NEON GENESIS EVANGELION 
 Genesis Q':125 


 憤慨したのはレイだった。
「ひっどーい、アスカ酷い!」
 パタパタと手を振る。
「酷かないって、だってシンジだん、お礼が欲しかったらなんでもしてあげるけど?」
「いいよ……、後が恐いし」
「ほらね」
 肩をすくめる。
「今更遠慮したってしょうがないじゃない、その分シンジじゃない人だと、肩が凝っちゃうのよね」
 揉む仕草をして、こきっと鳴らす。
「けど、それだけシンジとじゃれてる時って、本気で笑ってるって事でしょう?、作り笑いなんて面倒臭いから、そう言う時ってほんとに不機嫌にしてるし」
 シンジの足を、絡めるように蹴って遊ぶ。
「大体、今更好きって理由を話し合ったって始まんないじゃない、問題は、シンジに選ばせるためにどうするか、でしょ?」
「そう言う話、シンちゃんが居ない時にしない?」
「あんたねぇ」
 項垂れる。
「昨日のことで分かんなかったの?、ちんたらやってたら、こっちがおばさんになっちゃうわ」
「はぁ、だから、どうするって?」
「誘うのも甘えるのも駄目だったし、後は力ずく?」
 シンジはその言葉に青くなったが、アスカは肩透かしを食らわせた。
「ま、それはいつでも出来るし」
「出来るしって……」
「でなきゃ、こういう子にあっさりと取られちゃうかもしんないしね」
「う?」
 ぽんと頭に手を置かれたミズホは、パフェの頬張り過ぎでリスのように膨らんだ顔を持ち上げた。
「良いからあんたは食べてなさい」
「う」
 本当にまた下向いてしまう。
 なにしろまだ食べているのは自分だけなのだ、それに、パフェもまだ半分残っている。
「で、どうするの、それ?」
「ま、相手にしないってのが一番ね」
 そう言ってアスカは、手紙を丸めてテーブルに置いた。
「けど、アスカを追いかけて来るぐらい好きなんでしょ?」
「シンちゃん……」
 ポンと肩に手を置く。
「それくらいなら、学校に幾らでも居るって」
「そうなんだけどね」
 はぁっとアスカの溜め息が聞こえた。
「あんたねぇ……、もうちょっと、嫉妬するとか焦るとか、何か無いの?」
「何かって言われてもさ」
 ぽりっと頬を掻く。
「アスカがもてるのって、今に始まった事じゃないし」
「そうやって安心してるとぉ、アスカ取られちゃうよ?」
「それは……、嫌だけどさ」
「嫌なんだ」
 テーブルの下、べたべたと引っ付こうと足を伸ばす。
「ちょっとレイ!」
「なぁに、アスカ」
 机の下で攻防する。
「何白々しい声出してんのよ!」
「ん〜〜〜?、寂しそうなシンちゃんを慰めてあげてるの」
「こら!」
 レイは、にひっと笑った。
「いいんじゃないのぉ?、アスカはそうやって、いろぉんなこと考えてれば」
「なによ、それは」
「さっきアスカが言ったじゃない、ミズホみたいな子に取られちゃうって」
「う?」
「いいから!」
 ペリカンのように口を膨らませているミズホを黙らせる。
「あんただって考えなきゃいけないこと、山ほどあるでしょうが」
 ぶすっくれる。
「なに呑気な事言ってんのよ」
 アスカの言葉に青ざめたレイを、訝しく思う。
「アスカ……、レイ?」
「あ、シンちゃんには関係無いから、うん」
 レイは目でアスカを叱った。
 自然、アスカに疑問を向ける。
「何かあるの?」
「乙女の悩みって奴よ」
 アスカはしらばっくれた。
「それより出ましょ……、空気悪くなって来たから」
 アスカの促しに、隣でごっくんと音がした。


