NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':106 


 一同がマックで和んでいたのを、一人の少女が悔しさに歯噛みしながら見つめていた。
「なんなのよ、なんなのよあいつ!」
 その目が憎々しげに見つめているのは、馴れ馴れしくもカヲルに話しかけている薫である。
「あれ、誰なのよ!」
「…知らないって」
「どうして知らないのよ!」
「だって知らないんだもん」
 中々不毛な会話がくり返されている。
「もういい!」
「はいはい」
 とりあえずは…、歯噛みしているのが少女A、呆れているのがBとしておこう。
 二人はマックの中、シンジ達が陣取っているのとは店内対角線上の位置に座っていた。


Neon Genesis
EvangelionGenesisQ'106
「絆」


「カヲル君が居ないと…、この部屋も結構広いんだよね」
「なぁにが言いたいのよ?」
「別にぃ…」
 シンジには溜め息と共にそっぽを向いた。
 シンジとカヲルの部屋なのだが、何故だかレイとアスカがババ抜きをやっている。
「そう言えばミズホは?」
「さあ?」
「あの子最近、付き合い悪いのよねぇ?」
 アスカは手元に来たカードにうげっとなった。
「今日も帰って来たらお風呂に入って、半分寝ぼけながらご飯食べてたし」
「レタスをもしゃ、もしゃ、もしゃって、ゆっくり咀嚼しながら食べちゃって」
「動物霊でも憑いてるんじゃない?」
 言いながらも、目に見えない速度でシャッフルしている。
 既に手元には二枚のカードしか残されていない、つまりババを引き合っているのだ。
「お腹膨れちゃうと寝ちゃいそうだからって、先にお風呂入ってるしねぇ?」
「最近ずっとでしょ?、それに髪乾かすのサボってるし、あの子」
「そうそう、朝なんてすっごい事になってのよねぇ?」
(そうなのかぁ…)
 自分が起きる前の話だけに着いていけない。
「僕が起きた時には、もう出かけちゃってるし」
「クラブでしょ?、園芸部」
「園芸?、なんでまた…」
「先輩に何か言われたみたい」
「センパイって…、小和田センパイ?」
「あの子が言うこと聞くのって、あの人しか居ないじゃない」
 言ってけらけらとアスカは笑った、逆にレイはまたしても引いてしまったババにぷるぷると震えている。
「…ねぇ?」
 シンジは嫌な予感と共に尋ねた。
「なんでそんなにムキになってるのさ?」
 ん〜?、っと気のない素振りを見せるアスカ。
「ちょっと賭けてんのよ」
「賭け?、ってなにを…」
「どっちがシンちゃんと添い寝できるかって」
「はぁ、そうですか…、って、ええ!?」
「なぁに驚いてんのよ?」
 事も無げに言うアスカ。
「だだ、だって!」
「添い寝よ、添い寝!、それに二人っきりってわけじゃないし」
「へ?」
「負けた方がねぇ〜、カヲルの布団で寝るって事で」
「ぜぇええええったいに負けられないのよ、だから!」
「そうそう」
 二人は真剣な目を交錯させた。
 そんな二人の背負ったオーラに、コアラとナマケモノを見るシンジ。
「ねぇ?」
 シンジは素朴な疑問をぶつけた。
「どうしてそんなにカヲル君が嫌いなの?」
「別に嫌いじゃないわよ?」
「そうそう」
 本人が居ないからか、あるいは勝負に集中しているためか?
 特に警戒もせずに、二人はぽろりと本音をこぼした。
「じゃあ、…好きなの?」
「それも無いわね?」
「嫌う理由は無いけど精神的に波長が合わない人って居るでしょ?、そんな感じなの」
 ほとんど即答に近い、迷いも無いのが恐ろしい。
「でもレイって、カヲル君とはそんなに…、ほら!、今日の歌だってきっちり合ってたし」
「…あのね?、シンちゃん」
 レイはアスカに手で待ったをかけた。
「嫌う理由は無い、だけどその人のやってる事がどうしても許せないことってあるの、カヲルがそうなのよ」
「そうそう、ちょうど殴りたくなった時に殴りやすい場所に居るのよね?、理由付きで」
「酷いや二人とも…」
 シンジは何となくカヲルの立場を理解した。
(ストレス解消用なんだ)
 同情するが、良く考えればそれは昔の自分の立場だったりする、いやだからこその同情なのかもしれない。
「でも…、あのバカ、大丈夫かしらね?」
「薫ちゃんがいるし…、女の子に目覚めたらどうしよう!?」
「あのホモが!?、気持ち悪い…」
「気持ち悪いって…、それが普通なんじゃないか」
 シンジは溜め息を漏らした。
「で、結局カヲルは何処行ったのよ?」
「和子ちゃん家、一人暮らしだからって、三人で勉強会」
「和子ね?、あの子結構しっかりしてるから大丈夫でしょ」
「薫ちゃん?、あの子って抑え利かないけど、ちょっと酷くない?」
 レイは心配げな目でアスカを覗きこんだ。
「タガが外れてるとかそんなのじゃなくて…、カヲルのグルーピーとも違うし、好きって言うのより、一つになりたいって感じがするの」
「一つって、あんたねぇ」
 赤くなるアスカ。
「そ、そう言う意味じゃなくて!」
 どもるレイをぼうっと見ながら、シンジは思い出していた。
 カヲルが薫に、何かを与えた時のことを。






