NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':121 


「そうか、いや、いい、その件はこちらで処理する、わかった」
 意外にもゲンドウは極普通のサラリーマンぶりを発揮していた。
 可哀想なのはその秘書に付けられた女性だろう。
「側に居るだけで身が強ばる」
「値踏みされているようで、居竦んでしまう」
 そう言った評価が主の中で……
「あの、お茶です」
「ああ、すまんな」
 から始まり……
「お昼……、行って来ても構いませんか?」
「ああ……、遅れてもいいから、弁当を買って来てくれないか?、釣りからジュースを買っても構わないから」
 と非常に庶民的面を見せる、また……
「手伝おう」
 と所々優しい。
 恐そうでありながら意外な一面を持つ。
 有り体に言えば、その秘書は騙されていた。
 実際のところとしては、ゲンドウは確かに開放感を味わっていた。
 第三新東京市では常に裏のある仕事をこなさねばならなかったが、ここでは極普通に書類の許可、不許可を出していれば良いだけである。
 自然と人当たりが良くなるのも仕方の無い所なのだが、それ以上に。
(サヨコ君か……)
 目頭を押さえて揉みほぐす。
(ユイを思い出すな)
 本人が聞けば死んでいないと憤慨するような事を考える。
 いや、ある意味では死んでいるかもしれない。
(あの頃は帰らんか)
 とてもまともとは言い難い新婚生活。
 どうしてもやり直していると言う錯覚に陥ってしまう。
(帰れば迎えてくれる人が居るというのは、いいものだ……)
 大学時代はそれがわからなかった、常に一人だった、またそれが当たり前だった。
 懐かしんでのアパート暮らしだったのだが、思いがけずその後の状態まで追体験する事になってしまった。
(これでシンジが生まれれば、な)
 その時のその考えだけは、余計な事かも知れなかった。






 部屋の前に立つと、中で何かしているのが分かる。
 良い匂いもする、この辺りは安普請のためだが、またそれが味があって良い。
 ゲンドウはごほんと自分に赤面しながら、戸を開けた。
「帰った」
「あ、お帰りなさい」
 と彼女は弾んだ声で言った。
 赤ん坊を抱いて。
「……」
「どうかなさいました?」
「いや……」
 さすがゲンドウである。
 片側だけずり落ちたサングラスを元に戻した。
 何をしている?
 それはなんだ?
 何処から持って来た?
 いくつかの言葉が思い浮かぶが、どれも違う、適当ではない。
 それが混乱から来る錯綜だと分かっていても、修正は用意ではなかった。
 しかもその間にも……
「はぁい、ぱぱですよぉ」
「だぁ!」
 などと小さな手を振って遊んでいるのだ。
 ゲンドウは途方にくれた、途方に暮れざるを得なかった。
 そしてその頃、夜行列車にて。
「ふんふんふん……」
 と何かを編んで、ユイが宅急便で送るはずの生活品を運んでいた。
 ゲンドウの命運は尽きかけていた。



続く







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Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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