NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':88 


「三日も帰って来ないで、何処行ってたのさ?」
 ふっとゲンドウは眼鏡を持ち上げる。
「問題無い」
「大有りだったよ…」
 何故か涙目のシンジ。
「ふっ、まあ楽しみにしていろ」
 にやりと。
「…何企んでるのさ?」
 息子もまるで親を信用してない。
「シンジ…」
「なにさ?」
「弟はいらんか?」
 何考えてるのさ、父さん…
 固まるシンジ、一方。
「おばさまお若いですぅ!」
「あら、「本番」の前に練習しておくのもいいと思わない?」
「シンジ様の弟様でですかぁ!?」
「あたしはいいですぅ、ぶっつけ本番でぇ」
「真似しないでくださいぃ!」
 きーっとレイをポカポカ殴る。
「痛いって!、別にいいじゃない、シンちゃんの子供かぁ…、今すぐでも欲しいよねぇ?」
「そ、そんなぁ、ですぅ!」
「ほぇ〜って、ぶっ飛んでんじゃないわよ!」
「あらあら、あたしももうおばあちゃんになっちゃうのかしらねぇ?」
「これで正真正銘、お義母様って呼べちゃうのかぁ」
「ってあんたバカぁ?、この歳で子持ちになってどうすんのよ!」
「アスカ嫌なんだ?」
「当ったり前よぉ!、まあ?、確かに不安はちょっとあるし…、少しくらいなら練習してもいいかなって思うけど…」
「子供を作る練習をかい?」
「どっから出て来たぁ!」
 ガス!
「ふ、衝撃を逃さない打ち下ろし気味のハイキックとは、受け流す事が出来なかったよ…」
「…カヲルさん、存在感薄いですねぇ」
「最初から居たのにね…」
 ピクピクと悶絶するカヲルに恐怖し、肩を怒らせるアスカに畏怖する二人であった。


Q_DASH88
「トワイライトタイム」


「んなことがあったんかいな」
「ですぅ」
 トウジ、ケンスケ、マナ、ミズホ。
 屋上の弁当組としては実に珍しい組み合わせだった。
 ちなみにケンスケとマナは何やら電卓を叩きあっている。
「鈴原さんはぁ、そう言うお話はされないんですかぁ?」
「がはっ、げほっ!、だ、誰とや!?」
「ヒカリさんに決まってますぅ」
 背後の気配にハッとするトウジ。
「な、なんや?、なんやねん!?」
 ケンスケが闇を背負ってにじり寄る。
「トウジぃ、そういえばお前らどこまで行ってんだよ?」
「ん、んなもん、関係あらへんやろ!」
「さみしぃわねぇ?、元三バカトリオじゃなぁい」
 マナ参戦。
「お前はもっと関係あらへんやろ!」
「ま、毒と薬じゃ毒の方が強かったって事かぁ?」
「なんやねん、それは!」
「ヒカリちゃんって、そういうのにうるさかったらしいじゃない?」
「そうそう、「フケツよぉー!」なんてな?」
「鈴原君ったらもう!」
「なぁに教えたんだ?、え?」
「…あなた達、何を話してるのかしら?」
 ゆーっくりと振り返る。
「「ひっ!」」
「あ、あらぁ…、ヒカリちゃん」
「いや、俺達は、なぁ?」
「そうそう、ねぇ?」
「なにかしらぁ?」
 にっこりと微笑むヒカリ。
 その後ろでトウジが笑う。
 ムッとするケンスケとマナ。
「いやぁ、旦那さんがあんまり仲良くやってるもんだからさ?」
「そうそう、奥さんに悪いわよって、ねぇ?」
「ほえ?、なんですかぁ?」
鈴原ぁ!
「ちゃうてぇ!」
 ぼかすかと蹴られまくるトウジ。
「ヒカリちゃん…、スカートまくれ過ぎ」
「見えてますぅ」
「…でもやっぱ癖だな?」
「なにが?」
 ケンスケはよく分からない二人に肩をすくめた。
「本気で怒った時は、「鈴原」に戻るって事がだよ」
「おどれらぁーーー!」
 夫婦喧嘩は犬も食わない。
 そんなわけで、二人を置いて三人はとっとと引き上げてしまうのであった。
「薄情もーん!」






