NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':96 


『今日はもうちょっと頑張ります!』
 そう勢い込むアオイを、遅れてやって来たトウジに任せて逃げて来た。
「いいのかなぁ?」
「決めるのはあの子でしょ?」
「そうですけどぉ」
 シンジとアヤカは学校へ向かっていた。
 既に夕暮れ、下校する生徒の数もまばらになってしまっていた。
「無責任じゃないですか?」
「戦うのはあの子だもの…、逃げてちゃいつまでたっても、ね?」
 アヤカは元々、姉を迎えに来たのだと言う、そう、それはセリカの事だった。
「なぁに?、もう下校時間じゃない」
「しょうがないですよ…、でも先輩、まだいるのかなぁ?」
 首を傾げるシンジに、仕方無いわねぇとアヤカは呆れ顔を向けた。
 二人で校舎に入り込む。
 日の暮れかけた人気の無い廊下は、オレンジ色に染まっていて現実からの遊離を想像させる雰囲気を持っていた。
「まさに姉さんにピッタリね?」
「やめてくださいよぉ、もぉ…」
 トホホと暗い顔で落ち込みを見せる。
「姉さんまだ居るかしら?」
「あ、先輩!」
 アヤカの心配は杞憂に終わった。
 暗く闇に沈みつつある廊下を進むと、すっとドアが開いたのだ。
 手を振り、アヤカと共に部室を訪れるシンジ。
 セリカは黒いマントを羽織っていた。
 頭にも大きな帽子を被っている。
「先輩…、その恰好、え?、儀式のため?、はぁ、そうですか…」
 聞きたくない、と耳をつい塞ぎかける。
「今日の部活はもう終わり?、終わったって何が…、ああいいええ!、別に良いです、教えてくれなくても」
 シンジに遮られて、セリカは残念そうに困り顔をした。
 くすくすとシンジの背中には笑いが当てられる。
「大変よぉ?、姉さんと付き合うのは」
「はは…、そうみたいだね?」
 シンジはつい、重くてふかぁい溜め息を吐いてしまった。


Neon Genesis
EvangelionGenesisQ'96
To Heart TV版」


「はぁ…」
 翌日、学校。
 シンジは屋上で黄昏ていた。
(ここでのイベントは無し、か…)
 ついついサボろうとしてしまう。
 対人関係の処理に疲れて来たのだ。
(あちらを立てればこちらがって事か…)
「あ、いたいた、シンジちゃん」
 アカリの良かったぁと言う声が聞こえた。
「どうかしたの?」
 昇降口から息を切らせて駆け寄って来る。
 雰囲気からしていつもと違う。
「大変なの、シホが!」
「え…」
「怪我しちゃったの!」
「ちょ、ちょっとそんなに慌てないでよ…」
『う〜〜〜』っと両腕をばたばたさせて慌てる様に、シンジは余程の混乱を読み取った。


