Evangelion Genesis Real
Evangelion another dimension real:ONE MORE FINAL





 ザザァ…
 何処かの湖の波打ち際。
 人影が二つ横たわっている。
 シンジとアスカだ。
 横を向く。
 アスカの向こうにレイが見えた。
 それは幻。
 アスカに見えた希望の形。
 シンジと同じ希望を望む、心の幻…
 だからシンジは起き上がる。
 アスカの右手と左目には包帯が巻かれていた。
 他には誰もいない。
 なにもない。
 壊れた世界。
 何もかもが壊れていた。
 どうしてアスカなんだろう?
 不意に想いが去来した。
 それはアスカが嫌ったから。
 シンジの考えを拒絶したから。
 誰しもが持つ心の悩み。
 シンジに共感した魂達は、形を失って消えてしまった。
 それはシンジと同じだから…
 シンジと同じ心の形。
 だからシンジがいればいい。
 その他の形は今は無い。
 アスカの目は開いていた。
 だが何も映していない。
 シンジだけは映さない。
 それが当たり前のことだから。
 アスカはシンジを拒絶した。
 自分は違うと叫んでしまった。
 違う人間と反発したから…
 アスカだけが形を保った。
 ATフィールドを失わなかった。
 それはシンジと違う人間だから。
 シンジを否定した人間だから。
 シンジに取り込まれなかったから。
 だからシンジは馬乗りになった。
 アスカの首に手をかけた。
 否定したくせに。
 どうしてさ?
 嫌ったくせに。
 なんでだよ!
 シンジはアスカを受け入れられない。
 同じ考えを持ってるくせに…
 何処かに希望を抱いていたのに。
 アスカはシンジを否定した。
 アスカにとってのレイは加持。
 それは自分を守る者。
 それは自分をあやす者。
 自分を託せる、依存の対象。
 シンジにとってのレイはカヲル。
 それは分かってくれる人。
 それは愛してくれる人。
 自分を話せる、情愛を与えてくれる人。
 お互い誰かを求めていた。
 だからシンジは許せない。
 慟哭が指に力を込めさせる。
 わかっていた。
 こうなることは分かっていた。
 だから苦しかったのだ、戻る事が。
 辛かったのだ…、側に残るのがアスカだけだとわかっていたから。
 ふと…、アスカの指が砂を掻いた。
 ゆっくりと持ち上がり、シンジの頬を一度撫でる。
 びくっと震えてシンジは驚く。
 指から力が抜けてしまった。
 再び込めることはできなかった。
 ポタッと滴が落ちていった、アスカの頬で涙が弾けた。
 ゆっくりとアスカがシンジを見付ける。
 シンジの存在を心で認める。
 どうしてシンジなのだろう?
 あれほど否定していたはずなのに?
 なぜそれでもシンジなのか?
 同じ想いを抱いて、認めて分かり合わねばならない相手が。
 シンジが全てを奪ったのに。
 シンジに消えてもらいたかったのに。
 辛くて、苦しくて、もどかしくて…
 それをわかって欲しかったのに。
 どうしてわかってもらわなければいけないのだろう?
 こんな奴に。
 どうしてわかってあげなければいけないのだろう。
 こんな奴を。
 それでも同じ夢を見ているのだから。
 同じ希望を抱いているから。
 分かり合えると信じているから。
 信じ合わずにいられないから…
 それを否定することは出来ないから。
 したくないから。
 できないから。
 自分だって信じているから。
 夢見ているから。
 信じたいから。
 だからアスカには、こう呟くことしかできなかった。









と。






[BACK][TOP][終劇]



新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

この作品は上記の作品を元に創作したお話です。