GenesisQ’Voltage2「パーティ」
「あああああー!、シンジ様っ、その方はどなたなんですかぁ!?」
「え?」
振り返る。
鎧が居る。
「あ、この人はレイさんと言って…」
「浮気なんて許しませぇん!」
…なんで女の子だって分かるんだろう?
それはシンジがでれでれと話しかけていたからだった。
「それじゃあ」
シンジ。
「行って」
レイ。
「きます」
アスカ。
「ですぅ」
ミズホ。
「あれ?」
ミサト。
「アスカ姫には帰国命令が出ていたはずよ?」
リツコ。
「問題無い」
そしてゲンドウがニヤリと笑った。
「アスカ姫、君に匿名で願いたい事がある」
「なんですか?」
「シンジの監視だ」
ぴくっと反応する。
「シンジはああ見えてもわたしの息子なのでな?」
「心配ですか?」
「何処で種付けをして来るやも知れん」
「…それはどういう」
「わたしも若い頃は…、いや、違う、違うぞユイ!」
誰に謝ってるのかしら?
小首を傾げる。
「とにかくだ、裏死海文書にはエヴァを制する者が世界を制するとある」
「はあ」
「しかしだ、シンジはああ見えてやたらと女運がいい」
「そうですか?」
「…想い返してみたまえ、なぜ君はシンジをそれほどまで気にするのだ?」
「それは…」
「プライドを傷つけられたからだ、そうだろう」
「はい」
「シンジはいつもそうだ、思えば生まれた時よりそうだった、わざと間違え近所のナオコ君に母乳をせがみ、マヤ君の前ではわざと転んでハートをゲット!」
「…ひがみ?」
「違う!、君もそうだ、そうやって意識する所から始まり、気がつけばシンジに特別な感情を抱くのだ!」
「…そうでしょうか?」
「シンジは自覚しておらんようだが、あいつはそう言う子供なのだ」
「だから?」
「考えてもみたまえ?、そんな男が世界を制すればどうなるのか?」
どうにもならないと思うわよ。
さすがにそうは口にしない。
「で、わたしは…」
「少しでもシンジの毒牙にかかる女の子を減らしてくれ、以上だ」
どうしろって言うのよ、まったく…
しかし公認でいじめていいと許可されたのだ、このチャンスを逃すつもりはさらさらなかった。
一隊はシンジ、アスカ、レイ、ミズホの四人になった。
「なんだ、結局アスカ姫も来るんですね?」
「アスカでいいわよ、堅苦しいから」
「そうですか?」
「あんたねぇ?」
シンジの帯剣しているエヴァを差す。
「それ一本持ってるだけで国王だって跪かせる事が出来るのよ?」
「そうなんだ…」
剣を見る。
良く考えれば抜いただけでちゃんと使ったわけではない。
「だからあんたとあたしは対等なの!、妙な敬語使うんじゃないわよ」
「ご、ごめん…」
恐い子だな、と思って手綱を握る。
馬車は三頭立てになっていた。
しかしレイの鎧があるのでそれでも遅い。
「あんたも鎧なんて持って来るんじゃないわよ」
しかも前回までとは違って、重装甲フル装備だ。
「アスカだって持ってるじゃない」
「鎧なんて持ってないわよ?」
「エーヴァ!」
「じゃああんたのそれがぁ!?」
天使の鎧のじっと見る。
「変なエヴァ」
「変な呼び方しないでくださぁい!」
むーっと睨み合う二人。
「…ねえ、聞いてもいいかしら?」
「なに?」
「なんですかぁ?」
二人睨み合ったままで返事をする。
「シンジの何処がそんなにいいわけ?」
二人は急に赤くなった。
「そうシンちゃんとの出会いは戦いの最中だったの」
兵士二人に抱えられて向かった戦場。
千人力と呼ばれる屈強の戦士が二人がかりでレイを運んだ。
「重いぃ〜〜〜って、失礼よね?、女の子に向かって」
「女の子って…、まあねぇ」
アスカにも分かる、エヴァは持ち主の半身なのだ。
レイのそれは自分をばかにされたも同然である。
「でもシンちゃんがね?」
ぽうっとする。
「抱き起こしてくれたんだぁ…」
運び終わると同時に兵士は限界が来て手を離した。
レイ自身も空腹のためか膝を居る。
「ほんのちょっとだけ軽くなってたんだけど…」
自分自身が何キロか。
鎧も装甲の大半を剥がして軽くしていた。
それでもレイを運んだ二人は音を上げたのだ。
「なのにね?、シンちゃんは軽々と抱き起こしてくれたのぉ」
なにしろ五百キロのつづらを軽々と持ち上げたくらいだ。
ちなみにつづらはレイ+完全装備の鎧と同じ重さだったりする。
「やっとお腹いっぱい食べられるようにもなったしね?」
「へ?」
「やっぱり入る物が入ってると出る力が違うって言うかぁ?、やっとちゃんと着てあげられるようになったんだから着てあげないと」
鎧もまたレイなのだから。
「でもこんなあたしじゃ普通はダメでしょ?」
「まあ確かにシンジでないとダメかもね?」
「でしょでしょ?」
「女の子の夢だもの、ねぇ?」
「ふえ?」
一人ミズホは着いていけない。
「夢ですかぁ?」
「そう、夢、女の子の夢」
「やっぱりウェディングはそう来るわよねぇ?」
確かに世の中の何処を探しても、こんな力持ちはそう居ないだろう。
「だめですぅ、シンジ様はぁ!」
「はいはい、で、あんたはどうなのよ?」
「ふえ?」
「何でシンジが好きなのかって聞いてるの!」
「それはぁ…」
ミズホもうっとりと回想した。
ミズホは走っていた。
とにかく走っていた。
森を抜ければ村に戻れる。
そう思っていた。
夜のとばりが下りる時。
それは悪魔が踊る時。
「ふえ!?」
目前に輝く二つの目。
「ふええええええ!」
うにゃーん!
そして悪魔に襲われた。
「それって猫じゃないの?」
「そうですぅ、もう恐かったんですぅ!」
「もしかしてジャイアントキャット?」
「いいえぇ、このくらいの子猫ですぅ」
二人は同時に呆れ返る。
「「ふ、ふぅん、そう…」」
「飛び掛かられた時はどうしようかと思いましたぁ!」
実は揺れるポニーテールにジャレつこうとしただけなのだが。
「その時に助けに来てくれたのがシンジ様なんですぅ!」
「帰りが遅いから迎えに行っただけなんだけどな」
ボソリと言う突っ込みが入る。
「あの時のシンジ様はカッコ良かったですぅ」
「ミズホ酷い顔してたよなぁ」
「颯爽と猫にゃんを追い払って」
「ミズホを化け物と勘違いして」
「わたしの涙を拭って下さり」
「ミズホの鼻水なんとかしてさ」
「それがわたし達の馴れ初めですぅ」
「そうかあれで変になっちゃったのか」
どよーんっと落ち込むシンジと、太陽のような輝きを放ちつつ恥じらうミズホ。
アスカとレイはそれぞれ何を口にするかで悩んでいた。
続く
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