「って、なぁんだ…、怪我って言うから慌てて来たのに…」
「なに言ってんの、女の顔に傷つけられたのよ?、これは立派な大怪我よぉ!」
 保健室の中にシホの嘆きがこだまする。
「で、誰にやられたって?」
「聞いてよぉ!」
 上げた顔のほっぺたには、味もそっけもない絆創膏が貼られている。
 その下にはうっすらと切れた痕があるはずだった。
「超能力少女よ、超能力少女!」
「ああ、あの…」
 ふっと、避けるように逃げていった女の子のことを思い出す。
「ちょおっとインタビューしようと思ったら、急に窓が割れたのよ!」
「…はぁ?」
「シホぉ…、それだけじゃ、あの子のせいだなんてわかんないよぉ」
「ボールか何かが割ったんじゃないの?」
「なによぉ!、その疑惑の眼差しは!」
「別にぃ?、でもいつもがいつもだからさ…」
「その態度がムカツクのよぉ!」
 キーッと地団駄を踏んで悔しがる。
「元気じゃないか…」
「みたいだね?」
 アカリと共に苦笑いを浮かべてしまう。
「ああもう決めた!、こうなったら何が何でも、あの子の秘密を暴いてやるわ!」
(あの子…、ケンスケの情報じゃ病気だって…)
 シンジは瞬間で選択した。
「やめておいた方が良いと思うよ?」
「なぁに?、なにか知ってるわけぇ?」
「うっ、…そう言うわけじゃ、ないけど」
「嘘ね!」
 ビシーッと指差す。
「その顔は何かを知っていますって顔だわ!」
「シホぉ…」
「ぼ、僕は何も知らない、知らないよ!」
「シンちゃあん…」
 それじゃあ、知ってるって言っちゃってるよぉとの声に我に返る。
「と、とにかく僕は知らないからね!」
 だが余りにも遅過ぎた。
「くぅうううう、この歩くインターネットですら知らない事をあんたが知ってるなんて、これは侮辱よ!、屈辱だわ!」
 どうやら火に油を注いでしまったようである。
「プライバシーの侵害って言葉…、知ってる?」
「この世においては何者をもシホちゃんの知る権利は止められないのよ!」
「「あっ!」」
 シンジとアカリを置いて跳び出していく。
「じゃあねぇん、ばっははぁ〜い!」
 シンジも慌てて保健室を跳び出した、しかし…
「ああ、もう!」
 既に背中すら廊下には確認できなくなってしまっていた。






 とにかく授業が始まるので教室に戻って来たシンジであったが…
(駄目だ、気になる…)
 忙しなくシャープペンシルの先で、机に音を立ててしまう。
「シンジちゃん、どうしたの?」
 隣の席から、アカリの気遣う声が届いた。
「あ、うん…、なんでもないんだ」
「そう?」
 話してくれないの?、と目で訴えられる。
 それをあえてシンジは無視した。
(どうしよう…、でもコトネちゃんのクラスなんて知らないし…)
 ついでに言えば放課後はアオイのことがある。
(間で何とかするしかないな…)
 シンジは昼休みを、そのために時間と見定めた。


 一年のクラスがある一階をうろつき回る。
(やみくもに探したって…、見つかるわけ)
 だが他に良い方法が思い浮かばなかったのだ。
 しかしプログラムと言う名の神は、シンジを見捨てはしなかった。
 あれは、とシンジは廊下の窓から乗り出した。
「コトネちゃん!」
 なにやらしゃがんでうずくまっていた。


「コトネちゃん!」
 シンジの声にビクッとして立ち上がる。
「あ…」
 さらに逃げようと後ずさる、と、ワン!っとその足元から声がした。
「ダメ!」
 コトネは犬を抱きかかえた。
(まるでコトネちゃんを守ろうとしてるみたいだ…)
 コトネはコトネで、その犬を守ろうとしている。
 そんな構図にシンジはつい微笑みを漏らした。
「ごめん…、脅かしちゃったかな?」
「…いえ」
 おどおどと見上げる目に胸を痛める。
「ごめんね?、なんだか僕の友達が酷いことしちゃったみたいで」
「友達?」
 小犬を抱き上げ、首を傾げる。
 そして『あっ』っと小さく漏らして、気が付いた。
「シホが何かしたんでしょ?、あいつって見境無いからさ」
 へへっと護魔化すように頭を掻く。
「それで、さ…」
「だめ…」
 怖れるように首を振って後ずさる。
「え?」
「こないで」
「どうしてさ?」
 やはり本当なのか、と『シンジ』は思う。
 同時に現実のシンジは『やはりか』と確認をした。
「超能力…、があるから?」
「わたし…、わたし見えるんです、人が事故に遭うのが」
「でもそれって…、別に君のせいじゃ」
「わたしに関わるときっと…、だからお願い、もう話しかけないで下さい!」
「あ、ちょっと!」
 あっという間に逃げ去っていく。
(ええい!)
 シンジは追いかけろ、と命令を下した。


「っと、レミィ、ごめん!」
「ホワァーイ!?」
 近道をする途中でぶつかったクラスメートの留学生、金髪少女に詫びを入れ、シンジはそれでも追いかけた。
「あっ!?」
 しかし遅かった。
 コトネは校舎正門から外へ逃げ出して行ってしまった。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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