「なんだか……、前より仲が良くなってない?」
むぅっと目を細めるマナにシンジは苦笑した。
「そうかな?」
「なぁに言ってんのよ!」
アスカはバンッと背を叩いた。
「雨降って地、固まるってやつかい?」
からかう様にカヲルが微笑んだ。
「今日は一緒に来たんだね?」
「まあ、ね?」
「お泊まりかい?」
「うん、まあ」
「ちょっとシンジ!」
焦るマナ。
「それ、どういう事!?」
「あ、うん……、ぼく今、ネルフの宿舎に住んでるんだよね」
「ふんふん!」
「それで、アスカが来たから、泊めたんだけど」
「あんたバカぁ?」
呆れ顔で付け足すアスカ。
「それじゃあ、ただ泊めただけみたいじゃない」
ひきっとマナが引きつった。
「それって……」
ふふんと見下す。
ただそれだけだ。
「く、くやしー!」
駆け去っていく。
「で、ほんとのところはどうなんだい?」
「キスして寝ただけ」
「だろうねぇ」
くぐもった笑いを漏らす。
「それなら霧島さんでもレイでも同じだろうに」
「うん、まあ、ね……」
シンジは答えてからハッとした。
「し〜んじぃ」
「この裏切りもん!」
「他に誰が居るんだ、ええ!?」
「山岸か、ミサトさんか!」
シンジはあしらうように乾いた笑いを漏らしながら、本来なら詰め寄って来るはずの、もう一人の人物を探していた。
ネルフ、執務室へと一人歩くゲンドウの前に、小さな人影が立ちはだかった。
「何の用だ……」
レイである。
「……」
「用が無いなら帰れ、わたしは忙しい」
以前のような執着を見せないのは見限ったからかもしれない。
そのあからさまな変容に憤りを感じながらも、レイは問いただした。
「なぜ……」
レイはくぐもった声を漏らした。
「ダミープラグか」
レイは黙って睨み上げた。
「わたしが手をかけずとも、いずれは作られる代物だ」
「でも」
「お前も、セカンドチルドレンも、フィフスも降ろす」
レイは愕然とした顔をした。
「それがシンジの望みだからな」
歩み去る。
レイは動けなかった、追いすがれなかった。
エヴァから降ろされる。
だがシンジは何かをしようとしている。
エヴァによって。
そして降ろそうとしているのがシンジなら。
不必要と断じたのもシンジだ。
「あ……」
レイはその場に膝を突いた。
震える体を抱きしめる。
しかしレイは気が付いていなかった。
(寒い……)
エヴァが無ければ必要としてもらえない。
必要とされる事を何も出来ない、それは、シンジと同じ考えなのだと。
レイはついに、思い至る事が出来なかった。
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