Evangelion Genesis Real
Evangelion another dimension real:1
「カヲル君どうして!」
ターミナルドグマ、張り付けになっているリリスを前に、シンジは泣きそうになるのを堪えていた。
「僕が生き続けることが、僕の運命だからだよ」
そんなシンジに、カヲルは変らぬ笑みを向ける。
「カヲル君、君が何を言ってるのかわかんないよ、カヲル君…」
カヲルは自嘲の色合いを強めた。
「遺言だよ…」
話の半分以上をシンジは聞いていなかった。
カヲルの真実に触れることを、心のどこかで恐れていたからだ。
「そして君は死すべき存在ではない、君達には、未来が必要だ」
それでも自分よりもシンジをと望む言葉に、シンジは逃れられぬ甘美な魅力を感じて引き寄せられていった。
「ありがとう、君に逢えて、うれしかったよ」
その言葉が耳の奥にこびりつく。
そしてそれはいつまでもこだまして、けっして消えてくれはしなかった。
はっとして目を覚ますシンジ。
額に汗が浮き出ていた。
「夢、まただ…」
その汗を手の甲でぬぐいさる。
見慣れてしまった自室の天井、部屋には月明かりが差し込んでいた。
「カヲル君、どうして…」
カヲルの笑みが消えてはくれなかった。
「父さん、綾波、アスカ、ミサトさん、みんな、みんな恐いんだ…、誰か助けて、助けてよ、母さん…」
横たわったままで両膝を抱えるシンジ。
そしてそのまま、シンジはぐずるように泣きはじめていた。
今、ミサトのアパートには、シンジしかいない。
そのことがシンジの心細さを助長させていた。
「本部施設の出入りが全面禁止!?」
明りの落とされた第二発令所で、マヤはクッキーをかじり、シゲルはマグカップを口に当てていた。
「それも第一種警戒態勢のままな?」
眼下にある巨大な投影スクリーンには、エヴァ各機の現状が表示されていた。
椅子に腰掛けているマヤは、探るような視線を向けた。
「最後の使徒だったんでしょ?、あの少年が…」
シゲルは側の操作台に腰掛けたままで見返した。
「その通り、全ての使徒は消えたはずなんだ…」
(なのに警戒態勢のままだ)
そして解かれてもいないのに、発令所には他の人影がない。
「じゃあ今や平和になったって事なんじゃないの?」
マヤは焦ったように先を続けた。
「じゃあここは?、エヴァはどうなるの?、先輩も今はいないのに…」
コーヒーを飲む振りをして、視線を外すシゲル。
「ネルフは…、組織解体されるだろうな、俺達がどうなるのかは見当もつかないが」
言いづらそうに答える。
お互いの脳裏に、ろくな事にはならないだろうと言う予感がこびりついていた。
外した視線は、今は不在のマコトの席へと向けられていた。
「補完計画の発動までは、こちらで粘るしかない状況なのよね…」
薄暗い明りの下で、ミサトはひたすら車を走らせていた。
「悪いわね、こっちだけじゃ手が足りなくて」
「良いんですよ、好きでやってることですから」
マコトは助手席でノートパソコンに何かのデータを表示させていた。
「裏死海文書なんですが、やはりありましたよ、コピーが」
「よく見つけられたわね…」
ジオフロント外周を走る道を延々と走り続けていたのは、盗聴を恐れてのことだった。
「1972年にまで遡りましたけどね、死海近くに住む神父が写本を作って隠してたんですよ、オリジナルは盗まれてしまったそうですがね?」
「誰が盗んだのかは想像つくわね…、で、内容は?」
そっちの方に興味を惹かれていた。
それに対して、二カッと満面に笑みを浮かべるマコト。
「ばっちりですよ!、解読も終わってます」
ノートを叩いて見せる。
「凄いですよこれは…、抽象的な部分もありますけど、ほぼ僕達の戦いがそのままで載っていましたからね…」
「というよりも…」
苦々しげに口を開く。
「あたし達がその通りに戦わされていた、と言った方が正しいんだけどね…」
しばしの沈黙が車内を満たした。
「ノートは預けておきます、僕はこのまま第二発令所へ戻りますから」
「わかったわ」
ミサトは適当なところで車を止めて、マコトを降ろした。
「じゃ、またあとでね」
返事も聞かずに出そうとしたところで、ウーーー、ウーーーっと、原始的な空襲警報が鳴り響いた。
「なに!?」
「葛城さん、あそこ!」
空の一点をマコトが指差した。
生き残っていた天井都市の一部分が、炎と共に落ちてきた。
「まさか、使徒なの!?」
その十字架の形をした炎に、ミサトは戦慄せずにはいられなかった。
「パターン青、間違いありません、使徒です!」
第二発令所にシゲルの叫びがこだました。
そんな、使徒ってもう来ないんじゃ…
後は補完計画の発動まで待機のはずだろ!?
