「「「ただいまぁ」」」
「「「おじゃましまぁす」」」
 大人数である。
 屍化したムサシを引きずるマナは獲物と狩人を連想させた、その二人がまずカヲルと薫にかち合い、それから花壇の方から腕を組んで歩いて来たミズホとシンジに再び合流したのだ。
 が、今はさらにアスカ、レイ、ミヤが加わり、総勢九名となっていた。
 明日は土曜日、休みと言う事もあって、皆で親のいない碇宅に遊びに来たのだ。
「へぇ、ここがシンジ君の家なんだ」
「ねぇ、シンジとカヲルの部屋って何処?」
 さっそく家捜しを始めているマナとミヤに溜め息を吐く。
「上……、なんだけどね」
 天井裏を指差すと、それっとドタバタ駆けていった。
 一方、カヲルは。
「あんまり遅くなると、ご両親が心配するんじゃないのかい?」
「大丈夫、ちゃんと和ちゃんに電話してって頼んでおいたから」
「和子ちゃんに……、かい?」
「うん」
 非常に不安になるカヲルだが、もちろん誤解を招くような事を言ってくれるだろうと言う薫の計算だ。
「それより……、どうすんのよ、あれ」
 言ったのはアスカだった。
 まぁああ、なぁあああ!
 窓の外から声が聞こえる。
「でも入れるとマナが怒るからさ」
「あんた、意外と冷たいとこあったのね」
「恐いんだもん」
 さも当然のようについて来たムサシを、あっさりと放り出し締め出したマナの笑顔を、シンジはしっかり覚えていた。




 それから四時間後。
「あ、シンジ、電話よ、電話」
「わかったよ」
 溜め息が漏れ出てしまったのは、みんなの狂態に対してだろう。
 女性六名に対して男性二名である、もちろんカヲルは一人に占拠されているわけだから、残りの五人の相手を誰がお酌をしなければならないかは明白だ。
「まったくもう、またお酒なんか持って来て……」
 つい愚痴ってしまう。
 いくら女の子の肌とはいえ、酔った揚げ句に着崩れた姿はみっともない、扇情的と言うには彼女達は荒々しいし、またシンジも恐れが先に立っていた。
「はい、もしもし」
『シンジか』
 半ば自棄気味に受話器を上げたシンジは、電話の主に緊張した。
「父さん?」
 数秒の間があった。
『……楽しそうだな』
 どうやら背後の喧騒を聞き取っていたようだ。
「ああ……、みんながね」
『そうか、それは良かったな』
「何僻んでるのさ?」
『何でも無い、そっちはどうだ』
「別に?、いつもどうりだけど」
『そうか……、寂しくは無いか?』
「はぁ?、大丈夫だよ、母さんは元気?」
『……』
「どうしたの?」
『いや、なんでもない』
「そう?」
 首を傾げた所で、赤ちゃんの泣き声が聞こえた。
「父さん?」
『ちょっと待て』
 さらに。
『ゲンドウさん、お食事の用意が整いましたけど』
『そうか』
 ぼそぼそとしたやり取りだったが、はっきりと聞こえた。
「父さん……」
『なんだ』
「今の、誰?」
 息を飲むのが分かった。
『シンジ……』
「父さん」
 冷たい声で言う。
「酷いよ、北海道で、母さんも居るのに、一体何やってるんだよ、父さん」
『いや、待てシンジ、それは誤解』
 誤解も六階も、と言う言葉が浮かんだが、ネタが古いので打ち消した。
「さよなら」
『シンジ!』
 カチャンと電話を切ってから、シンジは首を傾げた。
「でも……、どっかで聞いた事のある声だったな」
「し〜んじぃ」
 女王のお呼びである。
「なにやってんのよぉ!」
「あ〜、しんたん、女の子からなんだぁ」
「うわきぃ〜〜〜、ですぅ」
 酔いはかなり深いようだ。
 さめざめとした息を吐く、それ以外に、今のシンジに出来る事は無い。
 少々の憂さ晴らしでからかったつもりだったのだが……
「父さん、本気で焦ってたな」
 やましい事でもあるのかな、と、勝手に考えるシンジであった。



続く







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