原罪と言う言葉がある。
 人は生まれながらに罪を背負っているものらしい。
 なら生まれて来た事が罪なのだろうか?
 その責任を取れと言われても困ってしまうだろう、だって、生うことにしたのは親なのだから。
 だから生まれてしまった事については親に責任をもって貰おう。
 では原罪とはなんであるのか?
 それは生きる事に他ならない。
 他の生物を捕え、命を奪い、食う。
 なんと罪深い事だろうか、それでもだ。
 人は生きるために産まれた以上は、生きて行く。
 命そのものを糧として。


Neon Genesis
EvangelionGenesisQ'141

「Gyuu」


「表面の発光を止めろ!」
 ドイツ、とある森林に囲まれた研究所。
「予定限界値を越えている」
「共鳴しているのか!?」
「この音を!」
 同時刻、アメリカ。
「異常事態、異常事態、総員防護服着用、第二セントラルの作業員は、至急シェルターへ非難して下さい」
 放送が人々の足を奔走させる。
「何が起こっているんだ!」
「分かりません、共鳴が起こっているとしか」
「次元が揺らいでいるぞ、調整を!」
 その裏側、ロシア。
「検体共を黙らせろ!」
「無理です!、こちらからのアクセスを受け付けません!」
「ガスを!」
「中和されていきます、うわっ」
 さらに南側、中国。
「ダメだ、奴等物理的融合を開始しているぞ!」
「力を展開している、一切を受け付けない!」
「共鳴、力を暴走させているのか?、それとも、これは」
「磁場が保てない!」
「沈んでいく……、違う、消えて行く!?」
 再びドイツ。
「わずかでもいい、被害を最小限に食い止めろ」
「極地的に大気の分解がすでに」
「構成分子のクォーク単位での分解は、急げ」
「コンマ一秒でもいい、干渉可能なエネルギーをしぼりださせるんだ」
「ダメで……」
 閃光。
 爆発。
 しかし衝撃は解放されることなく。
 その中心へと集束していく。
 呑み込まれていく。
 そして残されるのは巨大な爆心地。
 その中心に立つもの。
 人影。
 体毛と言う物が無く、皺一つない体は白く、目は赤い。
 人間……、ではない。
 マネキンに見える。
 しかしマネキンは動いたりはしないだろう、ましてや。
 表情を、浮かべるなどは。
 直径一キロにも及ぶクレーター、地下施設も崩壊を始めたのか地鳴りと共に沈み始める。
 だが彼は……、沈まない、そのままだった、足場を無くしてもそれ以前と同じように浮遊していた。
「三つ……、足りない」
 粗雑なスピーカーから漏れたような、かすれ、ぼやけた声だった。
 腕を持ち上げて、かざすと、下方の土砂の中から何かが跳び出すようにして、彼の手の内へと収まった。
 それは仮面だった。
 右に三つ、左に四つの目を持つ仮面だった。
 彼はそれで顔を隠した。
 同時に肩甲骨の辺りの肉が脈動し、捻り上がるように盛り上がってパンと開いた。
 白い翼となる、魚の鰭のような翼だった。
「生きてる……、どこ?」
 彼は東の方角を見やった。
 じっと見る……、仮面に七色の揺らめきが生じる。
 そこに三つの景色が、映像となって瞬間、結像した。
「そこ?」
 北海道、佐呂間、それに第三新東京市、ドーム、そしてシンジが傷心旅行に出た、あの海岸の温泉地。
「違う……」
 一度だけ仮面が揺れた、鼻で匂いを嗅いだのだろう。
「でも、こっち……」
 羽ばたき、天空に舞い上がる、雲のすぐ下にまで瞬きするほどの間に辿り着き、次には横に、直角に曲がった。
 大気が白い糸を引く。
 彼、あるいは彼女達は、そうして一度に姿を消した。
 その存在を、その発生を知られることなく姿を消した。
 彼らの痕跡を示す物は、彼らを生み出した者達と共に、塵となって、灰となって、何一つ残らず地中に埋もれて、消えてしまった。






「はぁん?、そう言う事、ね」
 久々に学校に来たカヲルに対して、アスカが放った第一声である。
「やけに刺々しいねぇ」
「べっつにぃ、ただねぇ」
 にたにたとする。
「そう言う事かってねぇ」
 アスカが指し示しているのは、カヲルの左腕に絡まっている少女の事であった。
 薫である。
「ここんとこ見ないと思ったらそう言う事だったのかってねぇ」
 そんなアスカに、カヲルは余裕の笑みを見せた。
「そんな事言ってていいのかい?」
「なによぉ」
「その内シンジ君も……」
 ちらと右をレイ、左をミズホに取られて引きずられているシンジを見やる。
「シンジ君と後一人、誰かが帰って来ない……、そんな日が来るんだろうねぇ」
 遠い目をして語るカヲルに、まっさかぁっとアスカは笑って済ませた。
 その時は。


「あいっつぅ」
 拳をブルブルと震わせるアスカである。
 碇家リビング。
「そんなに心配しなくたって、すぐ帰って来るって」
「ですぅ」
 二人、テーブルの置いた煎餅に手を伸ばすレイとミズホだ。
 左右対称なポーズでテーブルに頬杖を突いている。
 見ているテレビは、『新・愛する二人、別れる二人』
「だぁ!、どうしてそう落ち着いてられんのよ!」
「だって、ねぇ?」
「ですぅ」
「おかしいと思ったのよ」
 アスカはがしがしと親指の爪を噛んだ。
「シンジの前だってのにいちゃついてるし、変な前振りして、あいつ」
「でも……」
 そんなアスカに不審げな目を向けるレイ。
「アスカってさ、ほんとうにシンちゃんの心配してんのぉ?」
「ですぅ」
「なぁんか相手がカヲルだからって嫉妬してるみたい」
「ですぅ」
「ねぇ〜?、やっぱりアスカ、シンちゃんだけじゃなくてカヲルも」
「だぁ!、それは誤解だったっつってんでしょうが!」
「ぷ〜んだ、アスカがしたこと、忘れてないかんね」
「ですぅ」
「ほんとならペナルティもんなんだから」
「ですぅ」
「あんただって温泉行ってたんでしょうが!」
「それとこれとは別ですぅ」
「ですぅ」
「あれだってアスカが自分で誘えないように持ってってたんじゃなぁい」
「ですぅ」
「あ〜あ、今日からシンちゃんと一緒に、お風呂、入っちゃおうっかなぁ」
「ですぅ」
 先程から同じタイミングで同じ調子でしか相打ちをうたないミズホに、二人は呆れを目を向けた。
「はまってるわね、ミズホ」
「うん……、なんだか妙にこういうの好きなのよね」
「ですぅ」
 やっぱり無意味に返事をする、手を伸ばす、もう茶受けは空っぽだ、ミズホは手探りで探した結果、結局椀を手に持って、そのまま口へと運んで行った。
 ガジ!







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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

Q'Genesis Qnaryさんに許可を頂いて私nakayaが制作しているパロディー作品です。
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