NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':104 


「ふわぁ、いつ見ても大きいですぅ」
 ミズホは桟橋の縁ぎりぎりに立って船を見上げた。
「ミズホ、早く」
「はいですぅ」
 とことことシンジの側に寄って腕を取ると、ミズホはニコッと一つ笑った。


 船上はカップルだけでなく家族連れでも溢れ返っていた。
 特に景色を眺めようとデッキは人でいっぱいだった。
「ミズホ、大丈夫?」
 シンジは気遣わしげに語りかけた。
「大丈夫ですぅ」
 ミズホは笑うが、その顔色は少し悪い。
(人に当てられたのかな…)
 特に船首を目指す人が多かったため、シンジ達は押されるように流されて来ていた。
 今も周りは人が多く、通行の邪魔にならない様にするためにはなるべく隅に立つ必要があった。
 それもカップルとカップルの間に割り込むような形になるのだから、自然と二人も引っ付き合って場所を分けてもらうしか無かったのだが。
 風に当たっていればと思ったシンジの読みは外れていた。
 それでもどんどんとミズホの顔色が悪くなっていくのである。
 シンジとのデートと言う興奮、人いきれの暑さ、それに船の揺れ。
 ミズホは完全に船酔いを起こしていたのだ。
(だめだな)
 シンジはミズホの頭ごしに、船内の売店がどちらにあるかを探した。
「何か飲もうよ」
「はいですぅ…」
 心持ち声に張りが無いことに不安を覚える。
 何よりも子供達が足元を駆け回るので、気を抜けば引き離されそうになってしまう。
 シンジはミズホの手を握った。
「こうしてれば、大丈夫だよね?」
 だがミズホからの返事は無かった。
 完全にのぼせてしまっていたのである。


「…それで?」
 アスカはシンジが語り終えたのを待って、さらに先を促した。
「それでって…、別に何も無いけど」
「ウソね」
「いや、断定されてもさ…」
 シンジは困った。
「あんたまだ何か隠してるでしょ?」
「う、うん…」
「シンちゃん」
 レイもずりずりと座ったままで詰め寄った。
「わかったよ…、やっちゃったんだ」
「やったって」
「まさか!?」
 二人はバッと顔を見合わせた後でシンジに向き直った。
「シンジ!」
「シンちゃん!」
「え?」
「そんな…、ミズホに取られるなんて、よりによってミズホに!」
「シンちゃんの浮気ものー!」
 シンジは二人に首を締められてもがいた。
「ちょ、ちょっと…、二人とも、勘違い」
「何が勘違いよ!」
「そうよ!」
 こういう時は非常に気の合う二人である。
「げほ…、だから誤解だって、ただミズホが」
「ミズホが、なによ!」
 シンジはそれでも言い澱んだ、一瞬だが。
「…吐いたんだ」
「え?」
「吐いた…、って」
 二人はキョトンとした。
「吐いちゃったんだよ、デッキの上、人が一杯の所で、もう大変だったんだから」
「「はぁ?」」
 二人の呆れた声が合わさった。
「なによそれぇ…」
「ミズホ相当辛かったらしくて、のぼせてぼうっとしたところで込み上げちゃったんだよ、船から降りてからしばらくするまでワケわかんなくなってたし、だから…」
 だがミズホはそれを、シンジに抱かれた事で前後不覚になっていたのだと思い込んでいたのだ。
「だから、言わないでいてあげようと思ってたのに…」
 溜め息を吐く、内緒にしておいてあげてよと。
「シンちゃん…」
「シンジ」
 しかし二人は更に呆れ返っていた。
「「根性無し!」」
「なんだよそれぇ〜」
 手を出せば怒るし出さなければ罵るし、で、シンジは「どうすればいいんだよ」っと、誰かに祈りたい心境へ追い込まれていくのであった。



続く







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