発令所内に不穏な空気が漂いはじめる。
来るはずの無い使徒の襲来に皆が浮き足立っていた。
「まずいぞ碇」
その様子に眉をしかめる冬月。
「この状態ではろくな指揮も取れんな…」
だがゲンドウは逆に笑みを浮かべていた。
「問題ない、初号機と弐号機に専属パイロットを放り込め、出撃だ」
冬月だけにではなく、眼下にいる全ての者に対して命令を下すゲンドウ。
それに逆らい、立ち上がった者が約一名いた。
「待ってください!、弐号機のパイロットはまだ!」
マヤだ。
手元のモニターには死人のように横たわるだけのアスカが映し出されていた。
「死んでいるわけではない」
ゲンドウの冷ややかな声に、マヤは一気に青ざめた。
「初号機だって…」
相手の子供を脅しに使う。
だがそれも通じなかった。
「シンクロ率が0に落ちているわけではない、出せ」
死刑宣告にも近い言い様だった。
まるで腰がくだけてしまったかのように、マヤはすとんと座席の上に腰を落としてしまっていた。
エントリープラグの中で、シンジはL.C.L.に身をゆだねていた。
「またこれに乗って人殺しをするのか、僕は…」
リツコの言葉とカヲルの姿が重なって、シンジの頭の中を渦巻いていた。
使徒もエヴァも同じ人間なのだとの囁きが聞こえてくる。
「シンクロ率が戻っているわけでも無いのに」
表示を呼び出してみた。
今や20%を切っている。
弐号機のアスカを映し出して見る。
どこも見ていない、うつろな目をしたアスカがそこにいた。
シンジは肩の力を抜いて、シートにゆったりと体を預けた。
顔が上向き、自然と開いた口からコポ…っと肺に残されていた空気が漏れ出ていった。
「母さん…、父さんも、僕に何をさせたいのさ」
それを意識しながら呟いてみる。
「シンジ君、良い?、出すわよ」
意図的に閉ざされていた回線が開かれた。
「…ダメだっていったらやめさせてくれるんですか?、ミサトさん」
「それは無理な相談ね」
(僕には敵を倒すため以外の情報なんて、何一つ与える必要がないって事か…)
その想いがさらに無気力さを増長させていく。
「出せ」
ゲンドウが会話を遮った、直後シンジは強烈なGによって、シートに押し付けられていた。
ガコン!
だがそれもわずか数秒で終わってしまう、地上に到達していた。
「ここ…、旧市街地の外側じゃないか」
起動後すぐに、癖で現在位置を確認していた。
エヴァから見下ろす街は、地上から見るよりも一層酷いものに見えている。
「街なんてほとんど残ってないし…」
二つの湖、その外周部に湖岸の街として残っているような状態になっていた。
「なにぼさっとしてるの、早く武器を取りなさい!」
ミサトの叱咤に、初号機はのそっと動きだした。
その緩慢な動きに、みな漠然とした不安を抱えはじめる。
「酷い…、本当にあれで戦えるんですか?」
思わず漏らすマヤ。
だがその質問に答えてくれるものは、誰一人としていなかった。
(碇君?)