「ってことがあってさ」
 最近、家に帰るとカヲルに報告する癖がついていた。
 もちろんカヲルは気付いていたが、シンジに注意するつもりは無い。
「どんな子だったんだろうねぇ」
 カヲルはワザとらしく腕を組んだ。
「アスカちゃんに手紙を渡した子だよ、興味が湧かないかい?」
 含み笑いを見せる。
「なにさ?」
「いや……、薫の事を思い出してね」
「ナカザキさん?」
 頷く。
「そうだよ、どうやら同じ学校に通うと言うのは、気持ちを切り替えるには丁度いい機会らしいよ」
「そう?」
「中学と高校で離れている間に、思いが募る?、大きくなるんだろうね、あれこれ想像して、きっとあんな風に、こんな風に……、してもらいたかった、したかった事が沢山出来たみたいだよ」
「大変なんだね」
「ちょっとはね」
 少し翳を帯びた、何があったのか?
「それより今は、アスカちゃんのことさ」
 護魔化しを掛ける。
「きっと、シンジ君って相手がいるから、いま何をしているんだろうって言うのが、傾いちゃうんじゃないのかい?」
「傾く?」
「いけない想像にだよ」
 カヲルは意地悪く笑った。
「それはもう、嫉妬に堪らなくなるだろうね、でも同時に、自分がしてみたくもなる、特にアスカちゃん、レイ、ミズホは一緒に住んでる、僕も居るし親も居るけど、彼、彼らにとっては、同棲やハーレムに見えるんじゃないのかい?」
「そんな事は無いのに」
「そうだねぇ、僕の目から見ても、猛獣の檻と同じ」
「ほほぉ」
 ぱきぽきと指の音がした。
「だぁれが猛獣だって?」
「一番危ないのはカヲルじゃない」
「アスカさん、レイさん……」
 ミズホはフルフルと首を振った。
「お二人ともご自分ってものをご理解なさらないと」
「「誰がぁ!」」
 うひゃうっと首をすくめたミズホに感謝して逃げていくカヲルを、シンジは乾いた笑いで見送った。


 暗闇の中、シンジは眠ろうと横になったまま、考えていた。
(アスカ……、レイ、ミズホ)
 三人とも以前のようながむしゃらさでは無く、もっと落ちついた、具体的な動きで迫るようになって来た。
 それは何故か?
(冗談と……、本気の時が、分かれて来たからだ)
 気持ちに整理がつき始めたのかもしれない。
 前は一緒くただった、だからからかいにもムキになっていた。
 昼間の、足のじゃれ合いを思い出す。
(そうだよな、前は……、あれじゃあ済まなかったのに)
 レイを叱るだけで済ませた。
(あれ?)
 もぞもぞと動いて、不意に浮かんがものを形にする。
(変だな、僕……)
 満足してない?
(違う、物足りないんだ……)
 その考えに愕然とした。
(こうやって……、アスカも、レイも、ミズホも、はいはいって顔で、何でも受け流すようになるのかな)
 終いにはどうなるのか?
(って、前にも似たような事、考えた事があったっけ)
 成長してない自分に対して苦笑する。
(アスカはああ言ってたけど、僕も馬鹿な男の内の一人なんだよなぁ)
 寝返りを打った。
(キスしたくないとか、裸を見たくないって言ったら嘘だよな、でもしていいとか、そうは思えないし……)
 もちろんそこには、優柔不断な自分では不誠実だと言う本能的な考えがあるからなのだが。
(トウジ……)
 ヒカリと一緒に居た親友を思い浮かべる。
(そりゃ……、トウジみたいに構えられたらいいんだろうけど)
 簡単にアスカと呼んだトウジ。
(余裕……、なんだよな、言ったからって、それがどうしたって、何も含んでなかったし)
 かと言って、自分がアスカ、レイ、ミズホと親しげに話しかける誰かを見たら、どうだろうか?
(きっと僕は、嫉妬して……)
 暗い考えに取り憑かれて行く。
(僕も、ちょっとは変わって来てるって事か)
 諦めたくは無い。
 シンジはそれが独占欲だと言う事に、まだよくは気が付いていなかった。



続く







[BACK] [TOP] [notice]


新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
内容の一部及び全部の引用・転載・加筆その他の行為には
作者である私と原作者naryさんの許可または承認が必要です、ご了承ください。

本元Genesis Qへ>Genesis Q