「シンジくぅん!」
「わっ、か、カヲル君!?」
 翌日、学校。
 教室に入ったシンジは、いきなり抱きつかれて大いに慌てた。
「どうしたのさ、何かあったの?」
 シンジは努めて平静に尋ねた。
「ううっ、シンジ君は優しいねぇ」
「え?」
「僕の体を心配してくれてるんだろう?、汚されやしなかったかって、大丈夫さ、僕の操はシンジ君のものだからね?、当然シンジ君のものも、それが永久普遍の真実!?」
 ガコンとその顎が蹴り上げられた、蹴ったのはレイだ。
 上がった拍子にスカートが広がる、しかし中が見えるよりも早く今度は脳天に踵を入れるために蹴り下ろされた。
「…格闘ゲームで見たような技だな」
 シンジは素直に感心した。
「今後一週間シンちゃんの周囲三メートル圏内への立ち入り禁止!」
「れ、レイにそんな事を決める権利が…」
 床に沈没したまま、よろよろと腕を伸ばす。
「昨日ねぇ?、シンちゃんと一緒に寝ようと思ってカヲル布団借りたんだけどぉ」
 ギクッとするカヲル。
「ふふふふ…、ま、く、ら」
 顔に汗がだだ漏れる。
「中に、ねぇ?、なにか…」
「れ、レイ…」
「なぁに?」
 にこにことするレイに、カヲルはやや落ち着きのない感じで前髪を掻き上げた。
「…暫く、僕の布団は君のものさ」
「ありがと☆、でも今日こそはアスカに勝って、隣の布団じゃなくてシンちゃんの布団で…」
 ありっと首を傾げるレイ。
 皆の視線がシンジに向けられていた、それも余り友好的ではない。
「あ…、これには、わけが」
「どんなわけだー!」
「わぁ!、い、鰯水君!?」
「寝たんだな!?、レイさんと寝たんだな?、そうだな!」
「く、苦しい…、違うよ、一緒に寝たのはアスカで、レイは隣の布団から手を握って来て」
「なんですってぇ!」
「あ、アスカ!?」
 鰯水が一瞬でアスカに変身した…、と思ったら、突き飛ばされた鰯水が黒板に潰れている。
「ごきぶりみたい…」
「レイ!、あんたずるいわよ!?」
「ズルいってなによぉ、賭けたのはどっちで寝るかってだけじゃない、それにアスカだって、シンちゃんに腕枕してもらってたくせに」
「ば、ばか!、こんな所で…」
 焦るアスカ、だが周囲の目は何処か冷たい、と言うか呆れている。
「…碇」
「え?」
 シンジは肩を叩いた少年を見た、クラスメートだが、余り親しくない男の子だった。
「…お前って」
 ふるふると首を振る。
「シンジ君は君達と違って純情だからねぇ?、噂のように淫らな事はしてないって事さ」
「「「にしたって」」」
 盛大な溜め息が聞かれた。
 もうすぐ高校二年生にもなろうというのに、今だに腕枕一つでこれ程大騒ぎになろうとはと言う感じである。
「なんだよ、なんなんだよ!?」
「よかったぁ…」
 場の雰囲気に焦るシンジの背後で、復活を遂げた鰯水が膝を突いて天に向かって感謝していた。







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

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