ターミナルドグマでL.C.L.のプールに浸かっていた綾波が瞼を開いた。
黄色い液体の中にあってさえ、その赤い瞳は通常とは違う色彩を放っている。
(声が…、聞こえる)
レイは壁に手をつくと、軽く体を押し上げた。
そのままプールの端に手をかけ、体を持ち上げる。
「あなた、誰?」
床面を見たまま呟く。
滴が髪を伝って落ちていった。
プールから泳ぎ出るレイ。
その他には人影は見当たらない。
「わたしは…」
その言葉が誰に向けられているものなのかを知る者はいなかった。
「第三使徒に似てるわね」
それがミサトによる率直な感想だった。
違う点は腕が四本あることだろう。
画面左を見るシンジ。
そこには射出口から上がって来たままで、最終安全装置も解除していない弐号機が突っ立っていた。
「弐号機、下げられないんですか?」
不安を覚えるシンジ。
「司令の命令なのよ」
(父さんの…、命令か)
アスカも僕と同じ道具なのかと、反抗して見せる気力さえ失っている。
「第三使徒とほぼ同等量のエネルギーを感知しています」
「形状からも戦闘方法にさほど差違があるとは推察されません」
マコトとシゲルの報告に、ミサトはアスカをどう扱うか考えこんだ。
「シンジ君、アスカのことは放っておいて、使徒を倒すことだけに専念するのよ、いいわね?」
シンジは答えるかわりにライフルを構えてみせた。
フォウ!
山を越えて、芦の湖から流れこんでできた湖に足を沈める使徒。
沈んでいたビルが水面を持ち上げた、使徒に踏まれて起き上がったのだろう。
腰の辺りまでを水の中に沈める使徒。
カッ!
その漆黒の両眼が光を放った。
「うわ!」
とっさに腕をクロスさせて、ATフィールドを展開するシンジ。
ドガン!
その光の壁に爆発が起こった。
だが衝撃波は壁をすり抜けて、初号機を簡単にはじき飛ばす。
「これじゃ勝負になんないわよ!」
ミサトはマヤに向かって悲鳴を上げた。
「ダメです、シンクロ率があがりません、ATフィールドは使徒によって侵食されていきます!」
シゲルが後をついだ。
「閃光、直撃します!」
「シンジ君!」
閃光が胸部で弾けていた。
装甲版が一瞬で溶解してしまう。
「うわあああああああ!」
シンジは煮えたぎりそうなL.C.L.に喉をかきむしっていた。
「使徒が弐号機に向かいます!」
「何ですって!?」
動かないと見て取ったのか、興味を無くしたように使徒は初号機を無視して歩み出した。
ゆっくりと歩行し、二号機の前で足を止める。
クン!
四つの腕を同時に伸ばした、下側二本の腕で弐号機の腰をつかみ、残りの腕を肩にかける。
グガカン!
そして使徒はそのまま、固定台から二号機を引きはがし、持ち上げた。
散らばる破片がまだ形を残していた建物を押し潰す。
腕の一本を肩から外して、使徒は弐号機の顔をガシっとつかんだ。
「まずいわ!」
初号機の初陣の姿を重ねてしまう。
ガコォン!
サーベルの一突きが襲いかかった。
弐号機の右上の目が、たったの一撃で貫かれてしまっていた。
「アスカ…」
叫んだつもりだったが声になっていなかった、もうろうとする意識の中で、シンジはその残虐な光景に見入っていた。
「アスカ」
意識を何とか浮上させる。
だが初号機はもたくさとしか動いてくれない。
ブゥン!
振り回される弐号機。
それが初号機へむかって飛んで来た。
ドガァン!
