NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':82 


「くるっく〜…」
 ハトだかニワトリだかよくわからない声真似をして突っ伏すマイ。
「マイちゃん大変だったね?」
「大丈夫だった?」
 学校、夕べのことは「テロリスト」の一言で片付けられている。
「ん、家がちょっと壊れちゃっただけ、平気だよ?」
 それでもややお疲れ気味のご様子だ、が、それがまた幼さを強調している。
 皆もそれを感じるのか?、何故か口調が「お兄さんお姉さん」っぽくなっていた。
「でも怪我が無くて良かったねぇ?」
「ありがとう、ジム」
「マイ、マイ!」
 女の子がツンツンと突っつく。
「ジャン先輩、来てるよ?」
「え?」
 っと廊下の方を見ると、長い金髪を一括りにまとめた、やたら目つきの悪い少年が居た。
「先輩?」
 だがマイの顔を確認すると、そのまますっと廊下に消えてしまう。
「どうしたのかな?」
「心配だったんじゃない?」
「そうそう、マイってなんだか危ないもんな?」
「ぶぅ〜、なにそれぇ!」
「飴玉なんか上げると幸せそうに着いて来そうってこと!」
「マイ子供じゃないもぉん!」
 だがそうやって暴れる姿も、やはり何処から見ても子供である。
「ぶぅ!」
 マイは再び机に突っ伏そうとした。
 でも…
 なんだかさっきの先輩の様子が気にかかる。
 妙に脳裏をちらついて離れない。
 ガタン!
 気がつけば席を立ってしまっていた。


「せぇんぱぁい!」
 元気よくブンブンと手を振って追いかける。
 やや面倒臭そうに、だが放ってもおけないと言った感じで彼、ジャンは振り返った。
「せんぱい、なに?」
「なんでもない」
 そっけない、が、邪険にしているわけでも無い。
 だからマイは首を傾げる。
「悪かったな」
 ポンとマイの頭を叩く。
「…先輩、どっか行っちゃうの?」
 ぴたっとその足が止まる。
 人気の多い廊下だというのに、どこかシンとした空気に包まれる。
「ま、ちょっとな」
「ふぅん…」
 あれ?
 その振り返り気味の表情と目に、マイはどこかの記憶とデジャブを感じた。
 あ…
 あの獣だ。
「じゃな…」
「はぁい!」
 マイは元気に手を振ると、バタバタとまた小走りに教室へ戻っていった。
 もちろん、今日はそのまま早退してしまうつもりであった。






「ま、あなた達のことはいいわ、気にしてないから」
「しないん、ですか?」
 ひらひらと手を振るリツコに、サヨコは「何故?」、と小首を傾げた。
「…聞くとまたややこしいことに巻き込まれそうだもの」
 こめかみに青筋が浮かぶ。
「で、母さん…、何か手がかりは出たの?」
「あのリスの「元々」の遺伝子を調べたんだけど…、おそらくカナダの生まれね?」
 ガタン…
 リツコは立ち上がった。
「あら、どうしたの?」
「帰るのよ、寒いの嫌いだから」
「その歳でもう皮下脂肪の減衰?、やぁねぇ老化って」
 ヒキ…
「そうね、暑い所だと化粧が『溶けちゃう』誰かさんとは違いますから」
 ピク…
「あ〜ら?、まるで暑いところなら行ってもいいって口ぶりね?」
「寒い所よりはマシだもの」
「じゃ、問題無いわね?」
「…なに?」
「博士、家の修繕とその間のホテルの確保…、なにやってるんですか?」
「いいのよ…」
「ほうっておいて…」
 部屋の中央で両手を組み合い、ぎりぎりと押し合う醜い親子。
 リキはちらりとサヨコを見たが、あまり助けてくれそうに無いので溜め息を吐く。
「はぁ、それから、例のリスですが」
「…何かわかったの?」
「遺伝子改造を施したのはアーカムだそうです、アーカム研究所」
「「アーカム!?」」
 みごとなユニゾンで切り換える。
「じゃあ夕べのはスプリガン?」
「なんですか?」
 気にするサヨコ。
「ロストテクノロジー…、失われた科学の産物を独裁的な悪に渡さないと言う名目で、貴重な遺産を独占あるいは荒らしては破壊して回っている独善的集団よ?」
「なにしろ名目が立派なだけにタチが悪いわ?、その上、拾った遺産で武装もしている、最近では米軍とも事をかまえ出してる、いいえそんなことよりも…」
 リツコはぎゅっと拳を握る。
「あいつらは…、あいつらは自分達が理解できないからって、それを破壊したのよ!、わたしにっ、見せもせずに!」
 自分ならなんとかできたと言う自負があったらしい。
「無知で無能で知能指数がまるで足りてないくせにっ、英知の塊を隠蔽、秘匿、それもできなくなったら破壊しやがったのよ!、あのどちくしょうどもわぁあああああ!」
 マントのごとき白衣の内側で何かが激しく燃えさかる。
「あのぉ…、そのアーカム財団ってところからお電話です」
 サヨコはやや迷い気味に受話器を差し出した。
 ギン!っとリツコの目つきが鋭さを増す。
「…例の遺骸、取り返したいんだけど、と言うことらしいわ」
 応対に出たナオコが伝える。
「行ってやろうじゃない、いいえ、なんとしても目にもの見せてくれるわ!」
「協力者の態度じゃないわよ?、それ…」
「奴等に自分達の浅はかさと言うものを見せつけてやるわ!」
マイも行くぅ!
 イってしまっているリツコ以外の面子が見たそこには、決然とした…、つもりのだだっこのようなマイが居た。


 さて、その頃この二人はと言えば…
「うう、盆地胸のどこが悪いのよぉ…」
「くっ、この俺が、この俺が一人も捕まえられんってぇのはどういうことだ…」
 とあるバーで飲み潰れる寸前、結構元気にやっていた。



続く







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