NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':84 


 リツコ達が謎の襲撃者に喘いでいる頃、密林の上をこれまた謎の空挺部隊が飛んでいた。
「降下地点です」
「マクドゥガル大佐!」
「では行きましょうか」
 ハッチを開き、重装歩兵が飛び出し、パラシュートを開く。
 六つ足の戦車に似た節足歩行兵器が降下。
 最後にマクドゥガル、あの帽子を被った男の子が、遊びに来たような身なりで宙に踊っていった。


Q_DASH84
「トライガン」


 研究所への苛烈な攻撃は続いていた。
「おかしいわね?」
 敵の展開パターンをリツコは計算していた。
「なにがです?」
 覗き込むリキ。
「退路、いいえ脱出口を塞いだのに入って来ない、ガスも細菌兵器も使わない、変だわ?」
「うちの研究所はそれぐらいの対策、していますよ」
「とことん無能な人ね?、あなたって」
 え?、っと無能な所長は返事を返す。
「ここの設備と情報、むこうにダダ漏れってことなんじゃないの?、それって」
「そ、そういうわけでは…」
 所長を見捨てて、話し相手をリキに変える。
「取り囲んでおきながら入って来ない、制圧するでもなし、なんなの?」
「どうなんでしょうね?」
「さっぱりよ、わたしは戦闘のプロじゃないもの」
「じゃあプロに聞きましょう」
「そうね?、母さん、ここは頼むわよ?」
「ええ」
 と言ったナオコの姿は見えない。
 所長室には様々な機械が持ち込まれ、ほぼ臨時の作戦司令室としての体裁を整えつつあったからだ。






「はい、アメあげる!」
「アメってなぁ…」
 ライフルの手入れをしながら隣の無邪気な少女に困り果てる。
「いらないの?」
「いらねぇよ」
「うきゅう…」
「わぁった!、貰ってやるから泣くな!」
「やったぁ!、はい」
「はいって…、なんだよ?」
「あーん」
「っく…、おい、ねぇちゃん!、何とかしてくれ」
 泣き声を上げて、ジャンは笑いを堪えていたサヨコ他警備部隊の一同を睨み付けた。
「マイ?、お仕事の邪魔しちゃダメでしょ?」
「…マイ、じゃま?」
「指を咥えるな、上目づかいになるな!」
「マイ〜、そんなところをリキが見たら自殺しちゃうわよ?」
 っと漏らしたサヨコの肩に手が置かれる。
「はい?、あらリツコさん」
「今まさにそこで首を吊ろうとしてるから止めて来てくれない?」
「え?、あ、リキ!」
「あの踏み台にしてるの弾薬なのよね…、蹴りどけた拍子に爆発、なんてことになったら白衣が汚れるわ」
「ダメよリキ!、マイも止めて!」
「え〜?、だってカスミが言ってたよ?、リキはああやって気を引こうとしてるんだから、一々かまっちゃダメだって」
 ズキっとリキの胸に楔が打ち込まれる。
「…犬みたいな奴なんだな?」
「お前に言われたくないわっ、このロリコン野郎!」
「誰がロリコンだぁ!?」
「ま、マイのきゅうとな足が、ぷりちぃな頭が、こんな奴なんかにぃいいい!」
「ロリコンはどっちだ!」
「リキって、ストーカーみたいで、嫌っ」
「ま、マイ!?」
 プイッとそっぽを向くマイ。
「つい本音が漏れてしまったようね?」
「リキったらもう…、ごめんなさい?、わたしじゃフォローもしきれないわ」
「って言うよりも、面倒見切れないとはっきり言って上げた方がいいわよ?」
「憐れみの目で見るなぁあああああ!」
「じゃあ笑ってやるよ」
「ま、不健全なほとばしりは置いておいてだ」
 ヤマモトが研究所内の地図を開く。
「外は?」
「動かん」
 ドカッと腰を落として息をつく。
「ああ、ありがとう」
 無言で差し出されたコーヒーを受け取り、差し出してくれた少女に礼を言う。
 サヨコは穏やかに微笑み返し、ヤマモトは照れるように視線を逸らした。
「目的ぐらいは調べて来たんだろう?」
「ああ、どうやらやっこさんら、例の村を押さえるつもりらしい」
「その間釘付けにしておこうってか、くそ!」
 パンッと拳を手のひらに打ち付ける。
「俺一人でも行くぞ!、舐めた真似しやがって」
「落ち着け、お前一人で行ってどうなる?」
「俺一人の方がやりやすいんだよ!」
「哀れなものね…」
「なんだと!?」
 声の主を睨み付けるジャン。
「聞こえなかったの?」
「聞こえたって言ってんだよ!」
「なら聞きなさい、戦闘だけならともかく、原因である野獣の解析、それはどうするの?」
 言葉に詰まるジャン。
「あなたには無理でしょう?、それを断たない限り戦闘は継続されるわ、例え確保したとしてもね?」
「ならどうしろって言うんだ!」
「わたしを連れて行きなさい」
「赤木博士!」
「リツコさん!」
 ヤマモトとマイに撫で撫でされていたいじけリキが同時に叫ぶ。
「あら、震動?」
 リツコは『上』を見上げた。
「奴ら…、突入して来たな?」
 ヤマモトも見上げる。
「足止めよりも殲滅する方が早いと踏んだか…、行くぞ、ジャン!」
「ああ」
 転がしていたライフルを持ち、ヤマモトとジャンは地下施設の入り口を固めるために動き始めた。