「ふえ?」
 教室に戻ったミズホは奇妙な光景に足がすくんで入るのをためらってしまった。
「誰もいませぇん…」
 次の授業は地理、移動教室では無かったはずだ。
 ゆっくりと一歩踏み出す、やはり情景は変わらない。
 授業直前の廊下の雑然とした響きだけが無人の室内を変に埋める。
「これは一体…」
 一歩、二歩と歩を進める度に勢いがつく。
 慌てて自分の机の中から下敷きを取り出す。
「やっぱりですぅ…」
 間に紙が挟める様になっていて、ミズホはそこに時間割を入れていた。


 どうして、こんな事になってしまったのでしょうかぁ?
 ミズホはなんとか考えようとした、が、やはり答えは出て来ない。
 ぼうっとしている、窓の外を見る、季節はずれの陽気がいい。
 窓を閉め、扉も閉めているから、暖房が逃げる事も無くかかっている。
「みんないなくなってしまわれましたぁ…」
 ぽてっと伏せり、頬を冷たい机に当てる。
 隣の授業、先生の話しが聞こえて来る。
「ふえ…」
 ポロリと涙がこぼれ落ちる。
 ミズホはそのまま、眠りに落ちた。


「ふえ?」
 そこは変な世界だった。
「ここ、どこですかぁ?」
 森があって、川があって、丘があって、草原があった。
 しかしそのどれもが丸みを帯びてデフォルメされていた。
「みなさぁん」
 ミズホは「みんな」を探して歩いていた。
「みなさぁんって、誰のことでしたっけぇ?」
 しかも天然が入っているようだ。
「でもでもぉ、探さなければなりませぇん!」
 さらに妙な使命感も持っている。
「あ、あそこに人影が…」
 びょんびょんと跳ねて行く白い人影…
「ああもう、まったく、遅刻しちゃうじゃないの!」
「盗作ですぅ!」
「きゃああああああ!、なによあんたは!」
「アスカさん酷いですぅう!」
「アスカって誰よ!?、あんた何者よ!」
「ふぇえええええ!、うさスーツを使ってるところを見つかったからってぇ、知らない振りなんて酷いですぅ!」
「なによ!、あんたなんてほんとに…、きゃああああ!」
「ふえ!?」
「遅刻しちゃうぅううう!」
「お出かけですかぁ?」
「レレレのレー、なのよぉ!」
「わけわかんないですぅ…」
「わかんないのはあんたよ!、えい!」
「ふえ?、ふええええええええ!」
 足元に大穴が空き、ミズホはその中に落とされた。
「今日はシンジとダンスなのよぉ!」
やっぱりアスカさんじゃないですかぁぁぁぁぁぁ
 ミズホは落とし穴を落ちていった。
 アスカらしいうさぎの跳ねる、遠ざかっていく音が妙にきっちりと聞こえていた。


「ふぇ!?」
 ガタン!、っと机の上で痙攣し、ミズホは慌てて起き上がった。
「な、なんや?、どないしたんや」
「あーーー!、鈴原さんですぅ!」
「ってなんや!?、うおっ!」
 ふぇえええん!、っと胸に頬擦りかけながら泣きじゃくるミズホ。
「なんや?、どないしたんや!?」
「ふぇえええええん!」
 わけもわからずに泣き続ける。
「鈴原ぁ、なに泣かせてんのぉ?」
「わ、わしとちゃうわ、ぼけぇ!」
「お前彼女いたんじゃないのかぁ?」
「そやからちゃうて!」
「まあ碇の友達だもんなぁ」
「「うんうん」」
「納得すなぁ!」
 とか言いつつもなんとなくあやすように背を叩いてしまうトウジであった。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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