「うわぁ!」
投げつけられた弐号機と共に、絡まるように地面に転がる。
その激震に、偶然指がトリガーに引っ掛かっていた。
パレットガンの一斉射が、うまい具合に使徒を目掛けて集中してくれた。
しかし発射された弾丸は全てATフィールドによって弾きかえされてしまう。
再びカッ!と使徒の目が光を放った。
「うわあああああああああっ!」
十字の炎が、今度は弐号機もろとも初号機を包みこみ、両機を焼きはじめた。
「シンジ君!」
ミサトの叫びが耳に遠い。
ビクッビクッっと痙攣を始めるシンジ。
「心音微弱、初号機パイロット限界です!」
マヤの叫び、だがマコトが別のことを告げて遮った。
「弐号機パイロットに変化有り!」
「アスカに!?」
(ったい…、いたい、痛いよぉ…)
胎児のように丸まって、アスカは何事かを呟いていた。
「痛い、痛いよぉ、死んじゃうよぉ…」
あまりの痛みに、眼を押さえて丸くなっていた。
その背中は脅えた仔猫のように震えている。
「死ぬのは嫌、死ぬのは嫌よ…、死ぬのは嫌…」
呟き声が小さすぎて、ミサトたちには聞こえない。
「アスカ!」
たまらず叫んでみても、反応は返ってこなかった。
「嫌、死ぬのは嫌…」
「どうして?」
アスカの意識に、誰かの声が割り込んできた。
現実から急速に意識が遠ざってしまう。
「死ぬのは嫌」
かわりにフラッシュしてきたのは死のイメージだ。
「死んでちょうだい」
この世で一番好きだった人の声が聞こえる。
「死ぬのは嫌」
耳を塞ぎ、誘惑に耐える。
「あたしは死んだわ」
だがそれさえも無意味な程に、声は近くで聞こえてくる。
「死ぬのは嫌よ」
繰り返し、抵抗してみる。
「残していきたくないの」
誘惑は甘い囁きに変わってきた。
「あたしは生きてる」
現実にしがみつく。
「あたしの可愛い子」
抗い難い甘美な誘惑。
「生きてるあたしを見てよ」
抵抗するために、生きている事にしがみつく。
「ずっと一緒に居て欲しいのよ」
限りある苦しみから解き放たれてと、温かいもので包みはじめる。
「もっとちゃんと、あたしを見てよ」
必死になって訴え返す。
「あなたは裏切らないわよね?」
その確認が胸に痛い。
「優しく、優しく抱きしめてよ」
誰もしてくれたことがない程に、とせがんでみる。
「パパみたいに去っていかないわよね?」
包みこもうとする温かさにぞっとする。
「絵本を読んでよ、頭をなでてよ、お歌を歌ってよ」
幼児期の願望が吹き出てくる。
「だからどこまでも一緒にいきましょう?」
それを叶えてあげるから…、と。
「あたしだって寂しいのよ!」
だけどそこには行きたくないと泣きはじめる。
「あたしだって寂しいわ」
互いの心が通じ合う。
「だから一緒に居てよママ!」
「だから一緒に死んでちょうだい」
しかしてその結論は反発し合った。
「あたしは生きていたいのよ!」
アスカの叫びが幻聴を吹き飛ばす。
「生きていたいからエヴァに乗るの?」
「違うわ!、生きる価値を認めて欲しかったから、エヴァを利用したのよ!」
14歳のアスカがいた。
「なら誰に認めてもらいたかったの?」
「そんなの決まってるじゃない!」
目を閉じ、耳を塞ぐアスカに向かってアスカが叫ぶ。
アスカの脳裏に、色々な人の様々な顔が浮かんでは消えていった。
ドイツ支部での研究員たち、大学時代の友人、第一中学校の面々、それに加持、ミサト、シンジ…
「ママに、パパに…」
最後は消え入りそうになっていた。
「でも、もう誰もあなたを認めてはくれないわ」
知っているような、それでいて聞いた事のない声に憂いが生じる。
「そんなのわかってるわよ…、でもしょうがないじゃない、エヴァが動かないんだもの」
悔し涙が頬を伝った。
「可哀想な人…、エヴァだけが全てなのね」
「他の方法なんて知らないのよ!」
最初に見つけた方法がエヴァだった。
「エヴァだけが、証明できる手段なのね」
「だって誉めてもらえたんだもん」
だからその事に全てを注ぎこんで来た。
「誉められるために乗っているの?」
