「ようやくアスカちゃんに何が起こったのか分かったんでね、それで」
「そう……」
 シンジは話を途中で遮り、顔を背けた。
「シンジ君?」
「ごめん……、ごめん、今は話したくないんだ」
「そうかい」
 カヲルは溜め息を吐いた。
「でもそうはいかないんだよ、アスカちゃんを起こすためには、君の力が必要なんだ」
「僕の?」
「そう……、アスカちゃんは今、記憶の中で迷ってる、それを導くのは君の仕事だよ」
 シンジはかっとなった。
「なんだよそれ、どうして僕が!」
「それは、君が一番彼女と時間を共有して来たからだよ、分かり合ってるからさ」
 シンジは胸を掴み、苦しげに顔を伏せた。
「そんなの……、カヲル君がやればいいじゃないか!」
「シンジ君……」
 悲しげな声に謝る。
「ごめん……、でも」
 カヲルはかぶりを振った。
「アスカちゃんが、どうして僕を呼んだのか、その理由は分からない、けど、これだけは言える」
「……」
「僕には本当に、あんな風に呼ばれる理由が思い付かないんだよ」
「けど」
 シンジは堪えて言った。
「アスカには、あったのかもしれない」
「それは……」
「カヲル君には無くても、アスカにはあったのかもしれない、そうだよ、カヲル君にはよく相談に乗ってもらったよね?、アスカだってそうだったんでしょ?、僕よりずっと……、頼れるもの」
「シンジ君」
「だから、だからそっとしておいて……」
 シンジは壁に肩を預けた、倒れないように。
「もう少し……、もう少ししたら、きっといつもみたいに」
「護魔化せる、と言うのかい?」
 俯くシンジに、追い打ちを掛ける。
「でもそれは嘘だよ、どこまでも架空でしかない、自分に都合よく解釈した所で、現実は何も変わらない、だから」
「分かったよ……」
 シンジは虚ろな顔を上げた。
「……僕も、手伝えばいいんだね?」
「ありがとう、シンジ君」
 だがシンジは、そんなカヲルの言葉を喜ばなかった。
『でもそれは嘘だよ、どこまでも架空でしかない、自分に都合よく解釈した所で、現実は何も変わらない』
(結局、僕は邪魔なんだって事じゃないか、アスカはカヲル君が好きだから、それを受け入れろって事なんじゃないか)
『ありがとう、シンジ君』
(そりゃ、うれしいだろうね、そりゃ……)
 シンジの思考は、暗に、陰に落ち込んでいった。



続く







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