 アスカは何を言わせたかったのか?
 結局うやむやになってしまった。


 キクはとてとてと土手沿いに歩いていた。
 何故そうしたのかは分からない。
 あえて言うのなら、ここへ向かうと勾玉の光りが強くなる様な気がしたからだ。
「何か居るの?、この先に…」
 じっと見るが、先の方にはこの大きい河を渡るための橋があるぐらいのものである。
 恐い…
 不意にキクは違和感を感じた。
 これはなに?
 誰か居るの?
 誰?
 誰もいなかった。
 普段なら犬の散歩をするおばさんがいてもおかしくは無い時間帯なのに。
 誰もいない。
「なに?」
 キクはポケットに入れていた勾玉を取り出すと、不安を取り除くためにギュッと握った。
 ドクン…
 突如、何かの鼓動が聞こえた。


「嘘でも好きって言えないもんかしらね?」
 川岸はさすがに風も冷えていて体温が奪われる。
「一生で一人にだけ言うつもり?、愛してるって」
 ぶるっと震える。
 シンジはより密着するように、組んでいた手をぎゅっとポケットへ突っ込んだ。
「そんなことはないけどさ…」
「ふぅん…、浮気するつもり?」
「あ、いや!、そう言うつもりじゃなくてさ!」
「じゃあどういうつもりなのよ?」
 ギロッと睨まれる。
「だって…、僕が言っても、言い返してもらえないかもしれないし」
「あんたねぇ…」
 呆れ返る。
「あたしが断ると思ってんの?」
 頬が赤いのは、なにも寒さのせいだけではないだろう。
「でもさぁ…」
「ああもうグジグジグジグジと!」
 キレ気味。
「なんでそうはっきりしないのよ!」
「しないんじゃなくて、できないんだよぉ…」
「余計に情けないじゃない」
「アスカはいいよぉ…、絶対に振られないって自信があるでしょ?」
「当ったり前じゃない!、どこのバカがこんな美人を振るって言うのよ?」
「見えないところに良いとこがあるんだって言われてもさ?」
「ま、将来が暗いのは確かね?」
「嫌なこと言うなよぉ…」
「せいぜい平社員が限度じゃないの?」
 小馬鹿にした笑み。
「そんときはあたしが養ってあげるわよ」
「で、僕が家事をやるの?」
「練習しとけば?」
「嫌だよそんなの…」
 シンジの苦笑いにアスカは曇る。
「そんなに、嫌?」
「へ?」
 アスカの潤んだ瞳にドキッとした。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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