「そうよ、あたしはシンジと同じ理由で乗っていたのよ!」
嫌悪感が全身を駆け巡る。
父さんに誉められたいから、屋台でそういったシンジの顔が浮かんで消えた。
とても…、とても幸せそうで、満足げな表情をしていた。
「みんなが誉めてくれるんだって言ってた、自分を見ているようで吐気がしたわ、だからバカにしてやったのよ」
急にしおれてしまう。
「あたしってつまんない女ね…」
自嘲気味にうつむいた。
「そうね、あたしはバカにしてたファーストや、シンジや、ミサトにだって、誉めてもらいたかったのよ…」
優しい何かが触れてくる。
「お母さんみたいに?」
背中から抱きしめてくれている。
「そうよ、良い子ね、よくできたわねって、頭をなでてもらいたかったのよ」
光る腕がアスカを撫でる。
二人の目の前には、7歳の女の子が泣きじゃくっていた。
「よくできましたって誉めてもらいたかったの、だからママをやめないで欲しかったの、あたしをちゃんと見てもらいたかったの、ママの言いなりじゃないあたしを見てもらいたかったの、人形と同じじゃないあたしを見てもらいたかったの、自分で考えて自分で生きてるあたしを見てもらいたかったの、人間のあたしを見てもらいたかったの、ママの中のあたしを殺さないで欲しかったの、生きてるあたしを殺さないで欲しかったの、だからお願いしてたの、ママ、あたしを見てって…」
うずくまる、その背後には、引き裂かれた猿のぬいぐるみが転がっていた。
「寂しかったのね」
びくりとアスカ。
「だからエヴァにすがったのね」
「人形にすがったりはしないわ!」
腕を振りほどこうとする。
「エヴァの心に、触れていたかったのね」
「人形に心なんてあるもんですか!」
だが抗い難いものがある。
「じゃあ、あなたが話しているあたしは、なに?」
アスカは弾けるように振り返った。
振り返ってしまい、そして驚きに目を見開いた。
「エヴァンゲリオン弐号機…」
赤いエヴァが、覆い被さるように立っていた。
そのフェイスが開き、四つの眼があらわになる。
「あなたと心を交わし続けてきた、あたしは何?」
問いかけはエヴァの瞳から聞こえて来た。
「わかんないわよ、そんなこと」
その眼から視線をそらしてしまう。
「あなたがすがってきた、あたしは何?」
見れない、恐くて見れなかった。
「わかんないわよ、わかんないけど、あんたは優しかったから!」
アスカは泣いていた、強く言葉を吐き出す度に涙が流れ、雫を飛ばした。
寄り掛かりたくは無かった。
寄り掛かれば、母親の時と同じことになってしまうから。
失えば、それで自分は終わりになってしまうから…
「ママみたいに、優しく包んでくれたから…」
だが否定する事もできなかった。
それがアスカの限界だった。
「だって、あなたはあたしの子だもの」
なにを!っと顔を上げるアスカ。
弐号機のフェイスが割れて落ちた。
下から現れたのは、アスカの知らない、それでいて知っているような女性の顔だった。
「アスカ、あたしの可愛い赤ちゃん…」
フラッシュする、アスカがはいはいを始めた頃の光景。
父親と母親の腕に抱かれているアスカ。
「ママ、パパ…」
溢れんばかりの優しさに包まれている。
と同時に、いだかれることによって得られている安心感を思い出す。
「ママぁ…」
赤ん坊のアスカを、三つの人影が覗きこんで来ていた。
アスカを見なかった母親と、アスカを育ててくれた母親と…
幼子のアスカが、懸命に手を伸ばして指をつかもうとしていた。
三人が同じように指をさし出す。
アスカはその内の一つをつかみ取り、満面に笑みを湛えてきゃっきゃとはしゃいで喜んだ。
選んだ指は赤かった。
それはエヴァンゲリオン弐号機の、やけに太い指だった。
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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
この作品は上記の作品を元に創作したお話です。