 地下施設の一階部分は非常階段が一つと三つのエレベーターからなるちょっとしたロビーの様な造りになっていた。
 そのフロアー部分で研究資材が入っていたらしいコンテナを積み上げ、即席のバリケードを組み上げる。
「来るぞ!」
 ヤマモトが叫ぶと同時に、三つのエレベーターのドアが全て開いた。
 同時に何十と言う火線が叩き込まれる。
『はーはっはっはっ、そのようなもの、このファットマンには通じぬわ!』
「なんだありゃあ?」
 呆れるジャン、防弾であろうスーツの上に、さらに機械装甲を着込んでいる。
 顔も赤い目の光るマスクに覆われていた、驚くほどの巨体と鎧で銃弾を弾き前に出る。
『アームストロングカノン!』
 右腕がまるごと砲身になっていた、スピーカーマイクからの声の後に脚部裏側の姿勢補助用の踵が降ろされる。
 バスッ!
 撃ち出された砲弾がコンテナに穴を開けて爆発した。
「対戦車ライフルだと!?」
 続いて砲身の下にあったガトリングガンからの掃射。
『はーはっはっはっはっはっ!』
 狂ったように撃ち出しているが、それは計算された威嚇行為だ、その隙にファットマンを盾に隠れていた工作部隊が腰を低くしたままで走り出す。
「撃てっ!」
 ヤマモトの号令一下、応戦を始める。
「盾か!?」
 特殊プラスチックでできた透明の盾を腕に固定していた、それなりに小さいが防弾スーツを併用し身を屈める事で全身をカバーすることはできる。
「くっ、スモーク撃ち出せ!、ジャン!」
「ああ!」
 煙幕弾が撃ち出される、ヤマモト達はマスクを着けた。
 目の部分が赤外線カメラになっている、のだが…
「敵が見えない!?」
 これも特殊スーツの機能である、熱遮断素材の効力でもあった。
 歩兵部隊が撃ち返さなかった理由はここにあった、スーツによって熱を消した所で加熱した銃身が冷えるには、十分な時間が必要だからだ。
「通路まで下がるぞ!、狙いをあのでか物に集中しろ!」
 命令を出しながら不安が拭えないでいた、T字路まで下がる事ができれば遮蔽物のない敵を狙い撃ちにできる、が、ファットマンの存在があった。
 あの破壊力なら…
 空のコンテナが爆発した所からも通常の砲弾でないのは分かっていた。
 焼夷弾か何かか?
「こちらグループA、三十秒後にプランBを起動だ」
『了解』
 人間ではなく、コンピューターの合成音が返って来る。
 頼むぞ!
 ヤマモトは一人煙の中に残ったジャンに祈った。


 ファットマンのアイカバーにも当然のごとく熱探知装置は付いている。
 それだけではなく、カメラアイはX線探査も行い、バリケードごしにも正確に敵を撃ち抜いていた。
「調子に乗ってんじゃねぇ!」
 背中に突然の衝撃が走る。
『ぬお!』
 よろけ、こけかけたが今度は顎を正面から蹴り上げられた。
『くっ…』
 軽い脳震頭に陥る。
『どこだ、何処に居る!?』
 自重が重いだけに肩膝をつくだけで震動が起こる。
「ここだよ」
『なっ!?』
 真横からの声、こめかみに突きつけられるショットガンの銃口。
「機械化装甲歩兵か?」
『ははっ!、撃てるものなら撃て!』
「んだと?」
『俺の心臓にはペースメーカーが埋め込んである、核爆弾に直結した、な?』
「てめっ…」
『ふんっ!』
 腕を振り回して立ち上がる。
『死ね!』
 胸の装甲部分が開く。
(ミサイル?、なんだ!?)
 その内の数発が撃ち出される、それはさらに爆発して無数の流弾として襲いかかった。


「隔壁を閉めろ!」
 ヤマモトの声に合わせて隔壁が下りる。
 前後を隔壁に閉ざされる歩兵部隊。
 彼らは何事かと警戒し、やがてエアダクトに気がついた。
「気体炸薬!?」
 アイマスクのために、ガスに色が付いているにも関わらず発見が遅れた。
 爆発は隔壁に閉ざされた密室内に無情なほどの圧力を生み出す。
「下がるぞ!」
 ヤマモト一下、隔壁に銃を向けたままで下がり出す。
 どれぐらい減ったか?
 隔壁が下りる寸前に逃げ出した者達も見ている。
 何よりファットマンが残っているし、地上にも追加の部隊は居るだろう。
 絶体絶命と言った所か…
 篭城戦は外部からの救出部隊を待つことで始めて成り立つ。
 期待は薄いな…
 だがそれでもなぜだか、負けるような気はしなかった。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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